先日、テレビの番組で版画家の棟方志功さんが生前に制作に取り組んでいる姿が紹介されていました。かなりの近視なのでしょう。版画からわずか10cm足らずの位置に顔を置き、四つんばいになって彫っていました。右手でさかんに彫刻刀を動かし、左手もそれに連動してしっかりと版画と体を固定し、むしろ体全体で彫っているという感じでした。人間が1つのことにもっとも集中しているときの姿で、見事なものでした。
子供達は時々、左手をぶらりと下げたままの姿勢で、右手だけで漢字の練習をしたり算数の問題を解いているときがあります。ある意味ではとてもリラックスできている感じがします。それに、言語や算数の問題を考えるのは左脳の仕事ですから右手が動いていれば問題がないようにも思えます。しかし、本気で漢字を覚えたり、難しい算数の問題を解こうとするときには自然と体全体がそのことに立ち向かう姿勢になるはずです。ですからそんなときには左手が遊んでいるはずがないのです。実際、左手をぶらりとさせていることが多い子供でも、時々その左手の指が問題文の大事な部分を指差しながら右手で式を書いたり、計算をしている姿を目にします。やはり、真剣に問題に立ち向かっているときには左手も遊んではいません。
少し前、問題を解くときやまとめをするときに図や表に表しながらすると、やり方を忘れてしまっても、その図や表を思い出し、解けるチャンスができるという方法を紹介しました。左脳が忘れてしまっても右脳がそのときの図や表を覚えてくれていたのです。ですから、問題を解くときには必ず右脳もまき込んで、体全体で問題に取り組まなければなりません。受験生にとって、左手を遊ばせておくなどとはもっての他なのです。
高校生のころ“にぎっているだけで学習の効果が上がる”という理由で、固いクルミの実を持ち歩き、勉強するときにはこれを左手ににぎったままする、なんてことが流行ったことがあります。今考えてみると、こうすれば左手の手のひらを刺激することにより右脳も働かせることができるという意味では、あながち気休めではなく理屈にあったことだったのですね。
小学生だとまだまだ右脳と左脳を思うように扱えないことがほとんどではないでしょうか。もし、頭の中が何となくバラバラで、集中して勉強に取り組めないようなことが多い人は、クルミをにぎったまま勉強するなんて方法も役に立つかも知れません。思い当たる人はこんな方法も試してみて下さい。もしかすると夏休み明けには、集中力の達人になっているかも知れません。
6年生の夏休み中の学習の成果は、翌春の受験の結果にとても大きな影響を与えます。しかし頑張りすぎて燃え尽きるにはまだ早過ぎる、難しい時期でもあるのです。ですから、勉強はだらだらと長時間やらず、集中して短時間ですますことが一番大切になります。そのためにはいつも右手のすぐ近くに左手を置いて、体全体で問題に取り組む姿勢が必要になります。
カーネル笠井
だいぶ前に、数学者のピーターフランクが、日本人や中国人に優秀な数学者が多いのは漢字のような複雑な言語を使っているからだと主張していました。そのときには、言語と数学のどこに関係があるのだろうと思いました。ところが、ちょうどそのころから人間の右脳と左脳の働きの研究がさかんになり、現在では言葉や計算などの論理的なことには左脳が係わっていることがわかってきたのです。そして面白いのは、左脳が動かしているのが右手を含む右半身なのです。つまり、右手が動いているときには左脳がさかんに働いているのです。では右脳の働きは何かというと、音楽や絵画などの芸術的なことや視覚的、直感的なことに係わり、左手を含めた左半身を動かしていることがわかっているのです。
あと面白いのは、新しいことを始めるときには、まずその内容を理解し、それを覚えようと左脳がさかんに働きます。そしてこれを繰り返しているうちに、その手順などを右脳が覚えてしまい、もう左脳が働かなくても無意識にできるようになっていくのです。ちょうどピアノの新しい曲を練習するときに、初めはコード進行などあれこれと意識しながら練習しますが、これを繰り返しているうちに指の動きを覚えてしまうのと同じ原理なのでしょう。
