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北海道新聞/形見の日章旗、78年ぶり戻る 沖縄で戦死した札幌出身・吉原さん 米兵遺族が保管(Return of the Japanese flag after 78 years・Sapporo)

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1945年(昭和20年)6月に沖縄戦で戦死した札幌出身の吉原一徳さん=当時(21)=が戦地で持っていた日章旗が3日、戦後78年間保管していた米兵の遺族から妹の児玉陽子さん(91)=札幌市東区=に直接返還された。児玉さんは「兄が帰ってきたような気持ち。大切に持ってくれていてありがたい」と涙ながらに感謝した。

■妹「兄が帰ってきたよう」
 旧日本兵の遺品返還を進める米オレゴン州のNPO法人「OBONソサエティ」の取り組みで、米兵の遺族が来日して返還するのは道内では初めてで、全国でも7例目。返還式を3日、札幌市内で行った。

 吉原さんは種苗農家の7人きょうだいの長男に生まれ、15歳で今井商店(後の丸井今井)で働き始めた。44年2月に出征し、その際に職場の人から贈られたとみられる日章旗には3代目社長の故今井道雄さん=90年死去=の署名もある。9歳違いの妹の児玉さんは「本当に優秀で、両親も自慢の兄だった。一緒に雪遊びをしたのが楽しい思い出」と振り返る。

 戦後、児玉さんら家族のもとを訪れた当時の上官によると、吉原さんは野戦病院で治療を受けており、上官から「(家を継ぐ)長男なのだから」と病院に残るよう説得されたが、「故郷に弟がいるので大丈夫です」と自ら志願し、最後の突撃に加わったという。20年6月18日、沖縄戦の激戦地、糸満市国吉で戦死した。

 日章旗は沖縄戦に従軍した元米海兵隊の故ウォーレン・マッコラムさん=94年に72歳で死去=が米国に持ち帰り、保管していた。長男のグレッグ・マッコラムさん(70)=ジョージア州在住=が3月、「持ち主の家族に返したい」とOBONソサエティに旗の返還を依頼。同団体は日本遺族会と連携して遺族を捜し、児玉さんにたどり着いた。

 児玉さんに日章旗を手渡したグレッグさんは「ご遺族にとって心の区切りになると思い、直接返したいと考えた」と語り、児玉さんは「亡くなった母が一番喜んでいると思う。悲しい時もあったが、今はうれしい」と声を震わせた。

 来道したOBONソサエティのレックス・ジーク代表(70)は「(戦没者を直接知る人に遺品を手渡せる)奇跡をきょうで終わりにせず、一人でも多くの遺族に日章旗を返還したい」と話した。
 
 
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