メーデー、狸、AI #ノベルちゃん三題
5月
4日
あなたは気づいてくれるだろうか。
わずかばかりの期待はまるで、
今にも割れそうな薄氷(うすらひ)のようで。
すがりつくこともできずに、
私は絶望の淵に沈んでいく。
AIを駆使した科学技術が発展する
世の中だというのに、
人間(ひと)が他人(ヒト)の心を
理解するのは難しくて、おぼつかない。
冷たい狸の置物が、
まるで私を小馬鹿にするかのように見下ろしている。
(ああ、死ぬのかな……)
そう思った矢先に、
頭上で何かが煌めいた。
それが何だったのか。
わかる間もなく、私は意識を手放した――。