講師 - 森本政司氏
日本通運(総合物流)、アトラス(伊藤忠の運輸部)、ハパックロイド(西ドイツの船社)、鈴与アメリカ(乙仲)を経て、1984年に港湾局に入り、現在にいたる。
講義内容
【今月のセミナーは、ロサンゼルス港湾局を訪問させていただき、講師の森本氏から現地でお話を伺いました。その後ボートに乗船させていただき、実際にロサンゼルス港の見学もさせていただきました。】
ロサンゼルス港湾局は1907年に設立され、公的資金に頼らずに独立採算制で運営している。また開発に必要な資金はすべて公債の発行で調達しており、赤字になっていない。このような米国型の港湾経営には、日本が参考にするべき点が多いだろう。
ロサンゼルス港湾局では、「12%の投資リターンが見込めない開発プロジェクトは実施しない」など、経営判断の基準が明確になっている。一方で日本の港湾局では、採算や経営基準が不明確のまま開発が行われてしまうので、赤字経営に陥りやすい。
港湾局でCEO、CFOなどのイグゼキュティブ・レベルを採用する際には、広く世界から最適な人材を探すという人事努力がなされる。数年にわたる契約ベースの雇用となり、日本のように天下りや持ち回りによって、イグゼキュティブのポジションが埋められることはない。
本日使用しているこの会議室では、当港湾局のボード・ミーティングも行われるので、テーブルと座席もそのように設置されている。一番前の席が、LA市長に選出されたコミッショナー(5名)が座る席である。そしてコミッショナー席に向かい合う形で配置された席は、港湾局のCEO、CFO、そしてロサンゼルス市当局の弁護士など、イグゼキュティブ・レベルのメンバー6名ほどが座る席である。残りの席は、港湾局職員やミーティングの議題に関与する関係者などが座る席である。
ボード・ミーティングは、公正な形式に則って開催され、市民に対して意見を述べる権利が与えられている。ただし会議の効率を図るため、一人の意見陳述の時間は3分以内に制限されている。会議の進行状態は、すべて公式な録音記録に収められる。またコミッショナーは議決権を持つ重要な立場にあるため、仕事場以外の場所でコミッショナー同士が会うことは禁止されている。
ロサンゼルス港のもともとの土地はカリフォルニア州のTideland で、港湾局はこのTideland を州法の下に開発し、船舶会社や業者に賃貸して、賃貸料や施設使用料などとして徴収し収入源としている。賃貸契約の内容は、契約先や使用目的によって様々であり、可能な限り臨機応変に対応している。
現在 IT 導入が一番進んでいるコンテナー ターミナルは、商船三井の運営するTRAPAC社のターミナルである。何年か前に失業を恐れた港湾の労働者が、IT導入に反対していたが、船荷取扱量はずっと増加傾向にあり、労働者過剰の心配は出ていない。また昨年秋頃にロサンゼルス港で船荷が滞ったことがあったが、もともとの原因は米国内の鉄道会社のボトルネック現象にあり、港が根源だったわけではない。
<データで見るロサンゼルス港湾局> (配布された同港湾局の資料より)
港湾面積
地上4,200エーカー、海上3,300エーカー
主要ターミナル数
27ターミナル
入港船舶数 (2004年度)
2,813隻
年間船荷取扱量(2004年)
米国で1位、世界で8位(7.3Mil. TEUs)
輸入品目トップ3 (2004年)
家具、衣類、電化製品
輸出品目トップ3 (2004年)
古紙、綿を含む生地、人工樹脂
貿易国トップ3 (2004年)
中国、日本、台湾
港湾局のウェブサイト・アドレス
www.portoflosanegles.org
(作成者: セミナー副委員長 矢部)