10/22/2021 去る10月19日のこと。 仕事から帰って来て一息ついていたら玄関のベルが鳴った。 宅配かなと思ったが、ドアの窓越しに人影が見える。何かの寄付だと嫌だな〜と思いつつ、ドアを開けてみると、 Hi, I'm your neighbor, xxxx. と手を振りながら、女性が笑顔で言った。 一瞬、どなた?と思ったけれど、すぐに、ああ、と思い出す。我が家から2軒目のお隣さんだ。 でも旦那さんとは何度か話したことがあったが、奥さんのほうは今回が初めてだった。 彼女のことは遠目に見かけて挨拶する程度で、実をいうと名前も知らなかった(旦那さんの名前は知ってる)。 「いきなり、ごめんなさい。ちょっと訊いてもいいかしら?あの、お宅のケーブル、問題ない?うちのケーブル、機能してないみたいでTVが見られないのよ。」 あぁそういうことか、と思いながら、答える。 「それは大変ですね、でもうちはケーブルじゃなくてディッシュなんです。」 「えっ、そうなの、、、ケーブルじゃないのね、、、うちはケーブルでxxxxx(ケーブル会社名)なんだけど、仕事から帰って来たらTVが見られなくなってて、、、それでそちらはどうなのかな、うちだけなのかな、って思って来たんだけど。」 エミリー(一応、仮名です)はドアの向こうに見える我が家のTVをちらちら覗きながら、しきりに気にしていて、 「あなたのところ、Jeopardy!は見られる?見てる?」 と言う。 この超有名な番組、わたし的には知ってはいるけどいつも見ているわけではなく、たま〜に見る程度。それも夫が見ているときに、一緒に、程度だ。自分から見ることは、ない。 と、いったことを伝えると、エミリーは、そうなの、、、ケーブルがいつ回復するかわからなくて、、、わたし、Jeopardy!大好きでいつも見てるのよ、、、と言って、わたしの背中越しに見える(のだろうね)TVをしきりに気にして体をゆらゆら動かしている。 このとき、我が家のTVはサッカーのゲームになっていて(夫が出かける前に見ていたのだと思う、録画仕様になったままだった)、なんとなく話の流れから、つい、「さぁ何時からなのかもわからないけど、、、調べてみますか?」と、口にしてしまった。 するとエミリーはぱっと顔を輝かせ、「いいの?お願い!わたし、本当に本当に本当〜にJeopardy!を見ないと気が済まないの!」と言う。そんな彼女の勢いにつられて、わたしはつい、「じゃぁ調べてみます。そこではなんですから、中に入りますか?」と、言ってしまった。 エミリーは、「ありがとう!嬉しいわ!!お邪魔します!!」と言って、中に入って来た。 しまった、、、家の中、あまり綺麗じゃないじゃん、、と思ったが、もう遅い。「なんだか散らかってて恥ずかしいけど、、」と(今更ながらに)言うと、「全然!まったく気にならないわ!」 そこで、夫が見ていた(かつ録画中の)番組をそのままに、ガイド?にして、番組表のようなものにしてみた。エミリーは、Jeopardy!のチャンネルは〜と説明し出したが、いや、ケーブルとディッシュではチャンネルNo.も違うと思う、と言って、とりあえず一番最初のチャンネルからチェックしていく。すると、3つ目か4つ目のところで、Jeopardy!という枠が4時からあった。すかさずエミリーは、There!!!と歓声を上げ、「ああ、あなたのところでは見られるのね、、うちと同じ、4時からだわ。ああでもうちはケーブルだから見られないのかしら、、いつ回復するか、わからないから、、、、」と言い始め、馬鹿なわたしは「じゃぁ4時になってももし見られなかったら、うちで見ますか?」と言ってしまった。エミリーは、えええええ?いいの?????と、大喜び。そして、「こんなのクレイジーよね、でも本当にいいの?わたし、本当の本当に4時に戻ってくるわよ」と言う。このとき、3時45分。んんんんんんんん、でも、口にしてしまった以上、今更「いややっぱりやめときましょう」とは言えない。「良いですよ」と言ってしまった。エミリーは、「ありがとう!あなた、良い人ね!本当に、嬉しいわ!ねぇ、あなた、ワインは好き?」と言う。好きですよ、でも、そんなことは良いですから、と答えたが、「じゃぁ美味しいワインをお礼に持ってくるわ!きっとよ!」と言って、あっという間に出て行った。 エミリーが行ってしまってから、ちょっと呆然としてしまった。 そして、これってどうなのよ?と、頭の中ぐるぐる。いや待て、そうは言っても来ないかもしれない。ケーブルが回復しているかもしれないし、何より彼女も話の流れでああ言っただけで、冗談だったのかもしれない、いやきっとそうだ。 