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サウスベイ マネジメント セミナー( Southbay management seminar )は月一回のセミナーを中心に勉強し、時々に親睦をする、乃ち「よく学び、よく交友する」そのような会です。

2015年10月 最新の経済学でマーケットをデザインする-学校選択制からアドワーズ・オークションまで 講師:小原一郎氏

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日時: 2015年10月14日(水)、6:30PM - 8:30PM
会場: ニューガーディナ・ホテル
講師:小原一郎(おばら いちろう))氏
講演録担当:佐伯和代

講師略歴:
「東京大学経済学部卒。ペンシルバニア大学で2001年にPh.D.取得。UCLA経済学部で助教授、ミネソタ大学で准教授を経て、現在UCLAの准教授。専攻は経済理論とゲーム理論、特にミクロ経済学と産業組織論が専門。現在UCLA経済学部の副学部長を務める。2011年にUCLAの工学系研究者や計算機科学者たちと共同してUCLAエンジニアリングエコノミクス・ラーニング・ネットワーク研究所を立ち上げ、現在そこの共同ディレクターを兼務する。」




講演録: 
まずは、マーケットデザインとは何か
ノーベル賞 受賞者
  アルビン・ロス氏  :ハーバード大 
ロイド・シャープレイ氏 :UCLA
マーケットをデザインするとは、
狭い意味での政府以外にも大事
今日は2つのことを中心にお話しします。
1)学校選択制
2)検索連動型広告オークション
この2つは全く違う話しですが、あえて、この違うトピックを選んでみました。

1)学校選択制
ボストンパブリリックスクールシステム
2006年に改革。このシステムが学校を割り振る
毎年およそ6万人の学生を希望に沿うように割り振る。
学生は特定の学校に行く権利を買えないので、「マーケット」には頼れない。
その場合、経済的な発想が役に立つのです。
ボストンでの事例
 学生は希望する学校のリストを提出。
 第一志望から第七志望くらいまで書いて提出。
そうすると、学校の人気が明らかになる。次に、優先順位が出てきます。
優先順位
兄弟姉妹が通っているか。
家が近いか
第一志望がダメな場合、第二志望へ回される。それがダメなら第三志望、、、
実は、この形態はアメリカ全土で行われていますが、実は問題があるのです。
その問題とは!
AさんとBさんが「X」という学校に行きたい、
そして、Cさんが「Y」という学校に行きたい。
この場合、Bさんが「X」校を受けてダメだった場合、第二志望に行きますが、
その第二志望「Y」校がいっぱいの場合がある。

でも、CさんよりもBさんの方が「Y」校に対して優先順位が高い場合がある。
でも、Y校は人気でみんなが行きたいので、行くことができない。
人気の学校は人が集まり、そこにあぶれた人は、次の志望校にアタックしたいが、 その学校も人気が高い場合、どんどんあぶれてしまう。これが問題。
なので、学生は「行きたい学校」ではなく、「入れそうな学校」を第一優先に 志望する傾向が出てきた。
そこで、学者を招いてコンサルティングを要請したところ、 ゲール・シャープレーアルゴリズム(Deferred Acceptance Algorithm)を推奨。
ゲール・シャープレーアルゴリズムとは
AさんとBさんが「X」という学校に行きたい。
Cさんが「Y」という学校に行きたい。
そして、Aさんの方がBさんより優先度が高かったため、BさんはX校には入れず、Y校を志望。 この時、Y校に行きたいCさんとBさんを比べてみて、どちらが適しているのか、
優先度を見るというシステム

質問:CさんがY校に入れず、第二志望がX校だった場合で、CさんがAさんよりも優先順位が高い場合、今度はAさんがX校に入れない場合もありますか?
答え:あります。
このアルゴリズムでは、嘘をつくと損をする。行きたい学校を正直に書いた方が得をするシステム。
なので、このアルゴリズムは医療研修生のインターン先の割り振りなどにも使われています。
そして、ボストンでこのゲール・シャープレーアルゴリズムが成功したことから、NYC、Bostonに始まり、Denver, New Orleans, Washington D.C.など多くの都市でも同様の改革が進行中。

まとめ:
* 学生を学校に割り振るには、マーケットに頼れないので、何かシステムが必要。
* 従来のシステムでは、正直に自分のランキングを申告しないインセンティブがある。
* 経済学者によって推奨されたアルゴリズムが評価され、多くの都市で使われ始めている。

2)検索連動型広告オークション
検索連動型広告とは?
  グーグルの検索画面で何かをサーチした場合、右側に広告が表示されます。
  この広告はもちろんタダではありません。

この広告のことを’検索連動型広告'と言います。
これらの広告は、検索した人が検索したワードによって、連動し、出てきます。
通常の広告とは違い、
1)消費者のターゲティングがしやすい
  新聞や雑誌は、その読者が対象。道の看板などはそこを通る人が対象。
  実際に興味がない人もたくさんいる。
ですが、この連絡型は、そのキーワードによって、ターゲットが絞られ、
また、Zipコード(IPアドレスで判別)などによっても絞ることができます。
加えて、履歴から性別や年齢を判別することも可能。
クリックしている
ジップコード
性別
年齢
もうひとつはフレキシブルな課金制度
・Pay per Click : 広告を出して、狙った人がクリックしたら、そのクリックごとにお金を払う。なので、クリックしなかった場合はお金は支払われない。
・Cost Per impression :クリックしなくても、複数回数表示することで広告料金発生
・Cost per order : クリックして、購入した場合のみ広告料金が発生。

