【第2章】「理想的なキャリアの実現」から考える 自分らしい働き方の見つけ方
7月
29日
第2章:理想的なキャリアとは何か?
・キャリア=肩書きではなく「人生の物語」
「あなたのキャリアは何ですか?」と問われたとき、私たちはつい、職業や肩書きで答えてしまいがちです。
けれど、本当にそれだけがキャリアなのでしょうか。
キャリアとは、単なる職歴や肩書きではなく、自分がどんな価値を大切にし、どんな選択を重ねてきたかという「人生の物語」です。
それは
成功や失敗
迷いや決断
出会いや別れ
そうした一つひとつの出来事が織りなす、あなただけの軌跡。
アメリカのキャリア理論家マーク・サビカスは、「キャリアは意味を運ぶ物語である」と語りました。
つまり、私たちは自分の経験に意味を見出し、それを語ることで、自分自身のキャリアを「構築」していくのです。
「キャリア=人生の物語」という視点から、
肩書きに縛られない、自分らしいキャリアのあり方を探っていきましょう。
肩書きに縛られない、自分らしいキャリアのあり方を探っていきましょう。
きっと、あなたの中にある『静かな強さ』が、そっと顔を出してくれるはずです。
・キャリア形成の6つのステップ
ー自己理解から適応までの旅路ー
理想的なキャリアは、偶然の積み重ねではなく、意識的な選択と行動の連続によって形づくられていきます。
キャリア形成は以下の6つのステップで構成されるとされています。
ステップ①:自己理解
まずは、自分自身を深く知ることから始まります。
価値観、強み、弱み、興味、ライフスタイル、人生の優先順位などを棚卸しすることで、キャリアの土台が築かれます。
ステップ②:仕事理解
次に、自分が関心を持つ仕事や職業についての情報を集め、理解を深めます。
仕事内容、必要なスキル、働く環境、報酬、将来性などを知ることで、選択肢が現実味を帯びてきます。
「ジョブ」と「ワーク」の違いを意識することも大切です。
ステップ③:啓発的経験
選択肢を絞る前に、実際に体験してみる段階です。
インターンシップ、職場見学、ボランティア、副業などを通じて、仕事のリアルな側面に触れることで、内的キャリアと外的キャリアの接点が見えてきます。
ステップ④:意思決定
十分な情報と体験をもとに、自分にとって最も納得感のある選択を行います。
この段階では、迷いや葛藤が生じることもありますが、「選ぶこと」そのものが自己信頼の表れでもあります。
ステップ⑤:方策の実行
選んだ道に向かって、具体的な行動を起こします。
就職・転職活動、学び直し、スキル習得、ネットワーク構築など、意思決定を現実に落とし込むフェーズです。
ここでは「小さな一歩」が大きな変化を生むこともあります。
ステップ⑥:仕事への適応
新しい環境に身を置きながら、自分らしく働く術を見つけていきます。
適応とは、ただ「慣れる」ことではなく、自分の価値を活かしながら環境と調和すること。
この段階での振り返りが、次のキャリア形成のサイクルへとつながっていきます。
キャリア形成は一度きりのプロセスではなく、人生の節目ごとに繰り返される「螺旋的な成長の旅」です。
どのステップも、あなた自身の物語を深める大切な章。
どうぞ、焦らず、丁寧に。
あなたの歩幅で、次の一歩を見つけていってくださいね。
あなたの歩幅で、次の一歩を見つけていってくださいね。
また、キャリア形成における躓きやすい点と心掛けておきたい点についても触れてみたいと思います。
キャリア形成は、一直線に進むものではありません。
時には立ち止まり、迷い、思い通りにいかないこともあるでしょう。
それでも、その過程こそが「物語」を深める大切な要素です。
以下に、各ステップで躓きやすい点と、心掛けておきたいことをまとめました。
ステップ①:自己理解
躓きやすい点:自分の価値観や強みが曖昧なまま進めてしまう
他者の評価に引っ張られてしまう
心掛けたいこと:「何が好きか」「何に違和感を覚えるか」など、感情の動きを手がかりにする
定期的に振り返り、言語化する習慣を持つ(ジャーナリングなども有効です)
ステップ②:仕事理解
躓きやすい点:情報が多すぎて混乱する
理想と現実のギャップに戸惑う
心掛けたいこと:「自分にとっての働く意味」を軸に情報を整理する
実際に働いている人の声を聞くことで、リアルな視点を得る
ステップ③:啓発的経験
躓きやすい点:体験の場が見つからない
一度の経験で判断してしまう
心掛けたいこと:小さな体験でも「何を感じたか」に注目する
複数の場面で比較しながら、自分の反応を観察する
ステップ④:意思決定
躓きやすい点:選択肢が多すぎて決められない
「間違えたらどうしよう」と不安になる
心掛けたいこと:「今の自分にとっての納得感」を大切にする
完璧な選択よりも、選んだ後に育てていく意識を持つ
ステップ⑤:方策の実行
躓きやすい点:行動に移す勇気が出ない
周囲の反応が気になってしまう
心掛けたいこと:小さな一歩から始める(例:1人に話してみる、1冊本を読む)
「行動=実験」と捉え、結果よりも気づきを重視する
ステップ⑥:仕事への適応
躓きやすい点:理想と現実のギャップに落ち込む
自分らしさを出すことに遠慮してしまう
心掛けたいこと:適応とは「自分を消すこと」ではなく「自分を活かすこと」
小さな違和感を放置せず、対話や振り返りを通じて調整していく。
キャリア形成は、「正解を探す旅」ではなく「自分らしさを育てる旅」です。
躓きも、迷いも、物語の一部。
どうぞ、安心して歩みを進めてください。
その一歩一歩が、きっと誰かの希望にもつながっていきます。
・理想は描くことで現実に近づく
「理想を描くことに意味はあるのか?」
そんな問いを抱えたまま、日々の忙しさに流されてしまう人は少なくありません。
けれど、理想を描くことは、ただの空想ではなく、現実への道筋を照らす灯りになるのです。
たとえば、私がかかわらせていただいた、ある30代の会社員の方の話です。
彼は「人の成長に関わる仕事がしたい」という漠然とした理想を持ちながら、営業職として日々を過ごしていました。
ある日、研修の際に「理想の自分」を紙に書き出す機会があったそうです。
そこには、「人の話を丁寧に聴き、気づきを促す存在」「安心感を与える言葉を届ける人」といった姿が描かれていました。
その瞬間、彼は気づきます。
「今の仕事でも、顧客との対話を通じて、相手の課題に寄り添うことはできる」と。
それから彼は、営業の場面で『聴く姿勢』を意識し始め、社内でも「相談しやすい人」として信頼を集めるようになりました。
数年後、彼は社内の人材育成部門に異動し、今では若手社員のメンターとして活躍しています。
理想を描いたからこそ、現実の中に「意味」を見出せた。
そして、その意味が行動を変え、環境を変え、未来を変えていった場面でした。
理想は、現実とのギャップを生むこともあります。
でも、そのギャップこそが、自分が本当に望んでいることを教えてくれます。
そして、理想を描くことで、今の自分にできる小さな一歩が見えてくる。
どうぞ、静かに自分自身に問いかけてみてください。
「理想の自分は、どんなふうに人と関わっているだろう?」
「その姿に近づくために、今日できることは何だろう?」
その問いが、あなたの物語を動かし始めるかもしれません。
そして、描いた理想が、やがて現実にそっと寄り添ってくるはずです。
☆第3章~第8章まではnoteにて公開いたしますので、お楽しみに!