日時
2008年12月10日(水)、6:30PM - 8:30PM
会場
ニューガーディナ・ホテル
テーマ
リダクション.インフォース:企業戦略における集団解雇
講師
北川 リサ 美智子(きたがわ りさ みちこ)氏
講師のプロフィール
1979年 University of Southern California卒業, 1981年 東京大学大学院, 1982年 ロヨラ大学、法学博士, カリフォルニア州認可弁護士, 1986年 京都大学大学院法学修士(アメリカ人の弁護士としては3人目最後), 1995年 ジョージア州認可弁護士
北川氏は大手の国際法律事務所の弁護士として永年に渡り活躍、その後北川&イベート法律事務所を開設。日米間におけるビジネスに精通しており、日系企業の皆様方に高質かつ親切丁寧な、真心のこもったサービスを常に提供しアメリカでのビジネスの成功に助力すること26年。同氏が代表する著名日系企業のリストは[1]よりご覧ください。氏は、国際ビジネスの企業顧問弁護士として大変高い評価を頂戴しております。また、法律家ランキングで権威あるマーティンデール・ハベル社の評価において、卓越した知識を有し、専門知識に精通し、秀でた倫理観を備えている弁護士であるとして最高ランキング(AV-Rated)を与えられております。北川氏の法律業務内容は、主に日系企業のビジネスに関するもので、会社法 (設立、契約、M&A、変更登記、清算等)、雇用法 (ハンドブック、懲戒、解雇、訴訟、差別、セクハラ問題 およびセクハラ防止のトレーニング等)、不動産法 (売買、リース等)、 契約法 (ライセンス契約、ジョイントベンチャー等)、銀行法、国際取引法、債権回収、建設関連訴訟等、多岐にわたり豊富な経験を生かして活躍しております。同氏は、多数のセミナーを開講しており、アメリカ及び日本のビジネス法に関する執筆も精力的に行なっております。
講演内容
RIF – Reduction In Force (リダクション・イン・フォース)
“企業戦略における集団解雇”
2008年世界経済の危機 -1929年の世界大恐慌以来最悪の状態
“パーフェクト・ストーム”
1) 金融業の機能停止
a. Lehman Brothers倒産
b. Merrill Lynch, Bank of Americaに買収
c. Goldman Sachs 銀行持ち株会社へと転換
d. Morgan Stanley 銀行持ち株会社へと転換
2) 銀行業の機能停止
a. IndyMac Federal Bank
b. Countrywide Financial
c. Washington Mutual最大の預金・ローン銀行
3) クレジットの取得が困難、住宅金融業の多大な利益損失
4) 抵当権喪失が続出・住宅市場の暴落
5) 保険業界の危機
a. AIGの救済
b. 他保険企業の不安定性
6) 倒産・破産が最高記録となる。
不足の政府経済援助・救済金!
$700,000,000,000 の救済金
“Emergency Economic Stabilization Act” (10/3/08)
米国金融企業システムの救済のために政府が打ち出した案。7000億ドル(約65兆円を上限に行き詰った資産の買収を行い世界的な経済の下降に対処する目的。
”Troubled Asset Relief Program” “TARP”
2500億ドル(約23兆円)を上限に財務危機に直面する企業の問題を抱えた資産を政府が買収することができる。
TARP - 政府の経済援助・救済案
銀行・金融業は政府救済金を受け取るが 7千億ドルでも不十分
1兆ドル? ($1,000,000,000,000)
1兆ドルがどのくらいの額なのか?
$1,000 札を積み重ねると 68 マイル(約109km)の高さ!
