『二人のメリーズ』で良い具合に酔っぱらえたので、チェスキークルムロフの夜景を撮る。 これは、もう、何なのか。街を歩きながら信長が舞う「敦盛」を思い出していた。 『人間五十年、化天のうちを比ぶれば、夢幻の如くなり』
雨交じりの『チェスキークルムロフ』をぶーらぶーらして、お土産に『城とおっさんが描かれたビアマグ』なぞを買う。あまりに俗な買い物だが、これを買っておけば自宅でビールを飲む口実にもなる。同じ物が店によって値段が違う、と言う良く有る観光地の土産物屋法則が、この地でも当てはまる。最安値から10コルナ=50円高かったが、戻るのも面倒なのでホテルに近い店で295コルナ=1450円位で購入。 「赤門」まで戻って来て、角にあるCafe「APOTHEKA」に入る。英語で言う「Apothecary」、そう「薬屋」と言う名前のCafeである。実際、昔は薬屋だったらしく、貴族しか薬を買えなかった時代に城の前で営業していたそうだ。 もっとも、チェコでは現在でも感冒の対処として「ビールを飲め」という医者が居るというので「薬屋」でビールを飲むのも当たり前、かもしれない。ビールと甘酒の違いは有れど、何か店の位置関係からも神田明神前の「天野屋」を思い出す。 カウンターが壁面一面を取る小さな店の内装には、「薬屋」を思わせる天秤や薬瓶が置かれているが、全然辛気臭くなくお洒落な感じなのは流石。 私はピルスナー・ウルケル、女房はホットチョコレートを頼む。このホットチョコレートはミルクにサイコロキャラメル位のチョコレートの塊を溶かして飲む、という物で、柄の付いたチョコをカップに入れて「ぐ~るぐる」回して戴く。勿論、美味でもあるが、趣向もお洒落で女房もご満悦だった。 夜半になっても雨は止まなかったが、折角なので川沿いの居酒屋に夜景&ビールを飲みに出かける。キリスト橋の先の路地を左手に折れて「U dwau Maryi」という居酒屋に入る。「二人のメリーズ」ってのはキリスト教国ではおなじみのフレーズ。(双子のリリーズでは無いぞ)イエスの母マリア(メリー)とイエスの妻(?)マグラダのマリア(メリー)の事だ。店自慢の川沿いのテラス席に陣取るが、雨交じりなので一段奥まった屋根の下なのが残念。 ここではダークビールを戴く。チェコビールは何を飲んでも美味い。今日も良く飲んだ。 店を出ると雨が止んでいたので、そのまま夜景を撮りに行く。チェスキーの夜も今宵限りだ。
『チェスキークルムロフ』の領主であった「エッゲンベルク家」の名前を今に残すビール醸造所。 言うまでも無くチェコはビール大国でピルスナーの元祖「ウルケル」やバドワイザーの本家「ブドヴァルゼル」などなど「飲まずばなるまい」ビールは山ほどあるが、これも当然の事として土地土地に地ビールがある。『チェスキークルムロフ』に来たならば「エッゲンベルク」を飲まないわけにはいかない。(と、言う理由で無理やり女房を納得させる) 「ボヘミア博物館」あたりに来たら雨脚が強くなってきたので、昼食を取りに「エッゲンベルク醸造所のレストラン」へ向かう事にする。幹線道路沿いから左の緑道に下り、人専用の橋を渡れば対岸は、もうエッゲンベルクの駐車場だ。 当然、non reserveだったが、4人掛けのテーブルに案内してくれた。造りは天井の高い「ビヤホール」だ。 ビールは3種類、ダーク、アンバー(エール)、ピルスナーの順に戴く。食事は、「ビールのつまみ」メニューから「ソーセージの黒ビール漬」や「カマンベルチーズの丸焼き」、「卵とツナのサラダ」などを戴く。日本人には、これで十分だ。どれも美味しく、ビールはシリーズを二周してしまった。 なお、このレストラン、当然カードも効くのだが、コルナで払う方がユーロよりも安い。コルナ現金払いで外に出れば雨も小降りになっていた。
