Bruceeeeee
11月
12日
夫とレース観戦に行くことになった。
わたしはMuranoを運転している。黒のMuranoさん。助手席にはBruceがいる。彼ははっははっはと言いながら、嬉しそうに前方を見ていた。夫を途中で拾うことになっている。
しばらく行ったところで、夫の姿が見えた。パス公と一緒だ。わたしは車を停め、夫と運転を代わった。
街の近くで自転車レースがあると言う。夫は時間が気になるようだったが、わたしはのんきに構えていた。開始時間までは充分、余裕がある。夫は早目に行って、レース前の色々を楽しみたいのだろう。
が、そのうち、夫の出すスピードが尋常じゃないことに気付く。ちょっとスピード出し過ぎだよ、と言うと、ブレーキがうまく効かないんだ、と言う。えーーー!?
夫は、ハンドルを切りながら、かなり広いraised islandに乗り上げ、車を停めた。そして、ここで待ってて、と言った。置いてきた自分の車の場所まで引き返したのち、戻ってくると言う。一緒に行くよ、と言ったが、いや、君とブルースはここで待ってて、と、パス公を連れて行ってしまった。
わたしは、しょうがないからここで待とっか、とブルースを撫でながら言った。ブルースは、はっははっは、と嬉しそうな顔をしていた。
と、何処からか轟々ともの凄い音が響き、ゴゴゴーーーーッという強風とともに緑色の列車がわたしたちのすぐ近くを過ぎて行った。わたしは思わずブルースを抱きしめて顔を伏せた。強風に吹き飛ばされるかと思った。なんでこんなところに、、と思う間もなく、また轟音が鳴り響き、遠くの方に同じような列車がこちらに向かってくるのが見えた。また来る!!
わたしはMuranoさんに乗り込み、エンジンをかけた。ブルースも助手席に飛び乗った。さぁ行こう!
危機一髪だった。
わたしはとりあえず車を走らせ、どこへ向かうべきか考えた。夫はわたしたちがレース場へ向かったと考えるだろう。そうだ、レース場で落ち合おう。
が、Muranoさんのブレーキが効かないことを思い出した。そうだ、あまりスピードを出さないようにしなくては。そう思って、ちらりと足元を見た。アクセルとブレーキ、どっちがどっちだったっけ?アクセル、ブレーキ、アクセル、ブレーキ、そう言いながら空で足を動かした。踵を軸にしてピボットを・・・。昔、夫が教えてくれたことを思い出す。いちいち踏み換えない、踵はつけたままで。そうだ、そうだ、こっちがアクセル、こっちがブレーキ、間違いない。でも今はどちらも踏まないほうがいい、スピードを出さないようにしなくっちゃ。
そんなことを思っていたら、長い上り坂が見えてきた。ここは少しアクセルを踏まなくちゃ・・・と進むと、今度は長い下り坂が来た。ヤバイよ、、、、スピードがどんどん増して行く。坂はずっと続いている。Bruceeeee, mommy is scared....そう言ってしまった後ですぐに、No worry Bruce, I got this!と言う。ブルースははっははっは言いながらわたしを見た。ブルースの美しい黒い瞳。
スピードがかなり出て、思わずブレーキを踏んだ。が、そこにはペダルがなかった。アクセルもなかった。足元にはもう何もない。そして、いつの間にかハンドルも消えていた。ハンドルだけじゃなく、メーターやらダッシュボードやら何もかもが消えていた。マイMuranoさんはのっぺらとした薄い肌色の中身のない箱になっていた。前方、遠くの方にレース場のゲートが見えた。ぶつかる!わたしはブルースを抱きしめた。
気付いた時、車は止まっていた。わたしもブルースも無傷だった。何が起こったのか、良くわからなかった。わたしは車から出て、辺りを見渡した。幾つものゲートに向かって、人々の長い列が出来ていた。夫はもう到着しているのだろうか。
その時、ブルースが軽やかに駆けて行った。ブルース、一緒にいて!そう言うのに、どんどんゲートのほうへ駆けて行く。わたしはブルースを追いかけた。ブルースは、チケットボックスの上まで駆け上がり、そこに座ってわたしを待っていた。そこから動かないで!そう言って、わたしもチケットボックスを登った。列に並んだ人たちが物珍しそうにわたしたちを見ている。手を叩いている人もいる。Don't move, buddy!と、ブルースに声をかけている人もいた。
わたしはやっとの思いで上がり、ブルースを抱きしめた。なんでこんなことしたの、ぶるぅしぃ、、、
チケットボックスの中から係員が出てきて、そこから降りるようにと言った。わかってますよ、今降りますよ。そう答えたが、下を見て眩暈がした。高い、、、かなり、高い、、、、!
わたしを見ていた係員は口調を和らげ、降りられるかい?と訊いてきた。
降りられません、、、、
係員はやれやれといった顔をして笑い、少し待ってなさい、と言った。そして、ロープを持って戻ってきた。ロープを投げるから、それに掴まって降りなさい、と言う。
いや、無理でしょう、そんなロープ1本で、、、梯子車とか、そういうので助けてください、、、そもそもロープをどこに巻きつけるの?無理でしょう、無理に決まってる。
遠く、夫がパス公と一緒にこちらを見ていた。
ちょっと、そんなところにいないで助けに来てよ、と思う。
ブルースはやんちゃそうな顔ではっははっはと息をしていた。やたら誇らしそうに見える。
ブルース、、、困ったよ、ブルース、、、、なんてことをしてくれたんだ、ブルース。
・・・
昨日の明け方の夢。
夫に話すと、Bruce is gonna kick Pascal's butt!!と笑っていた。
そうだ、もしブルースがいたら、パス公の態度もかなり違ったろう。
夢の中でパス公に何かを伝えたかったのか?夢の中のパス公は終始ダディと一緒にいて、じーっとわたしとブルースを見ていた。パスカル、何か伝わったかい?ブルースはね、それはそれは素晴らしい犬だったんだよ。最高のオゥシー。特別スペシャル。ブルースに会って、それがわかったでしょう。
夢の中のブルースは、4歳くらいだった。やんちゃで、目がキラキラしていて、少しカールした黒い毛は艶々としていた。弱っているマミィのために、元気な姿を見せに来てくれたんだね、ブルース。ありがとう、ブルース。