その窓は、木の枠がほどよく古びていて、金具には時の流れがにじんでいる。
けれど、それがかえって部屋を引き立て、しんとした温かさを醸し出していた。
磨りガラス越しに差し込む午後の光さえ、どこか懐かしい。
台所には、昭和の頃から使い続けられている調理器具や食器が、所狭しと並んでいる。
ホーローの鍋、木べら、すり鉢、アルマイトの弁当箱。どれも寄せ集めのようでいて、不思議と乱雑には見えなかった。
そこには「整然」では語りきれない秩序がある。
暮らしのリズムが染み込んだような、美しい雑多さだった。
長年、家族の食卓を支えてきた証。誰かの「いただきます」と「ごちそうさま」が、器のひとつひとつに刻まれているようだ。