日時
2010年4月14日(水)、6:30PM - 8:30PM
会場
ニューガーディナ・ホテル
講師:白井万雄氏、田中 桂氏
講演録担当:藤原 勝
講師略歴
白井万雄氏
ユニオンバンク為替資金部バイス・プレジデント(外国為替担当シニア・アドバイザー)。アリゾナ州立大学工学部卒業後、三井銀行に入行。90年、同行ニューヨーク支店に転勤し為替ディーリングを担当。98年に現地スタッフとなり、01年に三菱信託銀行ニューヨーク支店に為替チーフディーラーとして転職。2005年、西海岸に移り、ユニオンバンクにて大手日系企業専門の為替アドバイザーとして勤務。2009年、念願だったMBAをカルフォニア州立大学フラトン校で取得。
田中 桂氏
ユニオンバンク為替資金部アシスタント・バイス・プレジデント。 カリフォルニア大学アーバイン校在学中、同行支店の窓口業務のアルバイトをしたのが切掛けで入社。同大学卒業後、同行のマネージメント・トレーニング・プログラムを受講し、ファイナンシャル・サービス・オフィサーとして勤務。2007年為替資金部に異動し、現在、カリフォルニア全支店を対象とする外国為替担当アドバイザー。
講演内容
為替市場の概要、規模
1. 為替市場は24時間週5日間オープン、北米では日曜日午後にシドニー市場がオープン、東京、アジア、ロンドン、ニューヨークと続き、金曜日の午後5時のニューヨーク市場閉鎖で終了する。為替市場は株式市場とは異なり週末を除き24時間世界のどこかの市場が開いていてぐるぐると回っている事になる。
2. 20年前はほとんどが為替仲介業者(ブローカー)を通じての取引であったが、現在ではほとんどが電子取引 ~ インターネット、プラットフォーム(ここで、電子表示版がめまぐるしく動く電子取引現場の動画が映し出された)
3. 一日平均取引総額は約3.2兆ドル(2007年4月BIS調査)
a. 3年間で71%の増加、2010年の予想は4兆ドル
b. 個人投資家、ヘッジファンド、機関投資家の割合がここ数年で急増
為替は水物と呼ばれているように、その動きの予測は非常に困難でグリースパン氏も為替で儲けるのは難しいと言っている。
取引の変化 1998年 2007年
4月の平均取引量 8,800億ドル 3.201兆ドル
インターバンク取引の割合 64% 43%
直物(スポット)取引の割合 45% 31%
注:インターバンク取引 ― ディラーが銀行間で行う取引
主要マーケット
取引割合 1998年 2007年
イギリス 32.5% 34.1%
アメリカ 17.9% 16.6%
日本 6.9% 6.0%
通貨ペアー別割合 2007年
€/$ 27%
$/¥ 13%
£/$ 12%
€ クロス 10%
エマージング 20%
ディリングルーム(ダウンタウンLA)
ディラー達は緊迫した雰囲気の中で仕事をする。食事のために外に出る事はしない。
ディラーデスク
数台のコンピュータを使用し、為替市場の変化に対応している。
貿易(輸入例)、物とお金の流れ
例) ラップトップ1,000台 を日本のメーカーに発注:
Cost ¥50,000 x 1,000 = ¥50,000,000
発注時の為替レート$/¥=93.35、ドル相当額$ 535,619)
支払いは円で¥ 50,000,000
支払期日30日後
30日後
$/¥ = 90.00 (円高・ドル安)の場合
¥50,000,000 ÷90.00= $ 555,556 Exchange loss of $ 19,937
$/¥ = 96.00 (円安・ドル高)の場合
¥50,000,000 ÷96.00= $ 520,833 Exchange gain of $ 14,786
ヘッジの重要性
ヘッジは為替変動の影響を抑える役目をする。
年初のレート 年末のレート 年高値/安値(差) 年平均レート
2005年 102.78 117.85 (↑14.66%) 121.04/102.05(18.99) 110.15
2006年 117.88 119.05 (↑0.99%) 119.78/109.74(10.04) 116.34
2007年 119.04 111.75 (↓ 6.12%) 123.89/107.41(16.48) 117.78
2008年 111.64 90.64 (↓ 18.81%) 111.64/87.24(24.40) 103.37
2009年 90.74 93.02 (↑2.51%) 100.99/86.41(14.58) 93.60
例)2008年年初に111.64で予算を組んだ場合、年末時点でのコストは年初に比べて19%上昇
した事になります。
為替のトレーディングツール
1. 直物為替 ~ スポット(Spot)
a. 資金受渡し日(Value Date)2営業日(カナダは1営業日)
b. 為替ターンオーバーの1/3
c. プラットフォーム最低取引単位:1MM
2. 先物為替 ~ フォーワード(Forward/NDF)
a. 資金受渡し日3営業日以降(カナダは2営業日以降)
