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詩は元気です ☆ 齋藤純二

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電柱を抱きしめ

スレッド
ベランダの手すりの上
飼い猫が外を眺めている

何を見ているのかわからぬ瞳
少年が考え事をしているように
時間さえ止めてしまう魔法
忘れていた冒険という言葉を秘めて

あんたは変わった子だね

よく近所のおばちゃんにいわれた
少年時代はとても自由だった

電柱を抱きしめると落ち着いた
近所の電柱に耳をあて
グルグルと音が伝わるのを
何時までも聞いていた

電柱を抱きしめる旅へ行こう

自転車を漕いで漕いで雲を追いかけるように
まだ知らぬ電柱を求め

車の通りの多い所
怒っているかのように唸る電柱

田んぼの横にある電柱は
グーグと寝息をたてて眠っている

海岸沿いの風が強い所
シュウシュウと早く帰りなさいと叱る電柱

みんな違う電柱の言葉が聞けた
少年時代は電柱と会話することも出来た
今はどうだろう
ひとの言葉さえ怪しく思えて

恥も外聞もなく
大人になった私は電柱を抱きしめたくなった

そして抱きしめた

あんたは何も変わっていないよ

そんな言葉が聞こえ
僕らしさを思い出すように
グルグルと伝わる音を何時までも聞いていた

#詩

ワオ!と言っているユーザー

雨が降れば

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次は上山田、上山田
本日、雨のため傘のお忘れ物がたいへん多くなっております
お降りの際は手元の傘をお忘れないよう願い致します
次は上山田、上山田


改札を出る
此処へ来る日は必ず雨が降っている
それは雨の日にわざわざ此処へ来るからだ

恋人に会うためである
ただ彼女はもうこの世のひとではない
この場所と雨は未練を緩和する

公園のベンチには雨の吹き込まないほどの屋根がある
銅板が重ねられた屋根には
雨粒の音がひと粒ひと粒しっかりと響いている

膝を寄せ合った想い出

今は雨が好きだった彼女の温もりはない
霞んで見える木々
肩を落としたような心情で共感を得る
潤った土からは想起の匂いがして
面影を追うことに癒されてゆく

心象に彼女を再生してゆく雨
想い出の中だけで時間を過ごし
日々の哀しさを忘却させ
頬が緩んだ顔が水たまりに映る

雨が降れば此処に来る
哀憐に触れようと面影を追いかけてしまう

#詩

ワオ!と言っているユーザー

母のいない実家

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誰も居ない実家の玄関を開ける
こもった空気
引っ越してきた当初の材木の匂いがして
四十年前がすぐそこにある不思議

母は故郷の山形に帰郷
私は頼まれた部屋の換気と庭に水を撒く

すでに庭には水が撒かれているようだ
近所の親切で潤っている花や木
有り難い思いに感謝して

横になると心地よい風が抜けて
近づいては遠ざかる電車の通過する音
身体は床に溶けてしまいそうだ

そろそろ戸締りをして帰ろう
母のいない実家はもの足りない
父の位牌に手を合わせ

また来るよ

そう言って戸締りをしながら
母の書き置きをもう一度読むと
「申し訳ない」と言う言葉が
「申し沢ない」と書かれていて
クスっを実家に置いていった

#詩

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ハレルヤ

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僕らは流した血の果て
戦争を忘れる訳ではない
あなたの微笑みが愛おしくて
戦争を遠ざけることが出来る

ハレルヤ
誰もが救世主となって
世界に平和の鐘が響いている


僕らは自分が大事であっても
ひとりだけの平和を祈りはしない
愛するひとへの慈しみがあって
祈っているのだから

ハレルヤ
誰もが救世主となって
怒りが静謐な夢を見れるように


僕らは知っているのさ
攻撃をすることが強いのではなく
肩を並べ分かち合いながら
強い心を育んでゆくことを

ハレルヤ
誰もが救世主となって
世界に平和の鐘が響いている

#詩

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献血

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それはとても
わかりやすい奉仕

すこしのチクッを望めば
人のために役立つ
今日は400ml

15分ほどですかね

と、看護師さん

シートの前にあるテレビをつける
怪しい雲行きのニュースに
終わるなよ日本と呟く

画面の右上には15:23の表示
15:40には採血も終了するだろう

はい、終了いたしました
針を抜きます

15:27

四分もかかっていない
私の血流はF1並みのスピードらしい
その割には手足が冷たかったりもする
まあ、専門的なことは分からないが
看護師さん曰くいい血管だと言うことだ

