「自惚れた衣を脱いで行きなさい あなたはタイシタコトノナイ 人間なのだから そのことを良く知ることです」 行き着くところは タイシタコトノナイ自分がいると 実感できる場所 其処から始める時 初めて風が囁くことを知る 自分のタイシタコトナイは 卑屈になることではなく 自分が純粋であることを知らない 純粋さをもつに等しい 自分のタイシタコトナイを知ると 進む先は無限にひろがり続け 驕ることない美しさの中にいて いつでも幸せが咲いている
それが何になる 君の小説は世間で多くのひとに読まれ 感動を与え名誉も手に入れたはず とても素晴らしいことなのに そんなことでは救われない と、私に怒って言った 小説が売れて何になると 君が言い切るのだから それ以上に重大なことがあり 困難な現実が押し寄せているのだろう 言葉を掛けることに躊躇した ひとりにさせてくれ ふたりを破ろうとする空間が囁く 君の小説は幻想な世界で神秘的だ 其処には現実から逃れるための 姑息の場所があったのかもしれない そしてひとを誘(いざな)う力が君にはあった しかし別に小説でなくとも良かったのだろう カタチに執着のない美しい姿だ もう君は小説という世界には行かない ひとくち飲んだコーヒーを置き 私が何処へ行くのかと訊くと 妹の見舞い、と言った