『チェスキークルムロフ城』は、撮影禁止だが内部の見学ができる。チケットは「第二の中庭」のデスクで買うことが出来る。見学にはルート1、ルート2の2コースがある。両方とも出発点は「第3の中庭」だ。 この城は城主の変遷に合わせてルネッサンス、バロック、ネオゴシックなど様々な様式の建物が一つの城として形成されている珍しい建造物だが、結果として「増築改築新館オープン」の温泉旅館的お城になっている。ツアーは、その内の「上層の宮殿」と呼ばれるエリアを回る。「第三の中庭」と「第四の中庭」を囲む建物だ。 ツアー途中で一か所だけ撮影が許されている場所があるが、それは「外の風景」を撮る窓。城内は一切撮れない。よって、ツアーの説明が難しいが、一言で言えば「こら、見ごたえある。参加必須のツアー」だった。(良く判らなくてスマン) 少し触れれば、「五弁の薔薇」装飾、「黄金の馬車」(部屋の中にどーんとある)や、「白いドレスの幽霊」、ルネッサンス絵画風「巨大タペストリー」、「仮面舞踏会のホール」(壁面には仮想した人々や、それを覗く庶民、自分を見ている鏡などが描かれていて飽きない)など多くの見どころがある。 ただし、このABルートでは、この城で最大の名所ともいえる「城内劇場」を見る事は出来ない。別料金での「劇場専用ツアー」に参加する必要がある。残念だが、訪問時は、この事(そもそも『城内劇場』そのものを)知らなかったので建物の前まで何度も行っているのに参加できず。旅は下調べが重要だ。 城内ツアーを終えた後に、ようやっと塔に登る。この塔は正式には『フラデークの塔』と言うらしいが、チェコ語で「城」は「hrad」なので『城の塔』そのまんまってことだ。 階段の途中に料金所が有って入場料を払う。登り切れば絶景を見渡す事が出来る。
『チェスキークルムロフ城』の「第一の広場」から「スペイン坂」を降りれば、石畳の坂道が途中右に折れる階段に変わり「トゥルデルニーク」を売る店の脇から道に出る。 そのまま道なりに進めばキリストが十字架にかけられている像の建つ木製の橋。向かいには「ネポさん」の像も建っていて城を見上げて写真を撮るスポットだ。ここは「キリスト橋」(命名)と呼ぶことにする。 川沿いのcafeを眺めダラダラ登りの石畳を行けば中央広場。正しくは『スヴォルノスティ広場』という、この広場は『テルチ』の広場の様にドーンと開けた広場ではなく、四方を建物に囲まれた「スクエア」な小さな広場だ。しかも全体に傾むいている。 広場にはペスト禍からの加護を願った『マリア祈念塔』が立ち、広場のアクセントとなっている。『聖ヴィート教会』を目指して左手の路地を上る事にする。 車一台+という幅の石畳の坂を登れば、家々の狭間から城の塔が見えたりする。まったく、どこもかしこも中世テーマパークのような街だ。 教会への最後の急坂を登れば、時計の付いた鐘楼が聳える。城の「塑像の橋」(『プラーシュチョヴィー橋』)から見えた尖塔だ。教会の裏へ回ると密集した市街とは、また違う緑の中の洋館が美しく見えた。 教会を過ぎて、なお道を登りピークに至れば『ホテル ルージュ』である。その前は、城を望むテラスとなっていた。芝生の真ん中に中世の「4」(8の半分って奴ね)みたいなオブジェがあったが、本当は何なのかは判らない。 この展望テラスの隣が『ボヘミア博物館』。その先は石橋になっていて城側には、これも一寸した展望台があり、反対側はモルダヴ川まで降りる石段が有った。こりゃ、降りて見ねばなるまい。 石段の途中にはレストランの入り口が有り、更に降りるとモルダヴ川と街中を繋ぐ水門が有った。石積みの橋と言い、水門の小屋と言い、間違いなくRPGに出てくる不気味な1シーンみたいだ。こっちは、「バイオハザード」か?夜なら怖いぞ。 さて、気を取り直して道に戻り進めば、小規模な家屋が続く道に繋がる。ここから幹線道路までは『チェスキークルムロフ』のペンション街の様だ。B&Bサイズの様々な装飾の宿が続く。「ペンション通り」(命名)と名づけよう。 「ペンション通り」の入り口の三叉路に写真館が有った。ディスプレイされている「作品」は、中々に扇情的で刺激的なモノクロームのセミヌード。