山あり谷あり空あり
11月
5日
目覚めなくても良い朝に
乾いたそよ風が足元から撫でて
もうひと眠りしようとすると
この世界から消えてもいいんじゃねえ
それくらい幸せな休日がある
きっとこれは労働者へのご褒美なんだろう
キツい仕事をやり遂げた週末に
身体はブロックのように横たわり
心は青空に流れる雲になり
始まりも終わりない世界で浮いている
人生は山あり谷あり空あり
自然に帰るゆったりとした風景がないと
幸せは感じないんだろうなあ
チラリと時計見てニヤつく
思ったより時間は経っていない
そしてさっき見ていただろう夢を思い出す
むかし飼っていたワンちゃんと
今いる猫ちゃんが屋根の上で遊んでいて
そんなことありえないんだけど気分はほっこり
炊飯器から炊き上がりの音がする
昨夜に仕込んだ栗ごはんが香ばしい匂い
きっと鼻の穴は少し膨らんでいる
食欲を唆る現実もいいじゃないか
栗ごはんを頬ばるかブロックのままか
なんて幸せな悩みなんだろう
それなら食べてからもうひと眠りしよう
重い身体を起こし匂いの元へ
炊飯器の蓋を開けると
シュルルルンとご飯を泳ぐ水気
ほこほこの栗に現実での幸せを感じる
再び布団に倒れ込み
雲になりふんわりフェイドアウトな気分で
現在も過去も未来も薄くなり
家族も自分さえも遠い
天国のちょっと手前に行ってくるよ
そこは何もない幸せな空
たぶん帰って来るんだけどね