1DK
12月
8日
おばちゃん、兄ちゃんが三人、姉ちゃん二人がいた
私は子どもの頃、電車に乗って
おばちゃんのアパートへよく遊びに行った
おばちゃんはいつも内職をしていた
子どもが五人もいて
その指を触るとゴチゴチと皮が厚く
私は子どもだったが凄いひとなんだと思っていた
一番上の兄ちゃんは
小学生だった私にパチンコを教えてくれた
左手から玉を流し天釘の狙う場所まで
公共賭博の英才教育を受けた
タバコをくわえ龍のスタジャン着た
兄ちゃんと歩くとひとが避けて行った
二番目の兄ちゃんは
いつも紺色のジャージとTシャツを着て体育会系だった
近くの高校へ行くと高鉄棒にぶら下がり
兄ちゃんが懸垂をすると筋肉が凄かった
私がグライダーで鉄棒から飛ぶと
兄ちゃんは片手で遠くに飛んでいた
三番目の兄ちゃんは
神経質で胃が弱くよくお腹をおさえていた
土日に映画館でアルバイトをしていて
無料券をくれるので映画を観に行くと
コカコーラを奢ってくれた
怒ったことのない優しい兄ちゃん
一番上の姉ちゃんは
なんだかお母さんみたいで
仕事と家事で毎日が忙しそうだった
分厚いレンズの眼鏡をしていて
博学だし姉ちゃんの言うことはみんな反論しない
そしてすでに一家の大黒柱だった
二番目の姉ちゃんは
なんだかいつも化粧の匂いがしていた
姉ちゃんに遊んで欲しかったけど
家にいることが少なくあまり遊ばなかった
だけど雨の日にアスファルトの上を
裸足になりふたりで歩いたのがとっても楽しかった
狭いアパートにみんなが暮らしていた
一番上の姉ちゃんと兄ちゃんだけが
父ちゃんを覚えていると言っていた
突然に父ちゃんは家を出て行ったらしく
それっきりだったと言う
悔しい思いをたくさんしてきたと思う
だけど歯を食いしばりみんな頑張って
笑顔を絶やさずに賑やかな
おばちゃんの家が好きだった
狭くてごちゃごちゃしていたけど
楽しい想い出は今でも私の宝物である