どう生きる その前になんで生きる 生まれたから生きる それならなんで生まれる 生まれたくて生まれる 生まれたくなくても生まれる どっちにしても生まれる それならどう生きる どう生きるをどう生きる どう生きるがまた生まれる 生まれるどう生きるを生きる どう生きるかを生きる
ある詩人が言っていた あの詩人はもうおしまいだ もう詩を書くことは無理だろう、と 僕は知っている 人のことをそう思ってはいけない 人前でそんなことを言ってはいけない ある詩人もあの詩人と同じ状況になってしまう 相手に発した言葉が呪いの言霊となって 弧を描いて返ってくることを ある詩人が言っていた あの詩人は奇跡の復活をして また詩を書くことができるだろう、と 僕は知っている 人のことをそう思えるのなら 人前でそんな風に言えるのなら ある詩人があの詩人と同じ状況になっても 相手に発した言葉が願いの言霊となって 弧を描いて返ってくることを
連休中は疲れ果てて ダラダラと過ごすのはわかっている だから これだけはやろうとメモに書き出していた 詩を書く 詩誌発行の準備 庭の雑草取り 母親の様子を見に行く ドライブレコーダーの交換 バイク磨き しかし 連休初日から喉が腫れて風邪をひく 年末年始とゴールデンウイークは 毎度同じような状態になる 余力を持って滑り込めばいいのに マラソンを走り切った後のように倒れ込む 連休三日目 やっとこの詩を書き出せている状態だが 昨日の寒気は落ち着き 気温二十五度の外からのそよ風が心地よい ああ 何もせず連休が終わってしまったと リフレッシュも出来ないのでは 労働者にとって希望も夢もないじゃないか さあ トイレに立ち上がり布団を畳み そのまま動き続けよう 窓の外はめちゃ爽快な青空が誘っているし ぼちぼち楽しいを巻き返さなきゃ
雨は子どもの頃から好きだった 家に守られトタン屋根を弾く雨音が とてもしんみりしてずっと聴いていたかった 桜の頃は雨が多い気がする バイクを走らせるには準備が多い カッパ、グローブ、ブーツに防水スプレー吹きかける そして自分が濡れるよりバイクの錆が気になる 車体全体にシリコンスプレー サイドバックに防水カバーを被せやっと走りだす 視界の悪さ、湿ってくる手の冷たさ 車からもバイクが見えにくくなっている 一番怖いのはマンホールの蓋が 滑って転けろ、と言ってくることだ それでも雨が好きでバイクが好きなんだから そりゃ最高のシュチュレーション 満開の桜が雨に打たれ 湿った桜吹雪に路面は花びらが浮き しっとりとゆらゆらな景色 雨が直接に身体を叩く響きに癒され ずっと走っていたい 雨のバイクは危ないと言われるが 速度を落とし自分を守る 危ないという集中力を研ぎ澄ませながら 楽しむ楽しむ雨、桜、雨、桜ふる道を
春ちゃんはしれっと勝手に来る 僕の許可もなく 玄関先にもう立っている 目はかゆい 鼻はジュルジュル それでも春ちゃんは 知らん顔で咲き始める 昨日と同じ道 そこにいる春ちゃんだけが やけに本気だ 「今日は頑張らなくていいですよ」 と春ちゃんは言ってくれないが…… そして花粉は飛ぶ 千円札 五千円札 おっと一万円札も飛んでしまうのか だから希望は飛ばないで それにしても空がやけに高く 僕は少しだけ ましな人間に思える 春ちゃんは人を変えない 生活も変えない ただどうでもいい一日を 「まあいいか」に塗り替えてくる だから今日も くしゃみをしながら歩いていく 春ちゃんに軽く文句を言いながら
一万キロメートル バイクのフロントタイヤはすり減り まだイケると思ったが ケチっていざという時にスリップしたら いかん、と交換することにした 今回はリアタイヤもだ バイクタイヤ専門の店 スタッフ三人は二台のバイクを並列し タイヤ交換の作業を手際よくしている 私は椅子に座りそれを眺めながら スタッフのひとりと バイクの話をしながら楽しんでいた ハブダンパー 齋藤さんこれ交換した方がいいよ 二、三千円で購入できるし 工賃千円で交換しますよ パーツを購入したら来てくださいな リアのスプロケットあたりに 黒いゴムの緩衝パーツが入っていた クッション タイヤがありホイールがあり その中に隠れゴムがあるなんて なんせそいつは加速、減速時に 衝撃を吸収し駆動系の負担も減らす 私はバイクのことを知らねえなあ、と 恥ずかしくなった 一週間後 新たな滑らかな足回りを感じながら 今まで見えないところで踏んばり 心地よく安全を与えてくれた 硬くなったハブダンパーを思いだし走る 感謝 どんな役目だろうとも 自分の特性を見いだしまっすぐ 寡黙にその生涯を全うするその働きは めちゃカッコいい生き方だ そして快適だった走りを今までありがとう