今日で19回の献血
その9割が十代、二十代の頃だ
五十歳を過ぎ初めての献血
これからまだまだ奉仕したいなあ

目標100回

この目標は長生きをすると言うことだ
深く考えなくても役に立つ献血
とてもわかりやすい奉仕だ

#詩

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Signal

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天井は赤色、壁は黄色、床は青色の箱に中に立っている。その箱は一辺が五メートル程の立方体で造られていた。僕がなぜこんな所に閉じ込められているのかは分からない。これが現実なのか、夢なのかも全く見当が付かない。いったい、何がどうしたと言うのだ。そして、僕は誰なんだろう。家族はいるのだろうか。帰る家はあるのだろうか。その前に生きているのだろうか。いや、生きているが虫かごの中で生かされているようなものだ。この状況は孤独で社会が存在していない。法律も関係なければ秩序も必要ない。

僕は青色の床に横になった。喉が渇いているが水などはない。舌がザラザラして飲み込む唾液さえ出なくなってきた。ここの空は赤色だ。身体を溶かしてしまいそうな熱が伝わって来るような感じがする。視線を黄色の壁に向け、少し色彩の攻撃から逃れられる気はするが、もう生きていようとする抵抗さえ消えて行く。

生きている意味のない場所には、もう生きようとする夢など生えては来ない。しがみつく草も無ければ、しがみつく根拠も無い。ただ、僕は終わり方に人間としての最後の意地を貫こうとした。それを無理矢理に希望だと決めつけて。

力を振り絞り、青色の床にうつ伏せになる。もう仰向けに戻る力はない。出来ることは瞬きすることぐらいになってしまった。眼に浸透するその青色で床に身体が埋もれて行くのを感じている。

離れて行く、僕と身体が。飛んでいる。僕は間違いなく飛んでいる。

僕は初めて希望の中で消えることを確信した。

#詩

ワオ!と言っているユーザー

全集を綴る

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過去の感情を忘れられず
辛い後ろ側で如何にか楽しもうと
心に図太さが育った

スマートな大人にはなれない
詩人がいる訳で
欠けていた慰めを求め
旅するみたいに詩を綴ったりする

過去の心情を探る
未来へ進むことに繋がり重ね合い
分厚くなる詩人の全集であり
改訂される人生は過去と未来の協奏曲

懐かしき匂い温もり安らぎ
懐かしき寂しさ虚しさ苦しさ
その頃の心情を整理整頓してしまう

最近
過去に未来を見ることが多くなった
未来に過去を見ることが多くなった

それでも
歳をとってゆく自分の未来に
進んでいるのだから
詩を綴ることは不思議な体験だ

#詩

ワオ!と言っているユーザー

平和の歌/戦争を考える

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わざわざ不安になれとは言わないが
アニメーションみたいに
ボタンが花となったりはしない

平和を考えるために
戦争を考えなくてはならない

殺し合うために生まれたのか

戦争を望む者は
自分や愛する者が
殺される想像をしただろうか

自分達の平和のため
戦争は必要なのだと言うのか

インターネットにより
世界は速く近く小さくなって
情報の質は怪しく粗いものとなり

誰もその情報で明日の雲行きなど
知ることはできない

明日かもしれない

けして私たちは
殺し合うために生まれてきたのではない
人間である道徳は世界共通の歌

平和を考えるために
戦争を考えなくてはならない

平和を愛するために生まれた私達は
戦争を考えなくてはならない

#詩

ワオ!と言っているユーザー

身体心象

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軋む身体は痛みと痺れ
日々に学ぶ有限の命
だからこそ
時をグッと引き寄せ
今は生きていたい


焦りに煽られ
疲弊してしまう心身

覚悟はできているつもりが
気を抜くと襲いかかる
価値のない自分を許せなくて
どうして、の
未熟は止まらない

この世界で何を
成功させたいと思っているのか
証を高台に置こうと、くだらない夢を見て

雑念をとり除く発想と
納得を外に零さぬように
自分の中だけで証を灯しながら

痛みと痺れ
付き合うしかない諦め
まずはそこから進まなければ
何も始まらないのだから

#詩

ワオ!と言っているユーザー

にょき

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にょき
光に向かう力
伸びる力
にょき
にょ

#詩

ワオ!と言っているユーザー

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