と思いながら、もしエミリーが来たら・・・と考えるのもおかしな気がして、特別何をすることもなく(というか、補習校の授業準備でPCに向かっていたけど)やり過ごしていたら、 ピンポーン。 4時ジャスト。 本当に来たーーーーーーーーーーーーーーーー!! 慌ててドアを開けると、赤ワインのボトルを持ったエミリーが「ありがとう!本当にきちゃった!」と言って、笑顔で肩をすくめて見せた。 うーわーーーーー本当の、本当に、来たーーーーーー!と、心の中で思いながら、「わはははは。どうぞ、お入りくださいな」と、招き入れ、慌ててサッカーからJeopardy!にチャンネルを変えた。 エミリーは、赤ワインのボトルをわたしに渡し、既に始まっていた番組(1分か2分ね)を気にしながら「これはあなたにお礼。美味しいワインなのよ。今回は本当にありがとう!」と言って、持ってきたショッキングピンクのショルダーバッグを適当なところに置き、ソファに腰掛けた。そして思い出したように、「そう言えばあなた、ワイン・オープナーとか持ってる?」と言う。 「もちろん、あります。でも、あなたは何を飲んでるの?」と訊いてみた。というのも、彼女はサーモマグを持って来ていて、何かを飲んでいたので。 「あぁこれ、これはただのアイス・ウォーター」 「なんだ、飲んでないのね。じゃぁいいわ。」 「駄目よ。飲んで欲しくて持ってきたの。飲んで!ワイングラスあるならわたしもいただくから」 このとき、16時5分。 なんだか、力が抜けた。 笑える。なんなんだ、この展開は。もう飲まないと付いていけないではないか。 ということで、いただいたワインを開けました。 そして、ワイングラスに注ぎ、エミリーに手渡し、二人で乾杯。 ついでにチャチャチャッと、クラッカーにチェダーチーズ、ビーフスティックなどを出す。 「えええ、いいわよ〜気を使わないで〜」 なんなんだ、この展開。これは奇妙だ。奇妙過ぎる。こんなことってあるのか。 わたしたちはこの後、Jeopardy!を見ながら(エミリーはしきりに誰が現チャンピオンで、うんたらくんたら説明していた)、お互いの自己紹介をあらためて行い(わたしの名前も知らないだろうと思って、名乗った、スペル付きで)、お互いの旦那の話もして(エミリーの旦那さん=ルーク・仮名、わたしはルークに除雪作業でいつも手伝ってもらったり、というエピソードとか)ワインの助けもあってけらけら笑いながら盛り上がった。 エミリーは、しきりに「あなたって面白い!」と言っていた。そうか? Jeopardy!は30分番組なのだが、その後も45分くらい、いた。 開けっぴろげな人で、結構、色んな話をした。意外だったのは、わたしより年下だったこと(!)というか、自分、意外と歳いってるのね、と思い直す始末。笑 この話を翌日、職場でしたら、「信じられない!!!」と、同僚たちにバカ受けだった。 「あり得ない。わたしなら絶対にうちに入れたりはしない。」 という意見が殆どだった。 まぁそうだよね。わたしだって、そう思う。 なんで誘ってしまったんだか、、、、!! ところでこのとき、夫は犬たちと一緒に出かけていた。 もしかしたらエミリーが来るかもしれない、というときに ー今Dog Parkにいるけど、帰りに何か勝ってきて欲しいもの、ある? と夫からtextが来た。 ー何も要らない。それより早く帰って来て。エミリーがうちに来る、って言ってる。 ーエミリーって誰? ーうちの近所のルークの奥さんだって。ケーブルが駄目になっててJeopardy!が見られないから、うちで見たいって。来るって。 ーあぁ、そうなんだ。 ーJeopardy!4時からなんだって。早く帰って来てよ。 ー了解。 そう返事した夫は、ゆ〜っくり犬たちを(必要以上に)遊ばせ、5時15分過ぎ、ちょうどエミリーが「そろそろ帰るわ」と言って、我が家を出ていくまさにその時に帰って来た。 夫の車がガレージに入って来るのを二人で眺め、エミリーは車から出て来た夫に「お邪魔してました〜ありがとう〜」と言った。 夫は、「楽しいワインを飲んだようですね」と言って、笑っていた。このやろめ! 「ルークによろしくね!」と言って、お別れした。 エミリーはショッピングピンクのバッグをクルクル回しながら「わかった〜。ありがとう〜」と言って、帰っていった。 ところでエミリー、犬は苦手だと言っていた。 「犬が好きな人のことは好きなのよ。ただ、犬はあまり好きじゃないの。」 素直な人だ。 しかし。 もし、犬たちがいたら、エミリーはJeopardy!をうちで見ただろか?どうだろか? 夫にtextでエミリーのことを伝えていなければ、夫はとっくに犬たちと帰宅していただろうなと思う。 彼に伝えたのは間違いだった。いや、良かったのか?