新幹線建設と国鉄 新幹線で貨物輸送
1月
14日
連日、踏切事故などの硬い話題ばかり続いていましたので。今回から新幹線開業までのお話をさせていただこうと思います。
今回は、新幹線の貨物輸送ということでお話をさせていただこうと思います。
現在の新幹線は、0:00から6:00までは原則的に新幹線は走行せず、その時間帯は線路の保守に充てられることになっていますが、計画段階では貨物列車の一部も新幹線で夜間に運んでしまおうと言う計画がありました。
最近の資料では、夜間の貨物輸送は世界銀行から借款を得るための口実だったとか、実際には貨物輸送を実施する気が無かったのではないかという記述もありますが、当時の交通技術と言う雑誌を読む限りでは、本気で新幹線による貨物輸送を検討していたように見受けられます。
今回参照したのは、交通技術昭和35年9月号に掲載された、東海道新幹線の貨物方式を参照しています。
新幹線で検討された貨物輸送
当初の発想は。新幹線区間が夜に何も走らないので有効活用の観点から考えられたそうで、当初は新幹線での貨物輸送は構想としてはなかったようです。
そこで、夜間の開いている時間帯を利用して、東京・名古屋・大阪間の速達貨物列車を運転してはどうかという結論に達したようです。
考えられる列車としては、小荷物・小口混載・コンテナ及び車扱いの急行便などが候補に挙がりますが、コンテナ特急「たから」号のような列車こそ、新幹線に移して速達化した方が得策であると考えられたためだと記述されています。
さらに、貨物輸送を行うに当たり、新幹線での旅客輸送が主であることから、貨物列車も従来のような、機関車に牽引させる方式ではなく、電車とすることで軌道構造物の規格を上げる必要がなく結果的に建設費を抑えることが出来ることから下記のような貨物電車が計画されたそうです。
貨物電車構想
計画された貨物電車は、下記のようなものでした。
1)東京~大阪間を最高速度130 km/h 途中ノンストップで約5時間半輸送
2)車両は、10両編成(4M6T))を1ユニットとし3ユニットをつないだ30両編成
3)貨車の長さは1両15m程度とし、5tコンテナを5個積載、30両編成で750tとします。
当時の特急貨物たから号が、最高速度85 km/hで汐留~梅田間を約11時間でしたので、それと比較すれば十分速いと言えるのですが、現在は在来線で、M250系電車が東京貨物ターミナル~大阪・安治川口間を6時間11分で結んでいますので、当時の新幹線貨物構想とほぼ同じ所要時間で結んでいるほか、在来貨物輸送でも概ね6時間半程度で結んでおり、隔世の感があります。
カートレインの可能性も検討されました
新幹線貨物輸送で期待されたものの一つとして、カートレイン輸送が出来るのではないかと書いています。
カートレイン方式をどのような形で考えていたのか判りませんが、当時のイラストなどを参照しますと、コンテナの中に自動車を入れて運ぶ方式のようです。
なお、昭和35年9月号の、交通技術で下記のような記述がなされています。
引用しますと、
欧米で流行し始めている乗用自動車の鉄道輸送があるが、わが国でも自家用自動車の普及発達によっては必要となって来るかも知れないので検討中である。
車両高さの限界は4,500 mmとしているので、床面高さを電動車の条件からレール面上1,300mmとしても小型乗用車は十分2段積が可能であるし、外国製の自動車は背が低いので楽に2段積できる。
引用終わり
として、カートレイン輸送の検討がなされていたことが伺えます。
まぁ、資料に出てくる乗用車が時代を感じさせてくれます。
もし貨物輸送が実現していたら?
最終的に貨物輸送は行わず、旅客輸送のみで営業を開始することになりましたが、仮に新幹線による貨物輸送が実現していれば、山陽新幹線区間などでは積極的な貨物輸送などが行われていたかもしれません。
更に言えば、青函トンネル区間での積み替えの手間は発生しますが、新幹線形貨物電車を開発して260 km/h運転を行えば、旅客側の北海道新幹線も減速せずにそのまま通過することが出来るのではないでしょうか。
要は積み替えに伴うコスト増と、時間制限と速度制限を今のように受けずに走行できることで得られる経済効果との比較で考えられるべきではないでしょうか。
積み替えのコストを考えても、260 km/hで運行できればメリットは大きいと思いますし、あえて言えば、青森ターミナルではなく盛岡など速度メリットが得られる区間から新幹線に載せ替えて走らせることで、積み替えによる所要時間を速度で相殺できれば、新幹線で輸送するメリットはあるのではないでしょうか。
最後は、妄想的なお話となってしまいましたので、改めて別の機会にお話をさせていただこうと思います。
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