グーグルの広告収入600億ドル(2014年)中の70%が検索連動型広告からの収入となっています。
アマゾンがAdwords(検索連動型)に2012年に投じた額:5500万ドル
このような検索連動型の広告を売るフォーマットは存在していなかった。
それを構築したのが、Yahoo
広告の権利は、特定のオークションを通じて販売される。
誰かが世界のどこかであるキーワードをサーチするたび、1回のサーチごとに1回、 オークションが開催される。
これはどうなっているのかというと、
前もって
(1)広告、
(2)キーワード
(3)クリックあたりの支払い(ビッド)を設定しておく
この時、他の属性(性別、年齢など)も設定可能。
次に、
指定したキーワードがサーチされるたびにオークションが行われ、一番ビッドが高い人が一番いいポジションが取れる。ニ番目は二番目にいい場所、、、
この設定、特にビッドはいつでも変更可能。
では、モーゲージでのサーチをした場合、

この支払い(ビッド)は、いくらくらいだと思いますか?
答え:40〜50ドル (これは1回のクリックでの支払い額)
例 (一回のクリック広告の値段)
1)Insurance $54.9
2)Gas/Electricity $54.6
3)Mortgage $47.1
4)Attorney $47.1
5)Claim $45.5
どれくらい払うの?という質問に対しての回答コラム
ビット額に応じて変動します。
実際は、自分のポジションを維持するための最低限のビットを払うシステム。
これは、例えば、3人の広告主が、2つの広告枠を狙っている場合、
1の人が、$20/Click ,2の人が$15/Click 、3の人が$5/Click の場合、
$20/Click の1の人が一番いい枠を取り、$15/click(2番目のビッターの金額)を払う。
$15/Clickの2の人は、$5(3番目のビッターの額)払い、二番目にいい場所をとっている。これは、そのポジションを維持するための費用。

Second Price Auctionとは、複数のビッターが1つのものにビッドする
一番高いビッドをした人が賞品を受け取り、二番目に高いビッドを払う。
通常は、ビッドした額を払うというシステムですが、この場合、自分のビッド額を下げていく傾向がある。
しかし、このSecond Price Auctionでは、自分のビッド額を下げても、無意味という現象が起きます。
Second Price Auctionには、2つ大きな性質があり、(1)ビッドを下げても仕方がない(支払いが変わらない)、(2)正直にビッドするインセンティブがある
検索連動型広告オークションでは、正直にビッドするインセンティブは弱まりますが、(1)は引き継がれます。
検索連動型広告がGPSを採用するまで
90年代後半:最初にこのシステムを売り出したのはOverture(今のYahoo)
2000年代初頭:Overtureは初めはFirst Price Auction(自分のビッドを払う)方式。
         この方法では、どんどんビッドが下がり、収入が安定しない。
そして、現在のSecond Price Auctionとなった。
ビッド額は推定ができる。そのため、オークションからの利益を推定することが可能。
現在、多くのコンピューターサイエンティストがこのシステムを研究中。
実際、マイクロソフトやGoogleなどが経済学者と共同研究をしていた。している。

経済学者やサイエンティストは、以前は銀行やパブリックな機関に就職することが多かったが、現在は、IT系の会社で働くことが多くなった。
小原さんも計算機科学者(コンピューターサイエンティスト)などとも共同で研究をしている。

まとめ
* 検索連動型広告オークションは、非常に人気のある高収入オークション。
* 経済学で良く知られているSecond Price Auctionがそのベースにある。
* 経済学者と計算機科学者が共同で研究を進めている。
‘’'Q&A
1)従来の経済学は衰退し、コンピューターよりの学問になっているのでしょうか?
A 最近の経済学者の対象範囲は広がり、巨大なデータを解析し、何かを見付ける。といったように、いろいろなデータが使えるようになった。
2)世界の経済をデータとして、経済学者が政治学を見ることはできますか?
A; 米国の選挙の結果を全州で予測し、どの政治学者よりも当てたという話があります。
 ロサンゼルスでの犯罪学を専門家とコンピューターで比べてみたところ、コンピューターの方が圧倒的に効率よく、望んでいるものが手に入ったというニュースが最近ありました。
3)データが以前よりも手に入るようになったということですか?

A: 今まで使えなかった、手に入らなかったデータが使えるようになったことが大きいです。
4)スカイプは無料で会話ができますが、広告収入はどのようになっていますか?
  A(受講生からのA) スカイプ同士であれば無料ですが、スカイプを使用していない人が利用する場合は有料。
5)メーカーは値段をある程度設定していますが、アマゾンで他社が安売りしている場合、 メーカーで表示している値段もそれに連動してしまう、これは?
  A:Price matching はよくあります。
  6)ネットで広告を除外するソフトがありますが、その場合、グーグルの収入などはどうなりますか?
A: もちろん影響はあると思います。しかし、クリック連動型の場合は、広告削除ソフトを入れるような人はクリックをしないと思うので、どうなるのか、わからないですが、影響ないかも。
7)マーケットデザインとは、をもう一度 
A: 最初の例では、お金を使わずマッチさせる。これがマーケットデザインです。
検索連動型広告の場合は、買い手と売り手が出会う場所を作る事がマーケットデザイン。
8)小原講師の専門である「ゲーム理論」とは?
 A: 抽象的に言うと、みんなが戦略的に物事を考えている時に、どのような戦略を練っているのかを考えるのが、ゲーム理論で、テレビゲームなどとは違います。
9)学校選択 その要素はたくさんありますよね?
 A; たくさんありますが、親類縁者、距離が一番重要
10)バスで遠路、子供が学校に通うのが解消されたということも、マーケットデザインですか?
A: はい。それもマーケットデザインのひとつだと思います。
以上。
#2015年セミナー

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