b. NDF(Non Delivery Forward)政府規制通貨 例)ブラジル、中国
c. ターンオーバーの1/10
3. 通貨スワップ ~ Currency Swap
a. 金利スワップと同じ原理
b. ターンオーバーの1/2
4. 通貨オプション ~ Currency option
a. 株式オプションと同じ、通過のコールプット
経済指標
重要な指標
1. 雇用関連
a. 雇用統計 ~ 第一金曜日(NY 8時30分)
b. ADP雇用統計 ~ 雇用統計の前
c. 失業保険申請件数 ~ 毎週木曜日
2. 住宅関連
a. 中古住宅販売件数
b. 住宅着工件数
3. 小売関連
a. 小売売上田 ~ 除く自動車
4. 物価指数
a. 消費者物価指数(CPI)
b. 生産者物価指数(PPI)
雇用の変化 ~ やっとプラス
ギリシャ財政問題と€為替
ギリシャの政権が変わって財政赤字幅が大幅に修正され、それと同時にギリシャはA1格付け<からBBマイナスに落ちた。これによってユーロの価値が大きく下落した。このようにEEC16ヶ国の中の一国ギリシャの問題だけでユーロに大きく影響を与えた。
欧州連合、ギリシャ向け450億ユーロの支援策
欧州連合がギリシャに対する支援策を発表した瞬間、ユーロが上昇したが、このように為替はニュースに敏感に反応する。
発言で為替は乱高下
画面左の急激な為替下落は中国国家主席による“対米貿易黒字を追求してはならない”“人民元高は貿易不均衡是正につながらず”“人民元高は米失業率の解決につながらず”などの発言の影響を受けたもの。
また画面中央部の為替急上昇は民主議連の“1ドル=120円前後目安の適切水準に努力を”の発言によるもの。
9/11、ドル急落
原油価格と€ユーロの相関
原油価格とC$為替レートの相関
テクニカル/チャートの分析
フィボナッチ(ピラミッドやパルテノン神殿の建築様式に用いられている神秘的な数列であり、自然界の法則の一部)
トレンドはフレンド!群集心理?チャート分析は芸術!
レンドラインに近くなってくるとディーラー達は突き抜けた時のストラテジーを考え出す
一目均衡表
基準線が横ばい=方向感なし、下向き=下落相場、上向き=上昇相場
ここで、スピカーは田中氏になり、ユニオンバンクの為替商品の紹介があった。
1. ユニオンバンクの為替商品
a. 個人向け ~ FCTD(外貨定期)
– 余剰資金の運用手段として
b. 法人向け ~ FCDA(外貨普通)
– ビジネスの効率化手段として
2. 外貨定期貯金(FCTD)
a. 外為の相場観を試す 為替相場が預金利回りを向上させる可能性がある
b. 対象 個人またの法人のお客様
c. 目的 ポートフォリオの多様化として
d. 最低著金額 25,000ドル相当の外貨が最低預金額となります
e. FDIC保証 FDICの保証付き、元本は保証されます
f. 期間 1ヶ月から1年。1ヶ月物は期限前解約してもペナルィ ーはありません
g. オンライン•アクセス 口座の残高はネット上で見ることができます。
3. 外貨口座 - デマンド・アカウント(FCDA)
a. 対象 ビジネスのお客様用です
b. 維持費 毎月$30の維持費がかかります
c. 最低残高 ミニマムはありません。残高がなくても維持できます
d. 直接外貨で送金可 資金を両替することなく. 外貨の支払いや受け取りができます。
e. FDIC 保証 FDIC保証付き
f. オンライン•アクセス ネット上で残高を見ることもできます
4. シナリオ ~ 定期預金
Situation:
• 日本からの借り入れを円で毎月受け取っているお客様がいます。円で受け取ろうかドルで受け取ろうか迷っていました。
• 資金繰りに余裕があるし、この先円高になると思っている。
Solution:
• 円建て定期預金を開設し、毎月円で受け取り、定期預金に入金。
• 市場は大幅円高、受け取りドルが大幅増加
• 換金総額が$100,000以上ならば、“オーバーナイト・オーダー”でお客様はターゲットを決めて24時間6日間相場をモニターできます。
5. シナリオ ~ デマンド・アカウント
Situation:
• ヨーロッパからタイルを輸入しているお客様がいます。現在支払いはドル建です。
• ドルが安くなったとたん、イタリア会社はユーロでの支払いを交渉してきました。
• ユーロがドルに対して高くなっていったら、仕入れ価格が上昇するのが心配です。
Solution:
• この二年の間、ユーロはドルに対してかなり激しく変動しています。 そのリスクをヘッジするためにユーロ•デマンド•アカウントを開設し、200,000ユーロを最初に換金してユーロ口座に入金しました。 当時ユーロは$1.31で購入できました。
• 3-4ヵ月後、ユーロは一気に$1.42に上昇しました。お客様はユーロ•デマンド•アカウントから直接ユーロ建ての送金をします。
• 支払いが終了した際、口座に残っていたユーロを1.42でドルに換金しました。 レート差で為替差益がでました。