オフィスビルというのは、古くなったら建て替えればいい。
これは実に簡単な話である。ところが、分譲マンションはそう簡単に建て替えられない。
理由は、オーナーが何人もいるからである。オフィスビルや賃貸マンションというのは、基本的にワンオーナーである。持ち主が一人、あるいは一社なのだ。複数の場合でも、せいぜい数人か数社。
そのオーナーが「建て替える」という意志を持てば、あとは資金だけの問題となる。
仮に、そのオフィスビルや賃貸マンションの立地が、都心や近郊の不動産的評価として一等地であった場合、銀行が喜んで建て替えの資金を貸してくれる。
もちろん土地を担保に差し出さなければならないが、それでもマンションに比べれば建て替えは容易である。
それが、マンションの場合はそんなに簡単ではない。簡単でないどころか、かなり難しい。
そして、日本中の95%以上のマンションは、現行法上では実質的に建て替えは不可能なのだ。こう書くと、多くの人は不思議に思われるだろう。
104万戸あるマンションのうち建て替えられたのは300件。東京の都心を歩けば、新しく建て替えられているマンションがいくつもあるではないか、と考える人がいそうだ。
しかし実際のところは、2020年の4月時点において、全国で建て替えられたマンションは、準備中も含めて300件に満たないのだ。
これは国土交通省が把握している全国の旧耐震基準(1981年以前の建築確認基準)のマンションの総数である約104万戸に比べると、ほんのわずかでしかない。