最近言われている“知識の暗記術で最も効果がある方法”というものがあります。これは、覚えたい知識をA4サイズ程度の1枚の紙にすべて書き込んでしまうというものなのです。多少字の大きさや全体のバランスにバラつきがあってもかまわないのです。そしてこれを使って何度も繰り返し覚える作業をしていると、この紙のどこに何が書いてあるのかを映像として右脳が覚えてしまい、この紙が1枚の写真のように頭に浮かんでくるようになるのだそうです。
夏休みには、是非自分だけの知識まとめプリントを作ってみませんか。ただし算数、国語、理科、社会の各教科ごとに1枚だけにするのが最大のポイントです。欲張っては元も子もなくなってしまいますので、自分なりに何をまとめるかの整理、工夫が必要になります。きっと、こうすることもまた効果的なのですね。
カーネル笠井
中学受験生の多くは、一時的にでも文具フェチになるようです。そして、意外なほど多くの出費だという話を良く耳にします。勉強する時間が長ければ自然と文具とふれている時間も長くなり、結果的に文具に興味を持つのは仕方のないことかも知れません。しかし、これからは勉強する“時間”よりも、勉強する“内容”が多くなります。ですから、あまり文具にかまっている時間はないはずです。
最近は便利なもので、1本で黒ボールペン、赤ボールペン、シャープペンシルがじゃまにならずにそろってしまいます。私はいつもそれ1本だけを持ち歩き、消しゴムさえもその頭に付いているものを多用しています。その代わり、カバンの中には常時1〜2本のスペアインクとヘッドの消しゴムを入れています。とに角、いろいろとじゃまなものがあると集中できないからです。
6年生のこの時期に、筆箱に20本も30本も筆記具を詰め込んでいる生徒は、例外なく集中力に問題があります。夏休み前に思い切ってこれを処分し、筆箱の中の筆記具は多くて5本以内にしませんか。そして文具フェチを卒業し、気分を一新して勉強に取り組みましょう。間違いなく集中力が増すはずです。
さらに、これを機に整理上手にもなりましょう。算数、国語、理科、社会の高度な内容を短期間に理解し、これを覚えていくにはかなりの処理能力が必要となります。これを一番助けてくれるのが整理上手だと思います。そして整理のポイントは“余分なものを作らない”ことだと思います。今の時期だと問題集もあれこれと手を広げないで1冊をていねいに繰り返し仕上げる事が効果的です。個人的にはノートさえも算数、国語で1冊、理科、社会で1冊の合計2冊だけにし、それぞれを前後から使っていくのが無駄がないと思っています。
こうしたことを続けていると、自然と本人に一番合った整理のコツが身に付いてくるはずです。次回は現在最も効果的だと言われる知識の暗記法について書きます。
カーネル笠井
最近のことです。
妻「何、このコマーシャル。人をバカにしているんじゃない。」
ある家庭教師派遣会社のテレビコマーシャルを観ての反応でした。私はそれをぼうっとしか観ていなかったせいか、それほど気にもしませんでした。でもそう言われてみて、昔上司に言われたことを思い出しました。
以前、教室の宣伝の為に新聞の折込チラシの裏面を作成していたときのことです。何とか興味を持ってもらおうといろいろ工夫をしたつもりのものを上司に見せるとボツで、もう一度作り直していたのです。その何回か後のチラシでまたボツになったとき、このときはしつこく食い下がりました。すると、初めは話してくれなかったその理由を話してくれたのです。
上司「内輪受けする内容は、他人が見るとしらけるんだよね。」
とポツリと言ってくれました。これは宣伝業界では鉄則のようです。そう言われて私は、何となくそのことを感じていたので反発するよりもむしろ自分の未熟さをなさけなく思いました。
では何でそのことをもっと早く言ってくれなかったのでしょうか。きっと、若者のヤル気とそこから生み出される新しいアイデアは、どこの企業においてもかけがえのないものなのでしょう。その代わりにいろいろと初歩的なミスを犯しますが、そこをうまく修正するのが上司の仕事と心得ていたのでしょうか。