最初の2500億ドル(約23兆円)の救済金は銀行へ大手銀行の持ち株と交換条件
2500億ドルを受け取った大手銀行
Goldman Sachs,Moran Stanley,Bank of America,JP Morgan,Merrill Lynch,Wells Fargo,Citigroup,State Street,The Bank of New York Mellon
$700,000,000,000(7千億ドル)の救済金のゆくえ - 多数の銀行といくつかの保険業が財務省のTARP案における救済援助金の受理を申し込む。財務省はすでに資金をこれらの企業に配布済み。近日中にさらにこのTARP案への参加を表明する企業があるだろう。
近況の経済状況
経済の混乱
大規模な失業
過去34年最高の失業率
今年10月では, 1千100万人の失業者 (2007より280万 人の増加)
11月では53万3千職のカット
過去34年最高の失業率
労働統計局の調査によると, 今年5月に集団解雇に踏み切った企業は1,626社、17万1千人以上の労働者に影響を及ぼす。
今年にはいってから120万の仕事が消える。 (その半数以上がこの3ヶ月のうちにおこっている)
1. 工場・製造所は9万職をカット、2003年7月以降最高
2. 建設業種は4万9千職カット
3. 小売業は3万8千職カット
4. 専門職・ビジネスサービスも4万5千職削減
5. 金融業は2万4千職カット
6. レジャー・もてなし業1万6千のポジションカット
[11/7/08 Yahoo News]
自動車メーカーの危機
オートメーカーのビッグ3(Ford, GM, Chrysler) が破産宣告をすると250 万にも及ぶ職種もが巻き沿いとなる(車両の装備・備品のメーカーなど)
上院の自動車産業経済援助法案によると:
米国の35万5千人の労働者が自動車産業に直接雇用されている。
更に450 万人がなんらかの形で同産業に関連。
また100 万人の定年退職者、配偶者、扶養家族が 同産業の各社が提供する退職金制度、健康保険の福利厚生を頼っている。
自動車メーカーの退廃による影響
米国労働者の10人に1人が自動車産業にかかわっている
政府の資金収入源& サービス:
- 州
- カウンティー
- 市
- 政府管轄のサービス
- 警察やインフラ
レストラン業
小売業
広告業
メディア (新聞・TV・ラジオ)
目的: 事業の存続
経費節減
労働費の節減
訴訟の回避
組織再編成
破産宣言 – 再編成型・チャプター11
RIFの代案
解雇の代案として
労働時間の削減
雇用の凍結
賃金の凍結
自主的な離職の提供
退職への報奨
再編成・職務の移動
RIFの概観
1. RIF – 考慮すべき要因
2. RIF プラン
3. 記録書類
4. 選考基準の決定と考慮点
5. 離職(サヨナラ)の時に必要なもの
6. 離職手当
7. 離職同意書とリリース契約書
8. RIFでのその他考慮点
9. RIF
10. 参照事項・リンク
1. RIF - 考慮すべき要因
目的:
労働費の管理と削減
訴訟の回避
疎かな計画での人員削減は逆に差別・不当解雇の申し立てを導く
効率性の改良
通達は早期に!
従業員にはなんらかの予告を与える
Early Notice Worker Adjustment and Retraining Notification Act (WARN Act)で定められた法令条件に注意
Federal WARN Act
該当する企業
100名以上のフルタイム従業員を雇用
通達が必要となるのは
設備の閉鎖: 30日の間に50名以上の従業員を解雇する場合
集団解雇: 500名以上の従業員解雇、もしくは50名から499名のフルタイムの労働力を解雇する場合
通達の規定
解雇の60日前に書面にて事前通達を出さなくてはならない
California WARN Act
該当する企業
75名以上のフルタイムもしくはパートタイムの従業員を雇用。
通達が必要となるのは
設備の閉鎖: 30日の間に50名以上の従業員を解雇、及び勤務地移動の場合。従業員人数の大小にかかわらない。(移動とは100マイル以上の場合)
通達の規定
解雇の60日前に書面にて事前通達を出さなくてはならない。
地域の労働力投資委員会
解雇、勤務地移動、集団解雇が行われる各市、カウンティーで選出された関係役員
離職時の手当と引き換えに会社に対しての クレーム放棄にサインをもらう
差別があってはならない(“共通点のない影響“)
従業員の再就職のためのサポート
2. RIF プラン
企業の目標をまとめる
タイムラインの設定
解雇候補者の分析
“RIF前” と“RIF後” の組織図と業務内容のチャート作成
3. 記録書類
従業員人事書類の管理
雇用開始日
職務タイトル (過去5年)
年令・性別
人種
勤務状況(現職又は休職)
勤務査定
懲戒・警告書
不服の申し立て
従業員のデータを表にまとめる
早期段階より弁護士を関与させる
ライセンスのないコンサルタントは間違った指導をすることが多々ある。又、コミュニケーション(文書・通信・交信)に機密特権が及ばない。
“選考過程の背景” 書類 (e-mail などの文通書, etc.)
