四畳半の部屋に ひび割れたカラーボックス ガムテープで貼り 贅沢の真逆を行く頑固 家を飛び出した空間には 縛られない自由と途轍もない孤独 その双方が膨らめば膨らむほど 詩作品が収まる テレビもラジオも本も要らなかった 紙とペンとカラーボックス そんな日々を確かに生きた
高校一年生の時に彼と出会った 下校時に学校へ向かってくる生徒がいた 私と向き合うように歩いて来る 彼が私に声を掛ける 文化祭に出たんだって ギター一本で 僕はあの日、学校をサボったから 君の演奏は聴いてないけど そうか、ギターをねぇ 今度、聴かせてよ あれっ、もう帰り? ああ、今日は半日だから 彼は昼どきに登校して来たのだ 変な奴だと思ったが落ち着いた口調は 大人だなあという印象だった お互いに仕方ねえなあ って、顔をして駅へ歩き出した その流れで彼の家へ行くことになった 家へ入るとおしっこ臭かった そして、彼の弟が 私の髪の毛を楽しそうに引っ張った 駄目だぞ 彼は弟に大きな声で叱った どうやら重い障害を持っているようだ 注意している様子を見て やはり家庭環境が彼を 早く大人にしたのだろうと思った 彼は弟が生まれてから友達を 家に呼んだことは殆んどないと言った なぜ、私を誘ったのだろう そのことを訊いたことはなかった 彼の唯一の楽しみはバイオリン 弓に松脂を擦ると弦を弾いた 私にとって非日常の高音が響いた 圧倒された 私は意味なく負けたと思った 近所に住むバイオリン奏者がいて 玄関を叩き 直接に指導してほしいと願ったらしい そしてレッスンを受け 彼の夢がそこにあると思えた しかし、彼は高校を卒業すると働きながら 福祉の学校へ進んだ 弟を良い施設へ入所させる為にも 自分がこの道を進もうと決めた 親は先に逝ってしまうのだから 自分が弟の面倒は見るのだと言っていた そして彼はひとつ嘘をついた 学校を卒業し福祉の仕事に就き弟も施設へ入所 さあ、これから彼自身の人生が始まると思った矢先に 若くして癌に侵され逝ってしまった 親よりも早く 弟の為に人生を捧げ 生きたといっても過言ではないだろう 彼は弟の誕生から愛を知っていた 愛することも知っていた 誰しもが表現できない愛を実現した 最近、私はやっと彼がけして不幸ではなく 幸せだったと思えるようになった 弟の幸せが何より幸せだったのだから その人生は今も私にあの高音で響き続いている
This is a pen! ずいぶん前に流行った 英語がよくわからない時に とぼけて言う 初めて学んだ英語ギャグ 最近では Pen-Pineapple-Apple-Pen 初めて踊った変なダンス ペンで書くことを忘れ 次はどんなブームが来るのだろう
風邪も落ち着き本屋へ向かった 小説棚の前に立つ 一冊も本を開かずに パワーを本から感じる 詩集が少し置いてある棚へ立つ 開いてもすぐに閉じてしまった 勝手に想像した エネルギーの差を感じる センス、表現力、時代とかではなく なぜ僕らのエネルギーは 小さく収まっているのだろう
毛布に包まり 警報的なアラーム音でも 揺すっても起きない うるさいっ なんだなんだの逆ギレかっ みのむし娘は起きやしない ぎりぎりでやっと起き またプンプン なんで起こさなかったの とかいって でも 部活での頑張りを知っているよ 心の中でいい子いい子して 行ってらっしゃい
詩書き(詩読み)人口はどうなっているのだろう? 日常生活の中で「私、詩を書いてます!」という方は、まず出会わないですね。社会人になり私が詩のイベント以外で、詩を書く人に出逢ったのはひとりだけです。詩書き人口などこだわる必要がないのですが、とある詩のイベントで学生を集めることになり、いろいろ調べますとやはり俳句が今、人気のあることを知りました。高校生では、「全国高校俳句選手権大会」という大会があり、俳句甲子園と呼ばれ文芸部では盛んに活動をしているようです。それに一般の方では文学館や公民館などの教室でも俳句を楽しむ会がよく行われています。 詩の方では、ポエムリーディングなどの大会がありますが、誰もが気軽に詩を楽しめるコミュニティーの場は少ないように感じます。 マイナー、それがいい、という方もいますが、ドカンっと詩のブームとか来ないですかね、と個人的には思うのですが。詩の文学力や芸術力が日々の暮らしを豊かにしてくれるはずです。天才のカリスマ詩人が現れたのなら、詩の時代が来るかもしれません。いや、そんな詩人はいらないですね。今、詩を書かれているみなさんが盛り上げてくれることでしょう!
高校一年 新設校のため校舎が一棟のみ 体育館が建てられてゆく工程をずっと見てきた バスケットボール部は 部員がならした土の上で練習していた 体育館もなければ部員も四人 そして体育館が完成したのは三年の四月 六月に初めての公式戦へ参加 三本のシュートだけ決め引退 それでも青春
どうでもいいと言われたことは 僕にとってこだわりだったりする 君が僕でないのだし、僕が君でないのだから そこに壮大な自由があってもいいじゃないか 僕を形成する生きがいの骨格で飛ぶのさ と、僕は意地を張って言い返している まだ、君を意識していると言うのか まだ、同じ土俵で転がっている