とにかく。10年くらい前に遠近両用の眼鏡を作った、が、日常で眼鏡をかけることが煩わしくて使わなくなった、だから前回は老眼鏡を作ってもらった、こちらは問題なく現役で活躍中、さっき見せようとした、あれね。が、今回は老眼鏡ではなく遠近両用が欲しいのだ。
「つまり、その、COVID19のこともあるし、眼鏡をかけるのって良いことかな、と思って。」
そう言うと彼はまた「どうして?」という顔をしたので、
「つまり、鼻や口はマスクでカバー出来るから、眼は眼鏡でちょうど良いかな、と。」
と付け加えた。
すると彼はそこで初めて、あぁ!!という顔をして大きく笑った。いや、彼もマスクをしているからどれだけ「大きく」笑ったかはわかり得ないが、目が大きく開いてこれはもう大きな笑顔間違いなしの顔だった。
わたし、この思いつきは我ながらたいしたものだ、と思っていたのだが、まさか眼医者でアシスタントにここまで驚かれるとは予想だにしなかった。待てよ、もしかしたらこれってバカバカしいアイディアなのか??? "I see, you have 20/20 vision, so."
彼はニコニコしながらそう言った。20/20、アメリカでは正常とされる範囲。日本の視力でいうところの1.0に相当するらしい。でもね、わたし、昔は両眼とも2.0だったのよ。やっぱり年齢とともに視力が落ちたのね。
そういうわけで彼によって色々な簡易検査が施された後、いよいよ眼科医の診察となった。
予約の時点で前回と同じ女医を指定したにも関わらず、入ってきたのは別の女医だった。でもすごく感じの良い女医さんだったので、結果オーライ。彼女は明るく自己紹介をした後に "Wait! You must be a Harry Potter's fan!!"と言って、わたしのマスクを大絶賛。おかげで調子に乗ったわたしは6枚セットで買ったこと、そのうち3つを友人に分けたこと、自分はプロフェッサースネイプが大好きだからスリザリンはもちろん自分のために残したことなどを伝えた。話をしながら色々とさらなる検査。遠近両用メガネが欲しいという情報は既に伝えられているらしく、そのための検査もしてくれているようだった。そして、彼女からも同じ質問。
「どうして眼鏡を?」
はて、と思う。その説明は聞いていないのだな。
しょうがないので、「笑われるかもしれないけど」と言ってから説明した。わたしの話を聞いた彼女はおおいに感心したらしい(少なくともそういう風に思わせてくれた)。 " You mean, for the extra protection. You are smart!!"
そこまで驚くか?とも感じたけど、褒められて悪い気はしない。少し、恥ずかしかったけど。
「実際あなたの眼の状態は非常に良いです。健康そのもの。悪いところはありません!」
そう言われてちょっと複雑な気持ちにもなったが、まぁでも眼鏡を作るため、そのために来たのだ、と思い出す。
最近のprogressive glassesは性能が良くなっているらしい。最初は慣れるまで少し時間は必要かもしれないが以前ほどではないようだ。前回、慣れるまでは眼鏡を外さずに過ごすようにと言われたことを思い出した。結局、使わなくなってしまったあの眼鏡のようにするわけにはいかない。これからは眼鏡とともに生きるのだ。