「奥穂高岳」登山日記(激登編−2)
8月
28日
いよいよ道は険しくなってくる。
垂直の岸壁にかけられた梯子を超え、
かなりの大岩の上を歩いていく。
巨大化していく岩を超えるのは、
呼吸が苦しくなった身には結構堪える。不意に後ろを振り返ると、
今日の登りの基点となった、
涸沢カールがはるか下になって見えていた。
氷河によって削り取られて、
すり鉢の底のようになっているのがよく分かる。
大自然の圧倒的なエネルギーを感じずにはいられない。
万年雪が凍りついてできている雪田が、
かなりの面積を占めているのに意外な感じがした。
下にいる時にはこれほどのものとは思えなかった・・・。しばらく登り続けると、
登山道から外れてというより、
完全に反対側にうずくまっている登山者を見た。
オレンジ色のザックを担いでいる。そばにいた若い登山者が語るには、
滑落したとのこと・・・。
どうやら知らずに登山道をはぜれてしまって、
斜面を滑り落ちたらしい。ベテランと思しき登山者が、
途中まで歩いていきタオルを渡している。
かなり血を流しているようだ。
励まされてのことか立ち上がって歩き始めると、
一瞬よろめく・・・。
見ていてハラハラさせられる。とにかく登山道に戻れそうなところまで歩くしかない。
少しづつ登り始めている。
われわれもとにかく登らなければならないので、
少し緊張しながら登っていくと、
ちょうど、こちら側の登山道へ歩いてくるところで顔を合わせた。顔半分が「お岩さん」状態だった・・・。
滑り落ちる時に擦ったものと思われる。
ジロジロ見ることも出来ないので、
すぐに前を向いて通り過ぎたが、
ちょっとその顔の印象は忘れられなかった。後から別の登山者に聞いたところによると、
ヘリコプターで運ばれていったとのことだった。
3000メートルを超える山に登っていると、
自分でも気がつかないうちに、
登山道を外れて歩いていることがある。
話は古く18年年近く前になるが、
剣岳を登山仲間から少し遅れて登っていると、
いつの間にか脇の少しくだりの道に入ってしまい、
少し歩いていしまった・・・。
ハッとして我に返って、
(おかしい・・・)と思って、
急いで戻ったことがある・・・。
何でその道に入っていたか今でも分からない・・・。
そのまま行ってしまえばもちろんアウトだった。やはり日本アルプスと呼ばれる山域を登るときは、
ほんとに気をつけないといけないと思う。
穂高岳、槍ヶ岳など名前はメジャーではあるが、
やはり相当な険しさを持っているということだ。
2年前の谷川岳では顔面を岩にぶつけてしまった・・・。
大事には至らなかった怪我ではあるが・・・。両手を使って3点支持を確実にして、
ますます急になる岩の道を登っていく・・・。
穂高岳山荘までもう少しだ・・・。
投稿日 2007-08-29 12:33
ワオ!と言っているユーザー
投稿日 2007-08-30 08:59
ワオ!と言っているユーザー