駅へ向かう 重たくなった身体に 容赦のない冷たい洗礼を浴び 現実に包まれ 日がまだ昇らぬどんよりの中 電車に揺られては 何か希望を探している 年末に作った仕事用のスケジュール帳 カバンに入っていることを想い出し 去年の準備に今年の日が昇った
難解な詩があって。私には解らない詩があって。何処かの誰かには解っている詩があって。いろんな詩人の考えがあって。それは自由であって。満足している詩人たちがいて、満足できない私がいて。小さな世界で盛り上がっている詩があって。ちっとも解らないと見向きもされない詩もあって。詩がどんどん我儘に思えてしまう私がいて。でも、それはやはり詩人の表現の自由であって。詩人個人がいて。読者個人がいて。言葉が限定されたひとだけに伝わって。芸術は多くの人が共感できる世界であって。難解な詩は伝える奉仕の心がなくなって。詩がもっと身近になったら豊かだろうと思って。では、お前はどうなんだよ、という私もいて。
頑張ろうと思った瞬間 楽しみが苦痛に変わってしまう 進む方向ではない 表現しきれない努力 入り込む集中力からの エネルギーが必要なのだろう 自分と言葉に向き合い 吐き出し切った完成を味わう もちろん納得の一作は 都会で流れ星を見るほどの出来事 しかし過程が輝くほどの充実に 向かう方向を導く まだ自分を裏切れていない 根底にある安心が書かせてくれる
「まだ一月一日が一時間残っていて 僕は悲しみに浸る歌を聴く 負の癒しがとっても大事なんだ この気持ちはわかってもらえないが ミスだなんて思わないんだ センチメンタルとも違うんだ どちらかと言えばチャーミングな感じ」 涙の流れる歓びがちょっぴり辛くって 子どもでもなく大人でもなく 共通しているところはヒューマン 右から左から右から左から 雨が横に降って聴える冬の春が来て 僕は誰かとコミュニケーションしている ほらほら君の霞んだ顔が飛んでいるよ スネアをカラスが突きながら ビューティフルデーとハモっているから お願いお願いお願いと思い 何をお願いしているかも忘れてしまい 僕は泣きながら笑っているんだから この一時間を深く広くあどけなく楽しんでいる クククッンクククッンと君も歓んで泣いて 理屈を説明しているキーボードが カッチュリンコカッチュリンコと踊って 愛だの恋だのが滑り台を滑り込み 僕の脳みそに君の嫌いな好きな言葉が それだけはお止めなさいと貯まりながら 僕は悲しみ浸る歌を聴き 目ん玉は自転しながら公転している幸せ すぐに跨ぐ筈の時間が余る事態にギューと叫んで……
ずいぶんと元日の日は高くなった 家族はアウトレットで買い物 私は寒空の下 ビニールハウスのような休憩所で ストーブにあたり 背中からは暖かな陽射しを浴びている 今年初のエネルギーをいただき 濃いココアをちびりちびり飲んで こどもを抱っこしたり遊ばせたり そんな必要も無くなって 二時に集合なっ、で自由行動 手が掛からなくなった 喜び半分、寂しさ半分 ラインで自分のいる場所の写真と ココアを飲んでます、と発信するが 既読すらならない けっきょく、買い物に興味のない私は 自分に帰りながら詩なんて書いている ああ、これが今年初の詩になるのか この詩が書き終わる頃 あれっ、いいな父ちゃんだけ と、誰か来ないかなんて 元旦らしくない時間を過ごしている
トンネルを抜けると そこは君のやわらかな手だった 僕は一生けんめいに山をつくり くずれやすい砂にトンネルを掘った ただ好きな女の子に「すごい」と 思ってほしいために おっちょこちょいの僕が 失敗しないように丁寧にやっている できた トンネルに手を入れると……
疲労と寒さで硬くなった足が 電車のシートから温められ 今日の姑息を、一年の姑息を 意味があるようかのように流れ始め 電車の一部となり労わりながら進んで行く 積み重ねられた日々の丘から 来年は天命を知り納めることのできる 根源を眺められる
大人って? 大人になりなさいって言うあんたは すでに自分が大人だと思っているようだね ピーターパンか、シンデレラか なんでもどこかに人をどこかに嵌め込み 言葉で刺そうとする 自分に疑問がないあんたも大人になりなよ 俺も一緒に付き合うぜ あんたも俺も子どもむき出しなんだけど えっ、そこっ、怒るところ?
まだ日は出ていないが 今年最後の一般ゴミを捨て もう来年に出す貯まるゴミを想像し チンケな頭の中はなんだか虚しく 今年も劣化する身体の変化に狼狽ながら 受け入れながら 駅までのホット缶コーヒーを 鼻の下にあてほっぺにあて すぐに飲んでしまえば温もりも消える わかっているけど流し込むのは 終わってしまいたい衝動が要求しているのだろう だからと言って気分が優れる時もある 心の浮き沈みの上の方はまだまだ微笑ましく 単純に生きているって素晴らしいと 感じたりするのだから 捨てたもんじゃない捨てれぬ理由が 一歩一歩背中を押しながら回っている すぐに冷たくなる缶を握りしめて やはりその感覚に現実を突きつけられながらも 捨てれるモノはまだ捨てることができる ゴミ箱の穴から乾いた音が響き ざまあみろと呟く今年ももうじき終わる
ぼくが歩くと 「もっとむねをはりなさい」 おとなにいわれた 空を見て歩くと 「しっかり地を見て歩きなさい」 ちがうおとなにいわれた 下を見て歩くと 「まえを見て歩きなさい」 ちがうおとなにいわれた ないて歩くと 「なくんじゃない」 ちがうおとなにいわれた おとなはだれも 「どうしたんだい」 といってくれない