12.ある不育症患者さんの手記(1−5)
2月
20日
5人のあかちゃんがお空にいる〜
そして、次の月に6回目の妊娠。
娘がお腹に宿った。
4度目の入院で初めてフラグミンではなく、
朝晩のヘパリン注射になる。
正直、フラグミンは窮屈だったので、
ヘパリンになり開放感があった。
外出も容易になったので思い切って、
朝のヘパリンを打って外出し、
病院へ戻るのは、
夜のヘパリンの時間という生活をずっと続けた。
暇を持て余して病院にいるより、精神的にとてもよかった。
今まで、赤ちゃんへの影響を心配し、
飲むのをためらっていた
精神安定剤 も 毎日飲む。
先のことより、
とにかく 今 を 大 切 に、
今 こ の 時 を
乗り切りたいと思っていた。
今 ま で と は 違 う 何 か をしたかった。
心拍を見たのは初めてだった。
それは、力 強 く 鼓 動 していた。
内診台の上で、しばらく涙ぐむ。
この台の上でこんな涙が流せるなんて・・・胸が熱くなった。
この子を絶対に失いたくない!
お母さんも頑張るから、
赤ちゃん、
あなたもしっかりとお母さんのお腹につかまってるんだよ。
そう、語りかけた。
だんだん2頭身になり、人間らしい形になっていく。
へその緒が見えたり、動いたり・・・まだ少し怖いけど、
大嫌いだった内診の日が待ち遠しくもなる。
そして、迎えた無事退院の日、
今度は空っぽのお腹じゃなくて12週の赤ちゃんと一緒。
帰り道、すれ違う人たち皆に、聞いて!
私のお腹に赤ちゃんがいます!
元気に育ってます!
そう言って歩きたい程、うれしかった。
自分が女性として、
欠陥品の様に思えてどんどん卑屈になって、
暗い顔で泣いてばかりだったあの頃、
ずっと側で支えてくれた主人にも
本当にありがとう。
夜中に、突然、絶望感が襲ってきて、
吐く程泣き続けてしまったことがあったけど、
あの時は、落ち着くまで、
ただ 抱 き し め て くれてありがとう。
Dr青木のコメント:
( この患者さんのこころの変化が、
あかちゃんに通じたのではないでしょうか。
私とスタッフでできることは、
それほど大きなものではありません。
今回、
患者さんとの相談の上で、
従来の身体的予防治療以外に、
心身のリセットを助ける目的で、
ステロイド療法と
カウンセリング、
精神薬物療法を
追加して治療しました。 )
私が経験した幾度かの悲しい出来事は、
きっと私の人生にとって意味のあることだったはず。
乗り越えなければならない試練だったと。
〜私たち夫婦には生まれてこられなかった
5人のあかちゃんがお空にいる〜
終わり。