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THE LASR OF THE LAST

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THE LASR OF THE LAST THE LASR OF THE LAST
「The Last of the Last」──ALPINA B3 GT Touringを選んだ理由
友人社長の計らいもあり、ALPINA B3 GT Touringの購入権利をいただけそうだ。
やるなら、最初からフルオプション仕様だと決めていた。
 
近年、新車など買える身分ではなかったのだが、今回ばかりは話が違う。
これはただ新しい車を手に入れるという話ではない。もっと深い、“ある時代の哲学”を継承するための行為だと、僕は思っている。
 
「GT」とは、Gran Turismo──長距離を優雅に、速く、そして疲れずに駆け抜けるクルマにだけ与えられる称号だ。
ALPINA B3 GTはまさにその理想を体現している。ベースは旧型BMW G21 3シリーズ・ツーリングだが、その骨格と心臓は、完全に別物だ。
 
直列6気筒のB58エンジンは、ALPINAの手で精緻に再構築され、最高出力529PS、最大トルク730Nmという数字を得た。──まあ、僕からすればそれでも控えめだと思う。
だがALPINAは、その数字を誇らない。スペックよりも「質感」を語るブランドだ。
ドライブフィールは圧倒的に滑らかで、トルクの立ち上がりは早く、それでいて鋭くない。包み込まれるような加速──この余裕こそが、ALPINAの真骨頂である。
 
そしてGT Touringの本質は、エンジン性能だけでは語り尽くせない。
僕が最も惹かれたのは、エンジンルーム内に配された美しいクロス形状の補助フレーム構造だ。
 
一般的な車に見られるストラットタワーバーとは異なり、左右のストラット上部を斜めにクロスする2本のアルミ製ブレースが、サスペンションとボディの結合剛性を静かに支えている。
これは剛性を“上げる”のではなく、“整える”という設計思想。硬くしすぎれば乗り心地が犠牲になる。だがGTには、そんな力任せのセッティングは不要だ。
 
あくまでしなやかに、かつ正確に。高速巡航時の挙動を安定させ、微細な入力にも雑味なく応答する──そうした繊細な走りの土台に、このブレースが深く貢献していることは間違いない。
 
M3 Touringとの違いも明確だ。あちらが筋肉の塊なら、ALPINA GTは仕立ての良いジャケット。
性能は同等以上でありながら、あえて主張しない。控えめでありながら、見る人が見ればすぐにわかる。この知的なアプローチこそが、ALPINAの哲学だ。
 
そしてなにより、このB3 GTは「最後の本物」になり得る。
 
2022年、BMWによるALPINAブランドの買収が発表され、2025年末をもってブッフローエでの独立生産は終了する。
つまりこのB3 GT Touringは、ALPINAが自社の技術者と職人の手で開発・製造する、最後のフルラインモデルの一つなのだ。
 
以後のモデルは、BMWの大規模な生産ラインの中で「ALPINA仕様」として組み上げられる。ブランドは続くかもしれないが、魂まで続くかどうかはまだわからない。
もしもALPINAが将来、マイバッハやMパフォーマンスのような“上級ブランド枠”に変わるとしたら──
スポーツ性能と職人技、ツーリングの実用性を兼ね備えた“クラフトされた高性能車”としてのALPINAは、このB3 GT Touringが最後なのだ。
 
豪華な装備や特別なレザーも魅力だが、それは単なる贅沢ではない。
それは「記録」だ。この時代のALPINAが、何を大切にし、どんな思想でクルマを作っていたか。──それを残すことに意味がある。
 
これは自己満足ではない。
自動車文化への敬意だ。
時代が電動化と簡素化へと流れるなかで、今しか手に入らない「手のかかったクルマ」を選ぶということ──
それは、過去への憧れではなく、“継承の意志”だと、僕は思っている。
 
ALPINAの最終章に、僕も参加しよう。

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