鉄労から見た当局の生産性運動 第三話
6月
7日
今回で、鉄労視点での生産性運動は終わりとして、以後はマスコミによる反生産性運動に話しを進めたいと思います。
今回も参考資料として、鉄労「国鉄民主化への道」を参照しながら、随時国労の資料等を参考にさせていただきます。
国労が生産性運動を批判しても、脱退者は後を絶たず
生産性運動は、国労にとっては頭の痛い問題でした。
国労では、「嘘だよ生産性運動」というパンフレットを作成し、その引き留めに躍起になっていましたが、マスコミを活用して不当労働行為と関連させると言った戦略は採っていませんでした。
特に、「嘘だよ生産性運動」と週刊誌版4ページで、カラー印刷、漫画入りのチラシ広告であったそうで、潤沢な組合費を使っての冊子でした。
国鉄当局の生産性ニュースがガリ版刷りのチラシで有ったことと比べると大変立派なもので、シリーズ化されて一五話まで続くのですが、それでも国労組合員の流出は続く事となりました。
国労としては階級闘争理論を成立させるために、当局を資本家階級(ブルジョアジー)に見立てて、それに対する組合員を労働者階級(プロレタリアート・いわゆる無産階級)であるとして、攻撃することとなるのでした。
まぁ一番とばっちりを受けるのが中間管理職と言われる助役と呼ばれる人たちで、駅長・当局と現場の職員との板挟みという形となり、精神的に疲弊してしまうことも多々ありました。
実際には、国労的には「階級闘争」と「スト権奪還」が大きな運動方針であることから、このチラシでも、その辺が強調されており、生産性運動はあくまでも、資本家による搾取が目的であるという説明がなされていました。
最近でも、元国労組合員の方からは生産性運動は、資本家階級による搾取であったと真顔で言われて・・・なんてこともありました。
結果的に、こうして生産性運動=搾取行為だと思っていた方が少なからずおられたのではないかと思ってしまいます。
ここで、国鉄民主化への道から少し引用してみたいと思います。
当局の幹部をどうしても"資本家"にしないと、階級理論が成り立たない。だから、「総裁や常務理事の賃金を公開しないから資本家である」などと変なことを言い出すのである。総裁への賃金など、社会党が国会で質問したら直ちに明瞭になる数字だろう。
国鉄の「赤字」論がやかましい現在、国民は、国鉄の経理内容の公開を求めています。しかし、総裁以下役員及び管理者の賃金さえも公開していません。公開できないのでしょうか。これでよく「成果の公正配分」を労働者にということが出来ると思います。(中略)生産性運動の3原則とは、雇用の拡大=事実が示す人減らし、労使協議=無条件協力の話し合い、成果の公正配分=大きなスプーンは使用者に、である。(リーフレット第四話)などとなっていた。
鉄労は、労使はパートナーであり経営に積極的に参画すべきと主張
鉄労は、基本的には国労の理論は階級闘争に立脚したものであるとして、鉄労新聞で下記のように主張したとされています。
企業の発展を促進するために、産業民主主義の徹底した定着を図らなければならないが、それには労使協議の実効的な制度が必要である。産業民主化実現のためには、官僚制の打破と職員の経営参加が必要だ。
と強調したとされています。
国鉄当局が目指したものは官製の労働組合だったのか?
但し、当局は国労の階級闘争理論に対抗するものとして、生産性運動をみていたと鉄労は批判しています。
実際に、昭和30年代の闘争は極めて厳しいものがあり、順法闘争に見られるダイヤ混乱は非常に大きな影響を与えることとなりました。
ただし、当時の国労では階級闘争としての運動は行っているものの、労働運動は組合役員の指導の下組合員が動員されると言ったことがあり、職員は極めて純朴で従順であったように見受けられます。
そこで、当局としては国労組合員の生産性運動に対抗すべく、生産性運動を導入したわけで、戦後すぐに、官製の労働組合で組合(鉄道会議)を作ろうとしたのと酷似しているように感じてしまいます。
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