この辺の方は、若い頃の記念に、この手の写真を撮るのだろうか? このまま幹線道路へ出て『エッゲンベルグ醸造所』へとグルっと戻ってもいいが、只の車道を歩くより街並みを、という事で来た道を引き返し、教会の前から右手に路地を折れる。開店前のcafeの間の狭い坂道を抜けて少し進めば広場の別の角に出た。 「キリスト橋」の手前から左手に入れば、大きな水車を「内蔵」した家。上流の堰で分岐させたと思われるモルダヴ川が、結構な水音を立てて流れている。 川沿いのcafeを観ながら下流に進めば、昨晩犬の散歩をしている人物を撮った「モルダヴ上落合」(命名)のベンチだ。折角だから、モルダヴ川に手を突っ込んでみる。そこそこに冷たい。 ホテルのロビーに戻ったら、女房が待ちきれずに朝食を取っていた。
チェコ ボヘミアの『チェスキースルムロフ』には連泊としたので「今日は一日、思う存分チェスキークルムロフ」だ。 昨晩からの雨が少し残る生憎の曇天模様。まず、朝食前の早朝の街に出る。観光客が増えてからだと思うように撮れないかもしれない風景を収めるため、昨晩のうちにロケハンを済ませていた『チェスキークルムロフ城』へ向かう。街中の風景はむしろ人が居た方が絵になるから後回しだ。 この時間、既に「赤門」は開かれていた。思った通り、人気は全くない。城門の掘割を覗けば昨晩には見れなかった熊が居る。何でも16世紀から堀に熊を飼っているそうだ。水堀よりも確かに怖い。城に向かって右に二頭、左に一頭。橋の下は繋がっていないので一頭の熊は孤独だ。どの熊のことだか知らないが、この内の一頭は「マリアテレジア」という名前らしい。 場内に入ると昨晩は開いてなかった扉が開いていて人一人程度の展望テラスになっている。この扉のある場内は、そこそこの上り傾斜なのだが石畳ではなく板張りになっていて、「これ大雨降ったら上から滑ったおっさんが落ちてくるんじゃね」と思わせる。 昨晩は夜目で目立たなかった城壁は明るいところで見ると結構、稚拙な感じの「だまし絵」=スグラフィット技法で装飾されている。石積みやレリーフの塑像をだまし絵で3Dっぽく見せたものだが、明るいところで見ると安っぽさの方が目につく。もう、ちょっとうまく書けないか?とも思うが、実はこの技法は「絵」というより2色の漆喰を使った「削り」による表現なので、筆などで繊細に描ける「絵」とは異なる。その意味では「だまし絵」というのは適切では無いのかもしれない。まぁ、中世ヨーロッパは暗黒の時代でいつも薄暗い中では、こんな感じで良かったのだろう。(な、わけないか) 例の塑像の橋(正しくは『プラーシュチョヴィー橋』というらしいが、これも発音出来ん)まで来ると、曇天ながらも街並みが美しく迎えてくれた。青空で雲が芸をしていれば言うことはないが、どうせなら雨にけぶるくらいのチェスキークルムロフも美しかったかもしれない。 さらに先に進むと、昨晩は、左記のテラスと同じように閉まっていた木戸が開いていて、ここが城のcafe(まだ営業はしていない)。その前のテラスこそが、数多ある『チェスキークルムロフ』の観光写真が撮られる最高のビュースポットになっていた。無粋な柵などがないのが素晴らしい。一人三脚持ち込みの気合い入った感じのドイツ風兄ちゃんと場所を分け合い多くの写真を撮る。なんか、このまま1日居てもいい至福の時間だ。 その先でお城は一回門を出る形になるが、実はこの先は城の庭園になっていて絶景テラス前の「日時計の新館」(後で知った事だが、この建物こそが『チェスキークルムロフ城』最大の見どころ『城内劇場』そのものだった)から、空中橋経由で庭園へ行けるようになっている。私は城には入れないので、外から庭園の入り口まで行ってみた。途中、ヨーロッパの田舎の風景という感じの良い感じの道だった。 「第一の広場」まで戻れば右手(「赤門」からは左手)にモルダヴ川を渡って市民広場へと通じる道への小路がある。見た感じで「スペイン坂」(命名)と呼ぶことにする。