かすみ草 サラマンダー マウス Part2 #ノベルちゃん三題
5月
4日
君がマウスをカチカチ言わせながら呟く。
「うん。でも、本当にいるとしたらおもしろくない?」
そう?と首を傾げる君に僕は笑う。
「例えばこのかすみ草だって、熱帯地方の
人々からしてみれば、伝説上の植物かもしれない。
そうやって考えてみれば、この地球上のどこかに
当たり前のように火の精霊がいたとしても、不思議じゃないだろ?」
あなたの言っていることはよくわからない。
そう呟いた君の、黒髪がさらりと揺れる。
眼鏡の奥の切れ長の瞳が、一心不乱に画面に向かい、
細くてしなやかな指が軽やかにキーボードを叩く。
(想像上の話には、興味がないってか……)
非常に現実的な彼女だけれど、僕にとっては、
手が届きそうで届かない妖精のようで。
彼女に触れたくてたまらない僕の手が、
あてもなく宙を掻いた――。