2000年度 8月 - 米国雇用問題
[セミナー要旨]
雇用問題は避けて通れない問題である。企業から依頼を受けるが、社員の解雇を 行うとき、企業側の言い分だけを聞いていたのでは、全体像が分からず、あとで 訴訟になることがある。時によっては、社員の側ではなく、雇用主に問題がある ことがある。 日米の習慣の相違から、問題が起きることがある。
日本から40代、50代の前半 で、アメリカに来て、急にえらくなるような人は、全体のことが見えにくい。 就業規則を作るとき、アメリカの弁護士が用意した文案を、日本の本社が、日本 の都合に合わせて変更しろと言ってくるが、本社の要求どうりにすると、裁判の 時、不利になる就業規則になってしまう。アメリカの弁護士は、訴訟のことを考えて、必要条項を就業規則に盛り込んでおくからだ。
日米では、雇用に関する国の干渉の度合いが違う。アメリカには、終身雇用という契約はない。At Willといって、雇用者はいつでも、解雇できるし、社員はい つでも辞めることができる。5年の雇用契約があって、3年目でクビになって も、裁判所は、残りの期間を保証することをしない。
米国では、国が積極的に干渉して法律を作っていく。セクシャル・ハラスメント の場合は、法律ではなく、判例によって、ハラスメントの定義が定着してきた。 15年くらい前は、セクシャル・ハラスメントの裁判は少なかったが、カリフォル ニア州から始まり、他州に飛び火して行った。 クリスマス・パーティーの時に、ボスと女性秘書が肩を抱いて撮った写真が、ハ ラスメントの証拠として、提出されたことがあった。倉庫内にヌード写真が貼ってあるのも、会社の責任と考えられている。
三菱自動車が、ミシガン州の工場 で、トイレの中の卑猥な落書きが書かれいることに、何もしなかったと、負けた事例がある。週刊文春を購読しているが、この雑誌の中にも、時々ヌードがある。こういった雑誌を置いておくことも、ハラスメントになる。
能力のある社員は、解雇を通告しても、次の仕事が見つかりやすいが、能力のない人ほど、現在の会社にしがみ付こうとする。遅刻が多いことを、解雇の理由に挙げても、遅刻の理由を子供の世話だと反論されると、裁判で負けることもあ る。
日ごろから、訴訟の芽をつんでおくことが必要である。問題にある社員とは、話 し合いを持って、退職金の条件などを交渉してみる。
カリフォルニアでは、1年間に1万人以上の弁護士が生まれる。近いうちに、カ リフォルニア州の弁護士の数は100万人になる。弁護士が過剰で、雑誌に広告を 出して、仕事を取ってこようとする弁護士もいる。解雇された社員は、簡単に訴 訟に持ち込むことができる。 訴訟は、大変な費用がかかる。大手弁護士事務所に依頼すると、1時間あたり 400ドルから500ドルを請求される。さらに、その弁護士の下にアソシエートがつ いていて、別に弁護士料を請求される。1ヶ月の弁護士料が何万ドルになる。裁判を始めると、2年から3年がかかるから、3000ドルから5000ドルの示談金を、 支払った方が懸命ということにもなる。
(まとめ=東 繁春)
2000年8月10日
道 野 守 康 様
昨日は 私共 「サウスベイ経営セミナー」のため ご多忙にもかかわらず 貴重な時間を割いていただき、講師として有意義なお話を 大変有り難うございました。
日系企業にとって 人事・労務問題は 日常避けて通れない最重要課題の一つであり、その上、複雑な法律、差別問題などを抱え、さらに訴訟ケースが日常茶飯事の当地では、その対応をひとつ間違えると 企業の存続にかかわる事態になりかねません。今回は この問題を 先生の 豊富な経験からの実例も含め、法律の現状・傾向・留意すべき点などを わかり易く、実務的にお話いただき、明日からの仕事に直接役立つ内容であり、たいへん勉強になりました。
当地がアメリカであり、ここでは雇用関係が at willが基本であり、また、自由裁量を大きく認めては成り立たない労働環境にある等、日米文化の相違を充分認識し、毎日のマネジメントを行う必要性を痛感いたしました。 今回の セミナーでは 私達との 率直な意見交換の時間もとっていただけ、大変有意義でした。 もし出来たら また次の機会を作っていただき、お話をしていただけたら幸いです。なにとぞよろしく お願い申し上げます。 どうも有り難うございました。
