この世では誰もが苦しみを味わう。
そして、その苦しみの場所から強くなれる者もいる
アーネスト・ヘミングウェイ
牧師、バイカー、鮨職人として。。。シェア from LA
第69話 「兄貴との思い出、前篇」
私は3人兄弟の長男なので兄貴はいないが、兄貴と呼べる男はいる。10歳年上のダンはその一人だ。彼との出会いは20年ほど前にさかのぼる。私が17歳の頃に出た81年型ハーレーのショベルヘッドエンジンを積むワイドクライド(FXWG)は当時300万円もした。渡米してからも、いつかそれを買いたいと考えていたが、ついにその夢が叶ったのも約20年前だった。値段は1万ドル、典型的な”大人買い“だ。
当時、私はLA(ロサンゼルス)の南にある街の小さな鮨屋で板長をしていた。その隣は銀行だったが、ある日、体のデカい白人バイカーの乗るショベルヘッドのハーレーが銀行の前に止まった。彼はすぐに銀行へ入って行ったが、店からその様子を見ていた私は何となく彼のハーレーに近づき眺めていた。同じショベルヘッドのエンジンでキック付き、ワイドグライドではなくローライダーだった。
ほどなく銀行から出て来た彼と初対面し、互いに今や旧式になったキック付きショベルヘッドのハーレーを愛する者どうし仲良くなった。しかも彼の奥さんは日系4世だというおまけまでついた。彼は男でも惚れたくなるほどの良い奴で、デカい体に似合わず穏やかで優しい男。気性の激しい私とは正反対だった。あちこち走ったり、酒を酌み交わしたり、バイクショーに行ったりした。サイコーに楽しかった。また、40歳にもなって、しかも異国で親友が出来たことに感謝した。
あの頃の私はクリスチャンではあったものの、いつもイライラして荒れていたが、数年後、神からの召命が突然に下り、雷に打たれたように私の人生は変わった。牧師になる勉強を始め、曲折を経てついに牧師となり、何と自分で教会を始めた。真っ先に報告をした相手の一人が彼だった。彼はLA、私はOC(オレンジ郡)で距離があるため、その中間地点のフラトン市にあるハーレーディーラーで彼と落ち合い、福音を伝え、今後BS(バイブルスタディー)をこのハーレーディーラーで始めることで合意して共に祈った。
だが、それを境に彼と二度と会うことはなかった。彼はイタリア系カトリックでクリスチャンを自認する者ではあるが、福音とキリストには全く興味を示さなかった。むしろ無意識に拒絶し、私を避けるようになった。
そう言えば、その昔、「ミッキー、お前は“モーターサイクル・ベル”をハーレーに付けたか?」とダンが尋ねてきたことがあった。「何ソレ?」と聞くと、「何だ、知らんのか?路上には多くの“デーモン(悪霊)”がいるのでベルで追い払うんだよ。」 いわゆる魔除けだ。故障や事故を悪霊と解釈した者たちが始めた風習らしい。そう。つまり彼は何も信じていなかった。また、そういう人間ほどスピリチュアルなもの、パワースポットや御守りに凝る。カトリックだろうがプロテスタントだろうが無関係。神を信じるとは、単に神の存在を信じることではない。神に従うことだ。だから “従えない人”は必ず疎遠になる。教会からも、私からも、神からも。彼はその典型例になってしまった。イエスが言うとおりに。
「わたしに向かって、『主よ、主よ。』と言う者がみな天の御国に入るのではなく、
天におられるわたしの父の御心を行う者が入るのです。」
マタイの福音書7章21節
2022-9-28
私たちは自分が何を求めているのか分らない。
しかしその何かを死ぬほど求めている。
マーク・トウェイン
今年もクリスマスツリー点灯しました。
皆さまに神のご加護と平安が豊かにありますように!
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第68話 「日系人クレイトン君の話」
今から約10年前の話。ある鮨屋で日系三世の大学生クレイトン君がウェイターとして働いていた。とても人なつっこい若者で、名字を尋ねたら“Mizutari”だと言う。「水谷(ミズタニ)」じゃないの?」と尋ねたら、「ソレ良く日本人に言われる」と笑ってた。これでも宗教家の端くれなので、ピンと来て「水垂り」と綴るのではとググったところ出て来た、「水垂神社」なるものが。つまり神道の“禊”であり、水浴で汚れを落す宗教行為だ。
さっそく彼にそれを伝え、「お前の先祖は神社の神主かも知れんぞ!まるでクリスチャンのバプテスマ(洗礼)、ギリシャ語のバプティゾー (βαπτίζω/ 浸礼) みたいやな~!」などと盛り上がった。実は彼はクリスチャンだった。だが教会へは行っていない。家庭も色々と複雑な事情があるらしく、彼の親父さんと祖父が上手く行っていないので、体が不自由な祖父のためにクレイトンが祖父と一緒に住んでるそうな。心の優しい彼らしい話だと感心した。
そんなクレイトンが ある日スーパーへ買い物に行った時、一人の若いホームレス男性を見かけた。腹が減ってるだろうからと食べ物を買ってあげたが、少し気になり色々話してみると、その青年がホームレスと思えないほど心に響く話をするので驚いた。さらには、クレイトンが別れ際に5ドルを手渡したところ、青年はスーパーの募金箱へ直行しその5ドルを投げ入れた! そして言った。「一つの善行が良い波及効果の引き金となる。」
クレイトンは感動し「世の中に対する希望が回復した」とフェイスブックに記している。私は「負けた」と思った。牧師としてホームレス支援をしたり、困っている人を助けたりしているはずだが、本当にそれらの人々に寄り添えているだろうか。自己満足に陥っていないだろうか。単にカネの受け渡しでなく、心を通わせ合って共に善い業を成すことが出来たクレイトンとホームレスの青年。考えさせられた。
他方、せっかく人を思いやる心を持っているにもかかわらず人間的トラブルによって教会へ行かないクレイトン。そして家に帰らないホームレス青年。悩める優しい若者たちに相応しい希望のある世が本当に回復するのを神に祈りつつ、クレイトンらのように互いに行動で助け合うことを今日も人々に勧める。イエスの福音を告げ知らせながら。
「何よりもまず、互いに熱心に愛し合いなさい。
愛は多くの罪をおおうからです。
つぶやかないで、互いに親切にもてなし合いなさい。」
第一ペテロの手紙4章8-9節
2022-9-24
オフクロに花束贈呈、
久しぶりなの帰省なので奮発しました。
宮城さんの経営のうどん店、「ふく」。
ふくは「福音」の福
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