何度も流産の宣告を受け、
そのたびに、
こころが凍りつき、
感情さえ、
うまく表現できなくなっている患者さんが
よく、いらっしゃいます。
今回、できうる限りの治療をして、
でも、
また、
赤ちゃんの心臓が止まってしまった患者さんが
いらっしゃいました。
私の説明を
しっかりとした表情で受けとめられていました。
私は、いったん時間をおきましょうと、
別室にご案内しました。
その後、
当院の助産師さんが、
やさしく、ゆっくりと、対応して、
少し落ち着かれたとのこと。
でも、気丈に振舞われているご様子から、
「泣いてもいいんだよ。」
「優等生である必要はないんだよ。」
と。
涙が一気に、とめどなく、あふれでたそうです。
泣ける場所は
必要ですね。
つらいときはつらいですから。
不育症、着床障害であり、
10回以上の不成功を経験され、
年齢が40歳以上になり、
2回以上の卵子提供も受けられた
5人の患者さんを今までに、診ています。
アメリカ、あるいはタイで、
複数回、
卵子提供を受け、夫の精子と体外受精し、
その受精卵を自分の子宮内へ
複数回、移植されたにもかかわらず、
不成功に終わっていました。
当院の検査で、
すべての方が不安障害、あるいは適応障害ありと診断され、
身体的危険因子の治療とともに、
支持的精神療法、薬物療法を行いました。
その結果、
現在までに、
3人の方が、妊娠初期を無事に乗り切り、
当院を卒業されています。
このことより、
不育症、着床障害の治療法として、
他人の若い卵子による体外受精・胚移植が、
極めて有効であるということではなく、
ご本人の子宮内の環境をよくする治療が
必要であると思われます。
流産を繰り返していると、
妊娠することも恐くなってしまいます。
私は、それを
「妊娠恐怖症」
と、言っています。
流産の手術後、
2~3回、生理がくるまでは
妊娠しないようにお話していますが、
(子宮内膜の環境を整えるため)
その間だけ、
「ホッ」とされている患者さんがいらっしゃいます。
いつも、緊張、不安、恐怖の連続のなかで
生活されているのではないかと思います。
年齢を考え、
まわりからの期待を感じ、
精神的に弱い自分を受け入れられなく、
結果として、
自分を追いつめ過ぎているように思います。
「女性として生まれたからには、
子供を産んで育てたい。」
「でも、なぜ、子供を産みたいのか。」
「夫とは血のつながりはないけど、
子供を通じて家族のつながりを築きたいからなのか。」
そんなことを考え、
ネットで膨大な情報が得られる中、
頭でっかちになり、
消化不良で、
不安の嵐に巻き込まれているように思います。
最初の妊娠したとき、
そのときの と き め き を思い出してください。
抜け出すヒントがありますよ。
自宅のベランダに花しょうぶが咲きました。
小さな鉢に、大きな花を咲かせています。
水を毎日、
たっぷりあげないと枯れてしまうそうです。
妊娠初期の子宮内の赤ちゃんと同じですね。
花しょうぶは背が高くて、凛とした感じです。
大きくて、りっぱです。
見ているだけで癒されます。
こころに楽しみを、
からだにお水を。
ですね。
ある患者さんが、
実のお母さんから、
「赤ちゃんを殺すから、もう止めなさい」
と、言われたそうです。
10年以上にわたって、
数え切れないくらい流産して、
それでも、
こころを振り絞って、
がんばり続けている患者さんの、
その実のお母さんです。
私は、少しでも可能性があるかぎり、
可能性のあるすべての治療をしています。
私からは、あきらめましょうとは、言えません。
お母さんにとっては、
いつまでたっても、自分の娘であり、
その娘が、
心身ともに、苦しくなっていく姿をみて、
言われたのだと思います。
その涙は、本当に重そうでした。
でも、がんばっている今と、
今までのがんばりは、
誰もが認めているはずです。
亡くなった多くの小さな天使たちも、
きっと、
あなたを
あなたの人生を応援していますよ。
赤ちゃんと共に、当院卒業された患者さんから、
「やっと、
自分が自分らしく居られる場所
を見つけました。」
と、
お知らせいただきました。
「自分が自分らしく居られる場所」
いい言葉ですね。
自分について、
自分の幸せについて、
自分の人生について、
深く、深く、考えたからこそ、
言える言葉のように思われます。
私個人について考えれば、
今の環境が
「自分が自分らしく居られる場所」
のように、感じられます。
先日、当院の不育治療で待望の赤ちゃんを出産し、
子育て中の患者さんから電話相談がありました。
相談内容は、赤ちゃんにも、やさしくなれないとのこと。
あんなにつらい経験にも耐え、
やっと会えた赤ちゃんなのに、
最近、
やさしくなれない。
そんな自分が情けない。
以上のような思いつめた内容の相談でした。
きっと、
がんばりすぎて、少し空回りしているように感じます。
力を抜いて、
自分自身にも、ちょっとは、やさしくしてあげて。
あなたは、
もう十分過ぎるぐらいがんばっているのですから。
「自分にきびしく、ときには、やさしく。」
ですよ。
私は5月が一番好きです。
5月の風が好きです。
5月の雨も大好きです。
風がやわらかく、
緑がまぶしく、
春らんまんです。
でも、
そんな輝いている季節の中だからこそ、
雨の日は一息つけ、
ほっとします。
緑が雨にぬれ、
しっとりとして、
見ているだけで癒されます。
いろいろな形の命を感じます。
今年もついつい忙しく、
満開のソメイヨシノ桜を
じっくり楽しむことはできませんでした。
本当に、桜という花はかないものですね。
あっという間に満開になり、
あっという間に散ってしまいました。
楽しみは自宅の近くの山桜です。
遅まきに
じわじわと咲いてきてくれます。
ソメイヨシノ桜に比べて、
華やかさはありませんが、
私は山桜が好きです。
今日(平成24年4月14日)、
第2回 青クリの会を開催しました。
会を終えた今、このブログを書いています。
約40名の方が参加されました。
私の講演の題名は、
「精神・神経系とホルモン系と免疫系と凝固系
の変調による不育症・着床障害 ~その治療法~」
でした。
身体的危険因子とともに、
精神的危険因子がいかに悪影響を与えているか、
わかっていただけたことと思っています。
その後の青クリサロンでは、
参加された方々の心の悩みをお聞きし、
みんなで共有できたと思っています。
ひとりじゃないんです。
同じような不安を話し合うことで、
少しは心の重荷が軽くなったのではないでしょうか。
テーマのひとつとしての不育症、着床障害の
主な危険因子としての
過剰なストレスをいかに軽減できるのか。
ひとつの方法として、
自分自身でもできる認知行動療法
についてもお話しました。
人間の反応は、気持ち、体、 考え(ものの見方)、行動
の4つの側面に分けられることと、
それぞれが影響し合っていることを知っていただき、
そして、
その中の 「考え」 や 「行動」 は
人間の意識の支配下にありますので、
それを変えることが
認知行動療法であることをお話しました。
自分自身でもできるのです。
それが不育症、着床障害の治療になるのです。
しかし、自分だけではできない場合、
そのときは、
わかっていただける人を見つけてください。
悩みを話せる仲間ができれば、
それはすごい力になるはずです。
参加された方々、
本当にお疲れさまでした。
少しでも、有意義な時間であったならば、
私とスタッフは心から幸せです。
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