不育症の患者さんの多くが手足の冷えを訴えられています。
また、頑固な肩こりや肌荒れも同時によく訴えられます。
時には、朝が何か憂うつで、
夜には元気になってくるということも言われます。
そのような場合、
(潜在性)甲状腺機能低下症が疑われます。
甲状腺機能は物質代謝を促す(新陳代謝を良くする)
という重要な働きを担っています。
しかし、その機能低下があったとしても、
上記のような、
ある意味、だれにでも多少ありそうな症状のため、
その異常は見逃されやすいのです。
この病気は、加齢とともにその頻度は増加し、
女性に多く出現しています。
潜在性甲状腺機能低下の頻度は、約4〜8%
と報告されています。
甲状腺機能低下は、
子宮内の新陳代謝の低下でもありますので、
不妊症のみならず、
不育症の大きな原因のひとつなのです。
子 宮 が 冷 え て い る とイメージしてみてください。
子宮内の赤ちゃんには決して良くありません。
さらに、重要なポイントは、
妊娠初期(12週まで)の母体の甲状腺機能低下は
潜在性であっても、
児 の 知 能 低 下
と関連していることが、
1999年の世界で最も権威のある医学誌
(N Engl J Med 1999; 341: 549-555)
に報告されて以来、
全妊婦を対象にスクリーニング検査すべきか否か
について、現在も、議論されているという点です。
2002年に発表された米国産婦人科学会のガイドラインと、
2007年に発表された北米内分泌学会のガイドラインでは、
症 状 (冷 え 症 等) や
既 往 症 がある妊婦さんに限って
甲状腺機能スクリーニングを行うことを勧めています。
不妊症あるいは不育症の患者さんであれば、
一般の婦人に比べて、甲状腺機能低下の頻度は高いので、
潜在性も含めて、
精査と治療が必要と思います。
また、ご本人の脳の新陳代謝にも影響していますので、
甲状腺機能低下と気分障害(不安、抑うつ等)との
密接な関係は、以前より指摘されています。
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