最近のテレビ番組やコマーシャルを観ていると、よくこの鉄則が守られていない内容のものが目につきます。上司のチェックが及ばないのか、それ以上に新しいアイデアが出てこなくて仕方なくOKを出しているのでしょうか。
子供達の勉強を見ていても同じようなことが言えます。興味を持って突っ走っているときには、いろいろな勘違いや回りくどい方法ををしています。でもそれをはじから修正するとヤル気をなくしてしまいます。でもベストでない方法が多いと必ず行き詰まります。ですから、そのときに初めて少し前までもどって修正してやるととてもスムーズで理想的な勉強ができ、思いがけない好成績を上げてくれるのです。これを考えると前述のコマーシャルも若手のヤル気をなくさないという意味では仕方のないことなのかも知れません。
ベストでない方法を多く使っている子供の成績は必ず伸び止まり、ヤル気もなくなってしまいます。ですから併走する大人がタイミング良くこれを修正してあげる必要があります。でも修正が多すぎると逆効果になってしまうのです。ところが、このくせ(ベストでない方法)が多少残っていて思うように成績が伸びないときがあっても、時間がたつとこれはむしろ個性になるような気がします。大人になっても勉強に興味を持ち続けている人を見ると、このくせが残っている人の方が断然多いと思います。悪いくせが勉強を続けるエネルギーのもとになっているとさえ思えてしまうのです。
子供達を指導していく上で、ヤル気をなくさせないことと、正しい方法を身に付けさせることのバランスが一番難しいと思います。
カーネル笠井
我家に勉強を習いに来ていた生徒がいました。
ペルーからの帰国生で、お父様の仕事の関係で中学に入る前に
今度はパナマに旅立ちました。
今週は中2になった彼女が一時帰国して、
国語の勉強をしに来ています。
インターに通いながら、日本から届く教材をやったり、
国語を大事にしている姿は当たり前に日本語を使っている私達とは
また思いがちがうのでしょう。
子どもの頃から、いろいろな文化に触れてきた彼女が
どう自分の育った環境をいかしていくのか、
私には想像もできません。
きっと世界を飛び回るような仕事につくのかも知れません。
9月から更に移動して、コロンビアの学校に通うそうです。
福井
先日、昼食を食べにファミリーレストランへ行ったときのことです。注文を取りにきたのが中国人の女性と思われる店員で、少しぎこちない日本語を話します。私が注文をすると、それを繰り返した後で、最後に「取り合えずよろしいでしょうか。」と付け加えていました。“オイオイ、それは私が言うセリフなのに。”と思いながらも、言葉の語尾に特徴があることと、きっとほとんどのお客が注文の最後にその言葉を付け加えているのだなとも思いました。
私の友人にも中国から日本に来ている人が何人かいますが、やはり言葉の語尾に同じような特徴のある日本語を話します。昔から良く中国人が話す日本語としてたとえられる「〜であるよ。」といった感じの語尾になるのです。中国語は英語と文法が似ているので、中国人は日本人に比べて英語の上達が速いと昔から言われてきました。でもアメリカ人の話す日本語の語尾はたいてい「〜でありますか。」といった感じになります。国によって日本語の受け止め方がずい分とちがうのが面白いですね。
では、日本人は外国ではどんな外国語を話しているのでしょうか。あまり外国に行ったことのない私には想像もできないのですが、機会があったら是非調べてみたいと思います。
カーネル笠井
国語教育に関する記事で大村はま先生の名前を
目にすることが増えてきました。
著書の「灯し続けることば」・「教えるということ」を繰り返し読んでいます。
学校の先生であった作者とは立場が違いますが、
国語を教えるということでたくさん学ぶことがあります。
本の中で書いておられる文に
わからない相手に、わかるように工夫して説明するのが
本物の教師だというものがあります。
受け取る生徒のせいにせず、言葉を重ね、教材を工夫し、
わかる喜びを与えていくのが教育だともいってます。
受験という目標がありますが、