雇用問題は避けて通れない問題である。企業から依頼を受けるが、社員の解雇を 行うとき、企業側の言い分だけを聞いていたのでは、全体像が分からず、あとで 訴訟になることがある。時によっては、社員の側ではなく、雇用主に問題がある ことがある。 日米の習慣の相違から、問題が起きることがある。
日本から40代、50代の前半 で、アメリカに来て、急にえらくなるような人は、全体のことが見えにくい。 就業規則を作るとき、アメリカの弁護士が用意した文案を、日本の本社が、日本 の都合に合わせて変更しろと言ってくるが、本社の要求どうりにすると、裁判の 時、不利になる就業規則になってしまう。アメリカの弁護士は、訴訟のことを考えて、必要条項を就業規則に盛り込んでおくからだ。
日米では、雇用に関する国の干渉の度合いが違う。アメリカには、終身雇用という契約はない。At Willといって、雇用者はいつでも、解雇できるし、社員はい つでも辞めることができる。5年の雇用契約があって、3年目でクビになって も、裁判所は、残りの期間を保証することをしない。
米国では、国が積極的に干渉して法律を作っていく。セクシャル・ハラスメント の場合は、法律ではなく、判例によって、ハラスメントの定義が定着してきた。 15年くらい前は、セクシャル・ハラスメントの裁判は少なかったが、カリフォル ニア州から始まり、他州に飛び火して行った。 クリスマス・パーティーの時に、ボスと女性秘書が肩を抱いて撮った写真が、ハ ラスメントの証拠として、提出されたことがあった。倉庫内にヌード写真が貼ってあるのも、会社の責任と考えられている。
三菱自動車が、ミシガン州の工場 で、トイレの中の卑猥な落書きが書かれいることに、何もしなかったと、負けた事例がある。週刊文春を購読しているが、この雑誌の中にも、時々ヌードがある。こういった雑誌を置いておくことも、ハラスメントになる。
能力のある社員は、解雇を通告しても、次の仕事が見つかりやすいが、能力のない人ほど、現在の会社にしがみ付こうとする。遅刻が多いことを、解雇の理由に挙げても、遅刻の理由を子供の世話だと反論されると、裁判で負けることもあ る。
日ごろから、訴訟の芽をつんでおくことが必要である。問題にある社員とは、話 し合いを持って、退職金の条件などを交渉してみる。
カリフォルニアでは、1年間に1万人以上の弁護士が生まれる。近いうちに、カ リフォルニア州の弁護士の数は100万人になる。弁護士が過剰で、雑誌に広告を 出して、仕事を取ってこようとする弁護士もいる。解雇された社員は、簡単に訴 訟に持ち込むことができる。 訴訟は、大変な費用がかかる。大手弁護士事務所に依頼すると、1時間あたり 400ドルから500ドルを請求される。さらに、その弁護士の下にアソシエートがつ いていて、別に弁護士料を請求される。1ヶ月の弁護士料が何万ドルになる。裁判を始めると、2年から3年がかかるから、3000ドルから5000ドルの示談金を、 支払った方が懸命ということにもなる。
(まとめ=東 繁春)
2000年8月10日
道 野 守 康 様
昨日は 私共 「サウスベイ経営セミナー」のため ご多忙にもかかわらず 貴重な時間を割いていただき、講師として有意義なお話を 大変有り難うございました。
日系企業にとって 人事・労務問題は 日常避けて通れない最重要課題の一つであり、その上、複雑な法律、差別問題などを抱え、さらに訴訟ケースが日常茶飯事の当地では、その対応をひとつ間違えると 企業の存続にかかわる事態になりかねません。今回は この問題を 先生の 豊富な経験からの実例も含め、法律の現状・傾向・留意すべき点などを わかり易く、実務的にお話いただき、明日からの仕事に直接役立つ内容であり、たいへん勉強になりました。
当地がアメリカであり、ここでは雇用関係が at willが基本であり、また、自由裁量を大きく認めては成り立たない労働環境にある等、日米文化の相違を充分認識し、毎日のマネジメントを行う必要性を痛感いたしました。 今回の セミナーでは 私達との 率直な意見交換の時間もとっていただけ、大変有意義でした。 もし出来たら また次の機会を作っていただき、お話をしていただけたら幸いです。なにとぞよろしく お願い申し上げます。 どうも有り難うございました。