弁護士・クライエント間の特権書類となる
4. 選考基準の決定と考慮点
“差別”に要注意
年令
性別
人種
結婚のステータス
性的嗜好
国籍
身体障害
オプション 1
年功序列基準 最後に雇った者、最初に解雇。
法的に最もつつかれにくい基準。ただし、貴重な良い人材をなくす 可能性もあり。
オプション 2
・ パーフォーマンス&スキル基準
人気のアプローチだが、複雑 なので弁護士への相談を勧める
考慮すべき要因
最近不服の申し立てを提出した
休職中
不均等に影響がでてしまうグループ
勤務評価・査定書
現在の勤務状況査定書
過去の査定書と比べる
一貫性が大切
従業員の持つスキル
会社にとって必要なスキルを持っているか?
”効率の悪い従業員から選ぶこと!”
5. 離職(サヨナラ)の時に必要なもの
最後のお給料
- 発生した賃金全額
- 発生した休暇/PTOで未使用分全額
通達事項
-EDD Booklet for Unemployment Benefits(失業保険)
- Status Change Notice
- HIPP & HIPAA
- COBRA
- 401(k)
6. 離職手当
カリフォルニア州及び連邦の法律による規定ではない
従業員の解雇時の経済的不安を和らげる
慣習の“2週間”ー法で定められてはいない
7. 離職同意書とリリース契約書
推薦
離職手当の受け取りは会社に対してのクレーム放棄を条件とすることが可能
リリースの考慮点
“クレーム放棄” - 離職した従業員が起こすかもしれない会社に対するクレームからの保護
“リリースにおける法的考慮”
1) 賃金・給与
2) ベネフィット
3) その他
“賃金・給与における考慮点”
同額?
もしくは
一定の方式/年功序列
週/月/給与 x ___ フルタイム勤続年数
オプションのベネフィット
COBRAの支払い – 従業員のみ、又は 扶養者含む?
年金プランの増強
その他
転職のアシスタント
レジメ(履歴書)
面接のスキル
就職斡旋案(EAP)
心理的なカウンセリング
推薦状
リリースの対象にならないクレームの種類
Worker’s Compensation(労災保険)
残業
賃金や労働時間に関するクレーム
雇用期間内に発生した返済可能な経費、出張費用など (California Labor Code Sections 2802 and 2804)
未来のクレーム
州及び、連邦政府機関への申し立て権利
年令偏見に対するクレームの権利放棄の要件
Age Discrimination in Employment Act (ADEA)
Older Workers’ Benefits Protection Act (OWBPA) - (従業員が20名以上の職場に限る)
40歳以上の従業員が対象
最低21日間の検討期間を与える(単独の場合)
複数の場合は最低45 日の検討期が必要
署名後の最低でも7日間、同意書を無効 にできる権利を従業員に与える
ADEA/OWBPA
分かりやすい言葉 – “理解した上で 且つ任意”でなくてはならない
従業員へ弁護士へのコンサルトを助言
年令偏見のクレームに触れる:
1) ADEA法下での従業員権利をすべて放棄
2) 従業員はリリース契約書にサインした後に起こりえる年令偏見のクレームについて権利放棄をするものではない
何か特別なものを提供
権利放棄を拒否する権利は限定しないこと
(例えば、 リリース契約書では支払い済みの金銭やベネフィットの返済を従業員に求めたりは出来ない。又、もし従業員がADEA法にのっとって会社側を訴えた場合、会社側が弁護士費用や損害賠償を従業員から回収できる旨をリリース契約書には記せない)
8. RIF でのその他考慮点
通達/タイミング
個人的に?
各部署・課ごと?
会社全体に?
プレス・リリース
セキュリティー
9. RIF
気遣いと敬いをもってあたること
訴訟へのリスク低下
順序よく・効率的に
通常業務への差し支えを最小限にするためにも、出来れば一日で解雇の作業を終了させる
各部責任者との連絡を密に
部署責任者へ役割とRIFの段取りを説明
台本を用意して渡す
FAQ (よくある質問)リストの作成と配布
会社の所有物を離職者から徴収することなど含めて、責任者が対処すべくすべてステップのチェックリストを作成し配給する
RIF 従業員との面談
手短に且つ率直に済ませる
理由を説明
堅実な態度で臨む
RIFにおける離職は最終決定であるということを従業員が理解していることを確かめる
すべての書類を配布出来るよう用意しておく
最後のお給料支払い(法律で定められている)
・ 発生した賃金全額
・ 生した休暇・PTOで未消化分すべて
・ 通達事項
- EDD Booklet “For Your Benefit”(失業保険)
- Status Change Notice
- HIPP & HIPAA Notices
- COBRA
- 401(k)
離職同意書とリリース契約書 (オプショナル)
RIF従業員の意見・感想
離職する従業員から意見・感想を収集
離職者面接
離職者への質問表