睡眠は3時間で終了した。 全身の筋肉がだるい。 発作的な咳も出る。 もう、睡眠薬や咳止めは使いたくない。 胃腸薬だけを飲む。ホテルのシングルルームに持ち込んだ、スモールホイールのMV3が、数時間前の出来事を誇らしげに語るように見えた。
【ツールドおきなわ】 ゴール手前のビーチで休憩。 高橋君もすぐに追いついてきた。記念撮影タイム! ここから先はわずかなパレードでゴールだ!このビーチではしゃぎすぎたので、ゴールタイムは15:55だ。走行距離320km! サイクリングとは名ばかりの激闘の2日間。スモールホイールに跨る初心者が、ロードバイカーたちに一泡吹かせる計画は、僕が泡を吹いて終わった。いや、それでも勲章には違いない。 何が凄いって、僕が凄い! 練習は4回のみで、みごとに完走できたのだから。 気管支炎部門優勝にしてあげたい。
【ツールドおきなわ】 昼食が終了してのひとコマ。 TOPに程近い時間に昼食を取れたので、休憩時間はたっぷり。 しかし、走り続けた筋肉と食べ続けた胃が悲鳴を上げ始める。あと何時間かで全てが終わる。 そのくらいは大丈夫なはず。
【ツールドおきなわ】 モータースポーツの世界で、エンジンが非力な場合、前に出るにはどうしたらいいか? 空気抵抗の少ないボディ形状を得ることも重要だが、多くは腕に頼ることになる。 コーナリング手前のブレーキをぎりぎりまで我慢すれば、先にブレーキングした車両を抜き去ることができる。 コーナリングスピードを落とさないことも重要だ。 コースは信号のある都会に差し掛かりつつある。 公道、そう公道なら僕の領域だ。 小径タイヤの走行抵抗は、路肩のライン上を走ることにより軽減させる。 走行中は必ず先行車両のスリップストリームに入る。 下り坂は、体を前傾し空気抵抗を最小にする。制限速度を大幅に超えてもペダルの力を緩めない。 そして、次に来る上り坂を可能な限り惰性で登る。 信号のタイミングを計りながら、スピードコントロールし、赤に変わる前のダッシュ、青に変わった瞬間の無減速通過の確率を上げる。 そうすれば、正真正銘の先頭集団の仲間入りだ!もちろん、周囲の人たちの実力はぜんぜん違う。 我ながら、アホアホ作戦だ。
【ツールドおきなわ】 2日目は、西海岸の名護から南下し、その後東海岸の金武町へ抜け、うるま市、中城村などを南下して那覇に入り、那覇からは58号を北上して1日目スタートの名護市民会館へ戻る。7:00のスタートから23分が経過した。 山道が始まる。 このような混戦状態でも、脚力で優位な者は前に出ることができる。TOPライダー達は、上り坂が始まると、とたんに僕を置き去りにする。 TOP集団から脱落していく者達が、僕の数少ない獲物だ。
【ツールドおきなわ】 2日目のスタートが迫る。 法螺吹き男爵も高橋君も、気合充分! 空気圧やその他の確認をして、スタートを待つ。 北風は強く、昨日より肌寒い。僕はロングスリーブのブレスサーモを選択した。
【ツールドおきなわ】 TOPから遅れること17分。 喜瀬ビーチパレスに到着。 1日目の戦いが終わった。本日の走行距離は184km。 消費したエネルギーの補給と、筋肉の補修に必要なたんぱく質の補給が今夜の仕事だ。季節はずれのリゾートホテルのベランダからは、強風に波立つ海が見えた。この後、日が暮れても続々とゴールする勇者達が続く。
【ツールドおきなわ】 朝焼けの中をスタートした。 今は、夕焼けに包まれている。 ゴールまでは、もう1つ峠を越えなくてはならない。ところで、ロードバイクのサドルは小さくて硬い。 柔らかいサドルはいくらでもある。 では、なぜ使用しないのか? 答えは、小さいサドルのほうがこぎやすいからだ。 お尻の痛みは我慢しても問題ないが、足が攣ったら前に進めない。 どっちを選ぶ? 僕は前に進む。
【ツールドおきなわ】 やんばるの坂道が始まった。 スポーツジムでは、ランニングマシンに斜度をつけて走っている。 通常は30分。気分がのれば1時間。 だが、そんなものではない。午後は坂道ばかりだと覚悟はしていた。 その覚悟がさらに甘かった。 トレーナがいたらこういうのだろう。 「次の1時間は登りね」・・・「終わった?じゃあ、それをあと4セット、がんばって!」 TOP集団は既に見えない。