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サウスベイ マネジメント セミナー( Southbay management seminar )は月一回のセミナーを中心に勉強し、時々に親睦をする、乃ち「よく学び、よく交友する」そのような会です。

2015年6月 中国から見た米国 講師:堀之内秀久氏

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日時: 2015年6月10日(水)、6:30PM - 8:30PM
会場: ニューガーディナ・ホテル
講師:堀之内 秀久(ほりのうち ひでひさ)氏
講演録担当:佐伯和代

講師略歴:
1980年 東京大学法学部卒業、外務省入省
1981年 南京大学留学
1983年 ハーバード大学院留学
1992年 在中国大使館一等書記官
1996年 在米国大使館参事官
1999年 外務省条約局国際協定課長
2000年 外務省条約局法規課長
2002年 外務省アジア大洋州局中国課長
2004年 在中国大使館公使(政務担当)
2007年 外務省国際情報統括官組織参事官
2009年 外務省国際法局審議官
2010年 在中国大使館公使(総務担当)
2011年 在中国大使館特命全権公使
2014年 在ロサンゼルス総領事
2001年度及び2002年度 早稲田大学院非常勤講師を兼務。(法学研究科で「国際法特殊研究」を担当)
主要論文 「九州南西海域不審船事案と国際法」
2003年9月「早稲田法学」第79巻第1号所収
     「9月11日の8時間」
2005年9月東京大学出版会「融ける境 超える法② 安全保障と国際犯罪」所収
     「黒龍江省チチハル市毒ガス事故善後」
2006年7月有信堂「21世紀国際法の課題」所収
     「日中領事協定ー瀋陽事件からの軌跡」
2010年6月有斐閣「ジュリスト」No.1402所収
単著 「長寿的日本」2007年7月中央編訳出版社(中文)

講演内容

1.中国経済の全体規模と「中国の夢」
 日中両国は、世界第2位と第3位の経済大国と言われるが、全体的な経済規模で比較すると2010年に日本を追い越した中国の実質GDPは、2013年にはほぼ日本の倍に近づき、米国の三分の二弱である(日本:5兆ドル、中国9兆ドル、米国16兆ドル)。

計画経済の建前をとる中国の今後の成長率見通しについては、来年から開始する第13次五カ年計画の発表を待たなければならないが、仮に本年以降も比較的高速度の成長を続け、更に人民元高の傾向が今後とも続くのであれば(実際に人民元は2005年以降、対ドル・ベースで約3割切り上がっている)、近未来的に米中両国の経済規模が逆転する可能性も排除されない。
そこで重要と考えられるキーワードが「中国の夢」である。2012年の中国共産党第18回党大会で発足した習近平指導部が、その誕生直後より盛んに喧伝している言葉が「中国の夢」であるが、この言葉が実際に何を意味しているかは余り明らかにされていない。同党大会直後に新指導部全員が揃って天安門広場にある国家博物館を訪れ、「復興の道」と題された展示を観た際に習近平総書記が述べた「二つの百年」という言葉に、かろうじて「中国の夢」の謎をひもとくヒントを見るのみである。その「二つの百年」とは、中国共産党成立百周年(即ち2021年)と中華人民共和国成立百周年(即ち2049年)に、中国が現代化の目標をそれぞれ達成し、中華民族復興の夢を実現するというものである。近未来の米中逆転と「中国の夢」、今後の米中両国の動向から目を離すことは出来ない。

2.中国が抱える弱点
改革開放後、一貫して高速度の成長を続けてきた中国であるが、その一方で成長がもたらした歪みが中国社会の隅々に及んでいる。
(1)腐敗:かつて政治局常務委員入りが確実視されていた薄煕来(重慶市書記)の失脚と摘発、中国全土に高速鉄道網を張り巡らせた劉志軍鉄道部長に対する死刑判決(執行猶予2年)、徐才厚(前中央軍事委副主席)の摘発と死去、周永康(前政治局常務委員)の摘発と裁判に見られる通り、現在中国の腐敗はあらゆるレベルに及んでおり、国民の怨嗟の的となっている。
(2)食品安全:中国に暮らす一般市民にとり、日々の食品の安全性に対する疑問は止まるところがない。かつて大きな問題を引き起こした国内産粉ミルクに対する信頼性は引き続き低く、華南地方における主食のコメについても重金属汚染の報道が繰り返されている。養豚過程での薬品使用や過剰な水補給も後を絶たない。
(3)環境破壊:北京の大気汚染が最悪と感じたのは2013年1月のことであるが、この大気汚染を抜本的に解消するためには、東京やLAの経験が示す通り20年ほどを要するのであろう。鉱山や汚染排出企業の排水垂れ流しによる河川汚染、海洋汚染の被害は全国に広がっており、レアアース採取のための土壌汚染にも凄まじいものがある。
(4)格差拡大:固定資産税も相続税も存在しない中国では、日本とは比べものにならない格差が発生し、固定化されつつある。「富二代」(資産家の二代目)、「窮二代」(貧困家庭の二代目)との言葉の定着が、この社会の危うさを示している。

(5)群体性事件:このような社会不満を背景に各地で発生しているのが群体性事件、所謂暴動であり、環境問題や土地収用を背景に、或いは単なる刑事事件をきっかけに発生が相次いでいる。
(6)教育・医療:四川大地震の際に多くの子供が学校で犠牲になったことが端的に示す通り、行政予算の教育に対する投入は極めて少ない。自己負担を強いられる教育費及び医療費の高騰が各家庭にとり大きな圧力としてのしかかっている。
(7)少数民族問題:以上の諸問題に加え、多民族国家である中国に特有の少数民族問題が統治の困難さを増大させている。ウイグル族やチベット族との間の事件は地理的にも新疆や西蔵に止まらず発生している。

3.中国から見た米国
 中国社会がこのように様々な矛盾や問題に直面する中で、引き続き発展と経済成長に国民の関心を集中させるためのキーワードが「中国の夢」であり、その核心は近未来の米中逆転なのかもしれない。中国から見た米国は、かつて仰ぎ見た超大国ではなく、もう少しで手の届くところまで来た海を挟んだ隣国のイメージなのである。
#2015年セミナー

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