第二次世界大戦の沖縄戦で戦死した北海道苫前町出身の加藤馨さんが、出兵前に寄せ書きを受けて戦地に持って行った日章旗の遺品が10日、町内で暮らす加藤さんの弟の妻、加藤チヤさん(91)に78年ぶりに返還された。米国イリノイ州の元海兵隊員、レイモンド・ガイ・アプラー氏が沖縄から持ち帰って保管していたもので、米国の非営利団体「OBON ソサエティ」の仲介で返還が実現した。 加藤さんは旧陸軍第24師団輜重兵(しちょうへい)第24連隊に所属。沖縄戦収束前日の1945年6月22日、沖縄本島真栄平で戦死した。24歳だった。日章旗に加藤さんの弟の等さん(96)の名前と「がんばれ」のメッセージが書かれており、返還の決め手になっていたが、等さんは今年7月4日、返還を待たずに亡くなった。 遺品を受け取ったチヤさんは「夫(等さん)がもう少し生きていたら会えたのに……。夫と沖縄まで行き、馨さんの遺品を探したが何も見つからなかった。形見が帰ってきて胸がいっぱいです」と話した。馨さんの遺骨はまだ見つかっていない。 第24師団は、39年に旧満州のハルビンで北海道出身者を中心に編成され、44年の沖縄戦に投入された。沖縄の「平和の礎」に刻まれた北海道の戦死者が1万805人と沖縄に次いで多いのは、24師団の犠牲者が多かったためと言われている。 日章旗は、米国から沖縄戦に参戦したレイモンドさんが、戦利品として戦場から持ち帰って大切に保管。レイモンドさんが亡くなったため、娘が日章旗を遺族に返還する運動を続けている「OBON ソサエティ」に依頼して道連合遺族会などの協力で返還が実現した。【土屋信明】 OBON ソサエティ 米国の記録映画カメラマン、レックス・ジーク氏と妻で日本人の敬子・ジークさんが2009年に設立したオレゴン州公認の非営利団体。敬子さんがミャンマーで戦死した祖父の遺品の日章旗がカナダ人から返還されたことに感銘し、日本人遺族に日章旗を返還する運動を始めた。欧米人にとって敵国の旗は名誉の戦利品。一方、日章旗にある寄せ書きは無事を祈る家族の願いが込められており、違いを伝える活動も続けている。 https://mainichi.jp/articles/20230812/k00/00m/040/027000c?fbclid=IwAR0CzTXrOJeFMQ9x8rt0illzWYz9KuyMrOv3q3GQmOCHLjGUGYf-4rF7HCI