五分を知らない 歯も磨かず、風呂にも入らず 床が誘っていた ここで横になりなさい、と 倒れ込めば手のひらが 床を握っていた ちょっとくらいいいか、と 瞼は落ちたがっている ほらっ、寝入った…… ……おっと、寝てしまったようだ 五時間ほど経っただろうか 時計を見ると五分しか経っていない いや、もしかすると 二十四時間五分も経っているのかも とても深く質の良い時間を感じたような…… 起き上がり階段を降りる やはり身体は重たい そしてデバイスのホームボタンを押し 指紋認証で画面を表示 五分が経っていただけだったのだ 今日という日を見た ああ、この五分の話はすべて夢だ 寝ているのか、生きているのかも 怪しくなっている 床に身体が半分埋まっているんだ きっと
暗い朝、雨の雫 カーテンを寄せた指に ガラスの冷たさが 僕の心地を透明にする 秒針を遊ばせた時間の雫たち 曇り空と僕を繋いでいる 濡れているのに濡れていない 濡れていないのに濡れている 僕に僕が守られている音
焦っている 慌てて急ぎ失敗して さも、そうなりたいように 失敗したくない だけど失敗したい気持ちは 幼い時から 僕のこの失敗したい症候群 最初から最低のところで安心する この性分では生き辛いが 付き合うしかないのだ
なのにㅤに吹かれ去ってゆく街の かわいい我が子を想えば 揺れている草がさよならして そしてㅤに鳴る汽笛の響きを聞け 何を悲しむことがあろう 故郷は遠ざかるほどに近づいて きらきらㅤちよちよㅤ子の姿 しゅっぽㅤしゅっぽㅤ己の姿 するとㅤに包まれ握った塩むすびの しなやかな妻の指にふれ 涙の沁みたしょっぱさは泣けて ならばㅤに抗う黒煙吐く激しさの 意気込みを青空に流せば 心に溶け込んでくる空を見て りんりんㅤぎゅぎゅㅤ妻の姿 しゅっぽㅤしゅっぽㅤ己の姿 しゅっぽㅤしゅっぽㅤしゅっぽっぽ しゅっぽㅤしゅっぽㅤしゅっぽっぽ
はい、では五時間目 音楽の授業は皆さんが 眠らないようにロックの勉強です まず、制服をロックな感じに はいはい、シャツは出して 髪はツンツン立て 腕を突きあげ はいはい、ここは教室ですから 指は立てないように では、今日は特別な先生がっ 僕の好きな先生の カモン、忌野清志郎っ!
母さんはいつもまん丸だ 太っているってことじゃない 四角い所を 丸く掃除するんじゃなくて 今日も仏さんを丸く彫っている そんな姿を見て近所の方が 窓越しに挨拶していくと 丸く笑っている 母さんはいつもまん丸だ
蕎麦食いねえ ずるずる ああ旨えなあ 役に立つ扇子だ ポンと相づちを打ち 竿になってあんたも釣れる ひろげれば羽 刀になって おぬし出来るな と言ってみたり まあ扇子ってのは 便利な道具さ 扇子使う センスがあればの話し なんだって この落語が落ちてないって お粗末様でした