パワハラ予防コラム vol.6~最強のポジティブ上司
6月
7日
ネガティブを辞書で調べてみると
「否定的なさま。消極的」(goo辞書)
とあります。
常に「自分はダメ」「できない」「どうせ失敗する」と思い込み、新しい一歩に踏み出せない。というように一般的にネガティブはあまりいい印象は持たれていませんが、そもそもネガティブは人間が生きる上で必要不可欠に備わった本能です。
はるか太古の昔、一歩外を歩けば野生動物の餌食となり、また無防備に森へ入れば蛇や虫達の毒牙にかかり、初めて見る木の実を躊躇なく食して生死の境を彷徨ったりと、常に命の危機と隣り合わせでした。
「この先を進んだら死ぬかもしれない」そんなネガティブ思考が武器などの道具を作り出し、情報を共有することで最悪の事態を避けてきました。
つまり、ネガティブは命の危機回避能力なのです。
しかし、現代においてこの危機回避能力(ネガティブ)は必要なのでしょうか。
現代では野生動物に襲われる危険こそなくなりましたが「人とのつながりが切れる=情報が切れる」のはある意味、生命の危機を意味します。
そのため、スマホやタブレットなど情報通信機器が手放せなくなってしまいました。
逆に、ポジティブだった原始人は命の危険を顧みず、森の中をずんずん進み、誰も手を付けていない木の実を食し大半は命を落としてしまいました。
そうして残った一握りのポジティブ原始人が今に息づいているわけで、実はポジティブは命がけのハイリスクハイリターンなのです。
現代のポジティブな社会人というと、失敗しても心が折れずくじけない、頭の切り替えが早く常に元気。物事の明るい側面を見出そうとする柔軟な姿勢や言動があり、それが仕事における推進力となっている。
一見いいこと尽くめに思えるポジティブですが、実はポジティブな人が苦手だという声も多いのです。
プライベートで落ち込んでいる時、ポジティブな上司からネガティブな考え方を改めるように色々アドバイスをされて、最初は言われた通りネガティブにならないように気を付けたり、ネガティブな思いを書き出して、ポジティブに変換するなど試しましたが、「こんなこと思っちゃダメ」「あー、またマイナスなことを考えちゃった」など逆にそれがストレスになりました。
ネガティブである自分を否定し続けていくことで、段々とポジティブでいることに疲れてしまうのです。
仕事の上では、部下の意向を聞かずに「これくらいできるね?」と仕事を一任したり、複数の案件を担当させるポジティブ上司。経験豊富な自分にできることは、経験さえ積めば部下にも当然できると本気で思っているのです。
ある意味、背中を強く押してもらえる環境は部下が成長するにはもってこいなのですが、逆にこれがリスクとなる場合があります。
「いいから取り敢えずやってみて」「大丈夫、なんとかなるから」というポジティブな働きかけが部下へプレッシャーを与えてしまい、「できるだろう?」が、「それくらいできる能力もないのか?」に受け取られてしまう。
自分の能力を試されているように思えてどんどん動けなくなってしまい、これが度を超すとパワーハラスメントに進展していくこともあるのです。
会社にとって、行動力があってピンチに強いポジティブ上司はハイリターンな反面、目の前のピンチを自分に都合よく解釈して想定されるリスクに目を向けない。実はハイリスクな側面も有していることも忘れてはいけません。良い面と悪い面は常に背中合わせ。悪い面が表出しないためにはネガティブを考えないのではなく、ネガティブ要素に向き合い、しっかり対策する事で最強のポジティブ上司になれるのです。
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株式会社シェヘラザード 邑本なおみ
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坂本 祐央子(さかもと ゆみこ)
オンライン、対面の研修を通して、人材育成コンサルタントをしています。
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