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サウスベイ マネジメント セミナー( Southbay management seminar )は月一回のセミナーを中心に勉強し、時々に親睦をする、乃ち「よく学び、よく交友する」そのような会です。

2001年度 3月 - 日本企業の海外生産とグローバル・ローカライゼーション

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テーマ:日本企業の海外生産とグローバル・ローカライゼーション
講師:長尾謙吉さん、大阪市立大学経済研究所助教授、2000年12月から1年間、フルブライト・プログラムによる研究者としてUCLA地理学科に在籍中。

長尾さんの専門は、経済地理です。これまでの経済学は、空間の広がりという視点が欠けていた。経済の「需要供給曲線」は、すべてのひとが、同じ場所に住んでいるという前提で作られている。例えば、生産者が日本にいて、消費者がアメリカにいて、お金の決済はイギリスで行われ、という時代では、「空間」という要素を考えることが、重要になってくる。

「グローバル化」「地球的規模で考えよう」ということが、言われているし、『地理の終焉』というタイトルの研究書も出版されている。どこへでも簡単に行けて、なんでもすることができる時代が来ている、というが本当であろうか。
1993年に制作された映画「デモリッシュマン」は、シルベスター・スターローンが主演している。50年後の近未来の南カリフォルニアが舞台で、グローバリゼーションが行き渡った世界が描かれている。その映画の中では、ちょっといいレストランとして「タコベル」が使われている。競争の結果、生き残ったレストランは、「タコベル」という設定である。

「ボーダレス時代」とも言われている。国家の境界線という意味でのボーダーの役割は消えつつあるかもしれないが、国家の中のさらに小さな単位である地域の特徴までは、消え去ってはいない。むしろ、地域的な特徴が顕在化している。
日本・韓国とアメリカ・カナダでは、車の売れ方が違う。アメリカ・カナダでは、中古車価格が非常に高く、中古車市場で信用を得ないと、新車も売れない。この一番いい例がヒュンダイ自動車である。安いヒュンダイの車は、最初は、たくさん売れたが、中古車市場を作ることができなかったため、その後、売上は伸び悩んでいる。韓国で売れる車とアメリカで売れる車は違うということである。また、アメリカの中でも、海岸部に人口が集中している東部では、潮風の影響があり、車はすぐさびてしまう。東部で売れる車にするためには、さびない工夫が必要である。

アメリカでは「ニューメディア」、日本では「マルチメディア」と呼ばれるインターネットを中心とした新事業の会社は、全米に均等に散らばっては、いない。特定の場所に集中する傾向がある。サンフランシスコであれば、マーケット・ストリートの南側、「ソーマ」と呼ばれる地区に集中している。ソーマは、縫製工場があった場所で、ニューメディア企業は、工場の跡の建物を利用している。ニューメディアは、衣服産業とよく似て、不確定性の世界である。何が売れるか分からないことと、売れると短期間に大量に作らなければならない、という共通点がある。
サンフランシスコは、アートとテクノロジーが結びつくことには、最適の町と呼ばれている。サンフランシスコは、ゲイの町として有名だが、カーネギー大学の調査によれば、ニューメディア産業の集積とゲイ地区には、相関関係がある、という。ゲイを受け入れる地域は、新しいことを受け入れる、という解釈である。
世界的な企業になったソニーは、愛知県に工場が多いが、これは、創業者が愛知県出身であったことと関係している。創業者が地元のことをよく知っていて、工場を作りやすかったからだ。

世界的規模で販売されている製品は、母国市場が非常に大きな影響力を持つ。アメリカでは、新車でも故障することは、許容されていた。しかし、日本のカスタマーは、故障を非常にいやがり、日本メーカーは、壊れない車を作った。そのことが、アメリカでも競争に勝つことができる車作りにつながった。
自社製品の優れた面や製造方法の優れた点を「自明視」せず、自社や地場の持つ優れた面を見直すことが大切である。
(要約=東 繁春) (了)

2001年3月17日

大阪市立大学経済研究所助教授
長尾 謙吉 様

先日は私ども「サウスベイ経営セミナー」のため、講師としてお出でいただき誠に有り難うございました。

経済学に「空間」「領域」「場所」「距離」の重要性を持ち込んだ経済地理学が、社会科学において再評価を受けているとのお話し、大変興味深くお伺いしました。

グローバル化、情報化という言葉が先行し、地球上どこに居ても同じかのような印象を与えている未来観に、地理の意味をもう一度考え直す良い機会となりました。

ちょっと洒落たレストラン・タコベルから運ばれたタコをほうばりながら、砂漠でビジネスをする姿は、あまり魅力的には見えてきません。
既に現実として現れてきている 所謂ニューメディア産業の大都市集積や、ボーダレスになって見えてくるボーダフルな社会・経済など、大変楽しく聞かせて頂きました。

また、「Taken for granted world」を「自明視」せずに足元の優位性を見直す事も大切と、我々の日常生活やビジネスの世界にも当てはまる示唆に富んだお話しを伺いました。

ダンスのお話しを頂く時間がなかった事だけが、残念に思っております。また別の機会にダンスのお話しをお聞かせ頂ければと願っております。

終わりに 益々のご発展ご活躍を祈念致しまして 御礼の言葉とさせていただきます。
有り難うございました。
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