元住吉に親戚がいた おばちゃん、兄ちゃんが三人、姉ちゃん二人がいた 私は子どもの頃、電車に乗って おばちゃんのアパートへよく遊びに行った おばちゃんはいつも内職をしていた 子どもが五人もいて その指を触るとゴチゴチと皮が厚く 私は子どもだったが凄いひとなんだと思っていた 一番上の兄ちゃんは 小学生だった私にパチンコを教えてくれた 左手から玉を流し天釘の狙う場所まで 公共賭博の英才教育を受けた タバコをくわえ龍のスタジャン着た 兄ちゃんと歩くとひとが避けて行った 二番目の兄ちゃんは いつも紺色のジャージとTシャツを着て体育会系だった 近くの高校へ行くと高鉄棒にぶら下がり 兄ちゃんが懸垂をすると筋肉が凄かった 私がグライダーで鉄棒から飛ぶと 兄ちゃんは片手で遠くに飛んでいた 三番目の兄ちゃんは 神経質で胃が弱くよくお腹をおさえていた 土日に映画館でアルバイトをしていて 無料券をくれるので映画を観に行くと コカコーラを奢ってくれた 怒ったことのない優しい兄ちゃん 一番上の姉ちゃんは なんだかお母さんみたいで 仕事と家事で毎日が忙しそうだった 分厚いレンズの眼鏡をしていて 博学だし姉ちゃんの言うことはみんな反論しない そしてすでに一家の大黒柱だった 二番目の姉ちゃんは なんだかいつも化粧の匂いがしていた 姉ちゃんに遊んで欲しかったけど 家にいることが少なくあまり遊ばなかった だけど雨の日にアスファルトの上を 裸足になりふたりで歩いたのがとっても楽しかった 狭いアパートにみんなが暮らしていた 一番上の姉ちゃんと兄ちゃんだけが 父ちゃんを覚えていると言っていた 突然に父ちゃんは家を出て行ったらしく それっきりだったと言う 悔しい思いをたくさんしてきたと思う だけど歯を食いしばりみんな頑張って 笑顔を絶やさずに賑やかな おばちゃんの家が好きだった 狭くてごちゃごちゃしていたけど 楽しい想い出は今でも私の宝物である
痛みもなく 寒さ暑さもなく 雨に打たれていたい 天から溢れた斜めを 身体に響かせ 微笑む感性のまま できることなら 元の場所へ 連れて行って欲しい 仮想の逃避が癒して 感じたい雨 傘を閉じる 冷たく痛い粒たちが 追いかけて来た
今、何時ですか その前に今日は何月何日ですか 今、何年ですか 此処はどこですか それに私は誰ですか あなたは誰ですか なんだか落ち着かないのですが 今、何時ですか どうして あなたは笑っているのですか 私に何かご用ですか 今、何時ですか どうしたのですか 私 今、私は誰ですか 私、何時ですか
僕が歩くと 「もっと胸を張りなさい」 大人に言われた 空を見て歩くと 「しっかり地を見て歩きなさい」 違う大人に言われた 下を見て歩くと 「前を見て歩きなさい」 違う大人に言われた 泣いて歩くと 「泣くんじゃない」 違う大人に言われた 大人は誰も 「どうしたんだい」 と言ってくれない
カレンダーはヤバい この言葉はダジャレの宝庫だから ああ、言ってしまいそう 我慢、我慢、ここは我慢だ 空気が凍ることは知っているし しかも詩なのだから絶対に言っては駄目だ ……でも詩は自由なはずだ ならっ ダレンダー ボクンダー オレンダー キミンダー そしてカレンダー 五人揃ってダジャ連打ー!
旅に出ました とっても寒いです こんなに辛いなんて 思わなかったのです そして寂しい 僕はこの旅で 辛い時に 助けを求める 人間になれると 思ったのですが 変わりません 旅に出て 景色が変わっても 僕はそのままです 変わりたいと思う 気持ちが大きく なっただけでも 意味があったと 思いたいです 雪が落ちてきました 誰かと話したいです
真っ直ぐに進んだ光が ベンチに座る僕の足を温め 幸せは青い空に浮かんでいる 任せる気楽さは自分を知っている 日々の荒れた呼吸も忘れ この連続が生きている波の模様として 大切な時間は大切にしたい思いも 大切にされたい思いもなく ただぷかぷかとした微睡む心地よさ 帰るところは忘れやしない 真っ直ぐな光に誘われ 僕はどこまでも白くなる幸せ