関越自動車道は先日の雪の影響なのか 日陰では路面が光っている バイクで走行している私にとって 命に関わる恐怖が襲う 日の当たる路面を選び神経集中すると バイクの楽しみは削ぎ取られてしまった 彼の墓参りに毎年行くようになり すでに二十回という数字を並べていた ふと私は何なすことなく 無意味な時間を過ごしている気がして 線香の煙に手を合わせると言葉は失った 生きた充実は時間の長さではなく 何をしてきたかということなのだろうか ひとは一人になるとそれほど強くなくて 寂しさに背中を丸めさまよい歩く 気をつけて帰ってくれ と、彼の言葉が聞こえ一人ではない気がした 高速道路はあきらめて下道を走り 彼の歌を口ずさみ走らせた 信号に止まり タンクとエンジン間に手を突っ込み じわじわと冷えた指の感覚を戻す 激しい寒さと温もり 冬は今を生きていることを伝え 流される時間を私に突き刺してきた
光が落ちて陰が落ちた 地平線のまるみある優しさは 心に隠れて胸で波を打っている 聞こえるスネアの弾みとトランペット 甘いラテと乾いた南の薄からい風 明日この地を離れる愛しさに 欲している感情が見え始めている 疲れた日々に挟まれた束の間 時間は不平等に過ぎてゆく 焦燥がピリピリと眼底を刺激すると 逃げの一手は追加のオーダー テラスに灯された波状の波も 小さな抵抗から聞こえる同調の励まし 緩ませた心にはまだ聞こえて 意志は歪曲しながらも重なっている
僕が三本指で考えていたころ 父さんは五本指で考えていた 母さんは家族で唯一考えることがなく 兄さんといえば上手にお尻で考えていた くるっぷー くるっぷー なんて幸せ家族だったのだろう 今となってしまえば 僕は我慢好きな漬物石で 父さんは散歩する墓石になって 母さんは石を忘れ砂に憧れ 兄さんといえば蹴飛ばされた石になり くるりんぱっ くるりんぱっ なんて夢ある家族に進化したのだろ 明日という日にごきげんよう とうとう僕は五本指で考えるようになり 父さんは富士山を帽子にして 母さんはマイクロな身に合う所を探し 兄さんといえば相変わらず飛ぶのだろう くんったったー くんったったー なんて素晴らしい家族なんだろう
目覚めなくても良い朝に 乾いたそよ風が足元から撫でて もうひと眠りしようとすると この世界から消えてもいいんじゃねえ それくらい幸せな休日がある きっとこれは労働者へのご褒美なんだろう キツい仕事をやり遂げた週末に 身体はブロックのように横たわり 心は青空に流れる雲になり 始まりも終わりない世界で浮いている 人生は山あり谷あり空あり 自然に帰るゆったりとした風景がないと 幸せは感じないんだろうなあ チラリと時計見てニヤつく 思ったより時間は経っていない そしてさっき見ていただろう夢を思い出す むかし飼っていたワンちゃんと 今いる猫ちゃんが屋根の上で遊んでいて そんなことありえないんだけど気分はほっこり 炊飯器から炊き上がりの音がする 昨夜に仕込んだ栗ごはんが香ばしい匂い きっと鼻の穴は少し膨らんでいる 食欲を唆る現実もいいじゃないか 栗ごはんを頬ばるかブロックのままか なんて幸せな悩みなんだろう それなら食べてからもうひと眠りしよう 重い身体を起こし匂いの元へ 炊飯器の蓋を開けると シュルルルンとご飯を泳ぐ水気 ほこほこの栗に現実での幸せを感じる 再び布団に倒れ込み 雲になりふんわりフェイドアウトな気分で 現在も過去も未来も薄くなり 家族も自分さえも遠い 天国のちょっと手前に行ってくるよ そこは何もない幸せな空 たぶん帰って来るんだけどね