教えている生徒の中に
茂木健一郎氏のいう「アハ効果」を何度もおこし、
どうしたら国語がわかる喜びを味わってもらえるか。
梅雨の中休み、そんなことを考えています。
福井
コーチングでエゴグラムを勉強していた時です。
ひとつひとつの性格に二つの面があることがわかりました。
秩序があると偏見を持ちやすい。
分析力があると冷たい。
協調性があると自主性がないなど・・。
今、おもてに短所としてでている性格のよい面に注目して
伸ばしていけたら、逆に自分の強味になってくるはずです。
子どもたちが持っている可能性を潰すことなく、
よい面を伸ばす教え方はないかと日々模索しています。
福井
子どもの携帯電話所持について議論がなされていますが、先日 新たに携帯電話を購入してもらった生徒がいます。どうも、子ども同志のコミュニケーションのためなのでしょうか。あるいは持っている子を見て自分も欲しいと思ったのでしょうか、理由はどうであれまた国民の所持率の上昇に貢献したことに変わりありません。
そこで、理科の先生からのアドバイスです。
「いろいろなものを写真に撮るように」と。
なるほど。確かに携帯電話でありながら画像を取り込めることが可能なわけですから、季節の植物、昆虫、空の様子、町の行事ごとなど(hotlineの先生方の顔写真は含みません!)、1年間を記録できていつでも取り出せるものとして考えればとても便利かも知れません。生きた資料室のようなものです。
携帯電話の所持を禁止することも必要なのかも知れませんが、もっと子どもらしい活用法を考えることの方が先決かも知れませんね。
ラッコ横山
先日、担当している6年生のお父様からこんな相談を受けました。
「先月の月例テストで70あった国語の偏差値が、今月は56まで下がってしまったんです。国語の勉強の仕方が悪かったのでしょうか。勉強方法を変えるなど、何かすぐに手を打った方が良いのでしょうか。」
そこで成績表を見せてもらうと、国語とは逆に算数と理科の偏差値が先月の55〜56からともに60まで上がっていました。
「算数、理科は良くなったので4教科の偏差値は62で変わらなかったのですがね。」
この成績表を見せてもらい、すぐに2つのことがわかりました。
まず1つ目は、この子がこのテストで発揮した全体の力は先月も今月も同じだということです。きっと、先月は国語の成績がとても良かったので、あと算数、理科をもう少し頑張れば目標校への偏差値まで届くと思い、今回のテストではここで集中力を使ってしまい、多少国語がおろそかになってしまったのだろう、ということです。まだこの時期の6年生ですと、国語が得意と言っても、算数、理科を意識して頑張るとそちらに力を使ってしまい、国語までは集中力がまわり切れないということです。
2つ目は、時間が限られている場合には国語に集中して取り組ませれば、すぐに大きく成績をのばせるということです。最終的にはこれを大きな武器として使うことができます。
長い間子供達の偏差値を見てきましたが、偏差値はこういう面に関してはとても正直に、そして正確なデータを提供してくれるものだと思います。
「前回は国語がとても良くできたこと、今回は算数、理科で今までにない偏差値を取れたことを喜んであげて下さい。今の時期だと1つの試験内でも、どこかで頑張ればその他で力が抜けてしまうのは当たり前ですから、勉強の仕方を変える必要は全くありません。頭の持続力がついてくる秋以降には、どの教科もその最高まで持っていけるようになるはずですから心配はいらないですよ。」
とお話しして納得してもらいました。すぐ後で本人に聞いてみましたが、ほぼ予想通りの答えが返ってきました。
大人ではあまり考えられないこのような成績の変動は、子供達には当たり前のことのように良くあります。ですからここであわててあれこれやると長い迷路に入ってしまい、成績がどんどん下がってしまうというケースが多いのです。このようなときには全体の偏差値をみて判断することがとても大切です。
カーネル笠井
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