組織改変論議と国鉄 第6話 産業計画会議の勧告
11月
15日
公共企業体審議会答申からしばらく経った、昭和33年7月には、民間組織の産業計画会議が「国鉄民営化論」を発表、新聞社・評論家をあげて賛否両論が繰り広げられました。
その際の勧告の要旨は以下のとおりです。
「Ⅰ 国鉄を特殊会社とし、その経営に完全な自主性を与えよ」
1. 現在の公社による国鉄経営には、運輸省、大蔵省、国会などからあまりにも制縛が多い。私鉄と対等の自主性を与え、経営者の経営責任を確立せよ。自主なきところに責任は存せず、責任なくしてはサービスの改善も能率の向上も行なわれえない。
2. お役所仕事の弊をなくすため、特殊会社制度とする。政府出資に若干の民間出資を加えて数個に分割し、政府(運輸大臣)監督は長期事業計画・運賃決定など重要事項と財務の審査にとどめる。私鉄に許されている程度の兼業も認める。
3. スト権を認め、労働関係を正常化する。
「Ⅱ 国鉄を分割経営せよ」
1. 経営単位が大きすぎて、中央の意思が末端までゆき届かない。日々、計数的に経営の実態を明らかに出来ない。
2. 事業経営の能率をあげ、サービスを改善するには、競争が必要だが、全国一本の国営的独占事業では、たと経営上の比較が出来ない。
3. 全国的なプール計算では、経営努力によって黒地となりうる路線の赤字に対しても、経営者は不感症となり、赤字路線の原因も責任も不明確となる。
さらに産業計画会議は、ローカル線建設の廃止や、不採算路線の撤去、小駅の廃止、荷役機械化の促進、自動車業の兼営、動力近代化、全線複線化、原価主義の原則にたった合理的な新運賃体系の改革案など、具体的な資料をもとに提言されており、少なくとも昭和30年代には地方ローカル線の多くは、大きな荷物になるであろうことが予想されていたといえます。
全体の流れとしては、国鉄の分割民営も視野に入れて検討すべきではないかともとれる内容であったようです。
産業計画会議は、民営分割を一つの方向として示していましたが、これに対して国鉄あるいは批判的な評論家は以下のような理由で民営化を牽制しました。
1. 世界の鉄道は公共企業体奉仕への統合が進んでおり、民営化は時代に逆行していること。
2. 組織を分割すると、ラッシュ時などを中心として、能率的なダイヤ編成が出来ない。
3. 分割論の利点は支社制度の強化で実現できる。
4. いわゆる民営にしても、資本は国がみなければならず、形式的なものになる。
など、批判的な意見がありました、ただ、分割民営化に反対だが、政府の干渉をなくして、経営の自主性を持たせる点などは、概ね賛成の意向を示す人が多数いました。
当時の産業計画会議には、十河国鉄総裁や、島技師長ら国鉄幹部もそのメンバーとして名を連ねており、民営分割という、当時としては刺激的な形を通じて、国鉄部内における問題点を露呈したのかもしれないという見方もあります。
実際に、当時の国鉄では運賃の改定一つにしても国会の審議を経なくてはならず、国鉄労働者への賃金引上げも基本的には経営者側で決定できない状態に有ったのですから、会社を経営しているとはとてもいえない状態といえました。
下記に参考になる、産業計画会議の提言がありましたのでリンクを貼らせていただきます。
参考 http://criepi.denken.or.jp/ 電力中央研究所
http://criepi.denken.or.jp/intro/matsunaga/recom/recom_04.pdf
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