定年したら、退職金があり、年金もあります。
だけど、どっちも、働く人、生きる人を助けようという考え方が、どんどん薄くなっていっています。
退職金。
平均額は、いろいろな会社が想定額を出していますが、
大企業では2,000万円、中小企業で1,000万円なんていわれています。
大卒で、同じ会社に長く勤務したほうが金額が多いです。転職でキャリアップ、なんてことがいいことのように言われていますが、退職金に関しては、残念ながらそうとは言えないようです。
また、働く人の7割は中小企業で働いているので、要するに、日本のほとんどの人は1,000万円ぐらいしかもらえません。
ただし退職金は法的なものではなく、会社が定める制度なので、会社によっては退職金がなかったりします。
それともうひとつ。
退職金を単に会社が支給するのではなく、投資に回せ、という動きが進んでいます。
投資は、資金を「かけて」増やす努力をするものです。ギャンブルとは違うなんて言われていますが、確かにギャンブルはオーナーが必ず儲かる仕組みになっている一方、投資も、安定度は高いとは言いながらも原本の保証はありません。
だけど、入社して10代、20代の人たちに、会社は「自分で投資先を選べ」「これも勉強だ」、なんてドライなことを求めています。
つまり、長く勤めていても、「決まった額を支給するよ」、というわけではなく、「自分で増やす努力をしてね、あとはよろしく」、っということです。
要するに、会社は「あなたの定年後をそんなにサポートするわけではありませんからね」、っていうことです。
年金。
30-40年前は、「花の年金生活」なんて言われてました。
定年後は年金を使って悠々自適な暮らしができました。
だけど、当時、若い人が多く、老後の方が少なかったためにそういったことができていましたが、今は、人の寿命が延びたことと、子供がいない夫婦がふえたことで、人口のバランスが逆転、少ない若い人たちが、たくさんの老後の方を支える必要があります。
当然、これだと老後の方ひとりひとりにまわるお金は減るわけで、年金は減る一方になっています。
年金は貯金ではなく、若い人が老後の方を支える一方通行の制度なので、当然、若い人からみると、明らかに将来自分の年金が少ないことに対して、不満です。
更に、年金の支給開始時期が60歳から65歳まで延期されています。
このため、60歳から65歳までの間に収入が必要な場合は、働くしかなくなったのです。
「支給時期を遅らせた人には、たくさん年金を支給しますからね。長生きするかもしれないからいいでしょ」なんていいながら。
つまり、「自分の寿命もギャンブルの対象ですからね」ってことです。
高年齢者雇用確保措置、という制度ができました。
「定年を65歳未満に定めている会社は、65歳まで雇いなさい」、という制度です。
定年を65歳にするか、60-65歳まで雇用継続をするか、定年をなくすか、どれかにしなさい、ということが法的に決まっています。
その後、さらに70歳まで、という努力義務も求められています。
「寿命が延びたんだから70歳までは働きなさい」っていうことです。
当然、働く年数が増えるということは、税金とか保険とか、働く人が支払わないといけないお金(公的支出)が増えます。
一方、確かに、会社の中には雇用延長をするところも増えてきました。
だけど、ほとんどが正社員としての延長ではなく、「嘱託社員」としての採用。
嘱託社員は、月給制のアルバイトみたいなもので、年収は200万円ぐらいといわれています。
会社は長く働いてくれた人に敬意を表するわけでもなく、法に従う体裁をたもつために、勤務継続、ということを進めています。
つまり、定年後は、確かに働いて収入を得ることはできるけど、入ってくるお金はぐんと減るし、なのに支払うお金は引き続き、いろいろある、ということになります。
要するに国も「お疲れさま。いままでありがとう」という気持ちがあるのではなく、「生きて働く以上、国にお金を払い続けてね」というスタンスです。
外国に数千億円のお金をポンと提供するこの国が、です。
このように、一見、会社も国も、生きることを支援するような制度の中にはありますが、「人を守る、支援する」、という親切な方針には立っていないことがわかります。
これらは会社勤務の人の話ですが、個人事業の方々、病気やけがで働くことが困難な方々、そもそも母子家庭などで収入が少ない方々などは、もっと大変だろうと思います。
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こどもたちへ、若いひとたちへ