余命も知らず 君が逝ってしまったことを どうしてなんだよ と、今でも言いたい 私がただ自分の気持ちばかり 考えているからだろう けれど、どうしても 君の優しさは友として 納得できていない そして、君にとって私が友でないという 馬鹿なことを考えたりする おい、なんとか言ってくれよ
自分が可愛いという体裁の言葉を あなたから投げ掛けられた気がして それをどうやって優しさだと思い込み 聞けば良いのだろうか 本音を全て向けられて あなたとの社会が壊れてしまう方が もしかしたらスッキリと生きられるかもしれない しかしそれほど自分が強くもないのだから 切れるわけもなく変わることもなく 羽織っているのは薄っぺらな衣の重ね着 そしてあなたも同じ格好で立っている
その記憶はいいイメージだ 公共の場であのニオイを嗅ぐことがある もう五十年近く前のことだが 誘う記憶から幼稚園児だった頃にあった不安定の中 安心に触れるような空気感が蘇る 淡く甘い懐かしいニオイの元は探らない 名も知らないニオイと顔の思い出さない先生でいい 先生のいいニオイ
風に吹かれ 皺くちゃな弧を描き ポチッと小さな声が 誰に響くことなく 消えてゆくのがなお寂しい 僕は何処へ行く川面の枯葉 だからどうかお願い このままずっと 揺れる面影を浮かべたまま 流れ流れ流されて 僕は何処へ行く川面の枯葉
十円玉を入れ間違い電話 すみません、といって消える十円 もう財布には十円玉が一枚 もう間違えることはできない おう、齋藤か ああ、ちょっと待ってて そう言われ これは十円ではもたない なんだよ百円玉投入か ああ、ごめん急用が入って ガチャ お釣りの出ない哀しいさを 何度味わったことだろう
希望が丸く抜け落ち あてなき今宵に流されてゆく 日出ずる国の明日を 夜に消される三日月がぽかりと待つ テレビでは国旗を掲げて スポーツ選手が希望を赤く染め 騒ぎ始める血を感じ 頓挫した作業に日を昇らせ始める
もうすでに空き部屋となった 親父の仕事部屋に入る なんだか懐かしい匂いがする 手ぬぐいを頭に巻き 中指にはパチンコ玉のようなペンダコ 窓の断面図は機密な迷路 煙草とインスタントコーヒー ショートスリーパーだった親父は 朝五時から夜の九時まで図面を睨む 五十五年間ずっと線を引き続け その長さは天国まで届くほどだろう 親父は戦時中にひとり疎開先へ行き 食べ盛りは芋しか口にできず 小柄な身体で喧嘩ばかりの日々だったらしい 強くなければ生きられない そんな時代を送った親父が怒ると 子どもだった私は怖くて仕方なかった 遊んで欲しいとは一度も言えなかった そして私は十八歳で家を出た それから十年が経ち 実家へ帰ると公園で孫と遊ぶ親父の姿があった このひとが私の親父なのだろうかと そう思える光景だった 仕事の合間に子どもと遊ぶひとではなかった その当時の親父は家族のために 仕事一本の鬼となり必死だったのだろう 私も親になりその執着を理解しようとした 否定から肯定し始める親父の姿が公園にあった そして親父が他界し五年が経った 二十三歳になる息子が私に言う 爺ちゃんから最後に貰った一万円札が 使えなくてまだ財布に入っているよ 私はタバコの煙で黄ばんだ 仕事部屋の壁を見つめながら 顔を綻ばせて親父へありがとうと言った
車窓から 風はちっとも見えません 僕が揺れているだけです いつもの景色を いつもと違ってしっかり 感じていたいのです 鬼ごっこで逃げ切り 今はほっとしているところです 揺れる時間は僕を帰して ただいま僕
庭を掘っていたら タイムカプセルが出てきた ぼくは大きくなったら しをかいて生きていきたい 何を考えているのか 現実を見なさい と言われても 詩を書き続けるタフさは掘り当てた 私のゴールドラッシュ(突進) 人生で曲げれないモノをひとつ手にして 言葉を掘りまくるのさ