忘れもの3種
1月
13日
授業があるというのに肝心な教科書もノートも筆記用具もすべて持って来なかった。
どうしよう、、、これでは生徒に示しがつかない、、、どうするか、どうにかなるか?と、考えていたら、課題の返却もまだだったことを思い出した。返却どころではない。添削もしていない。しかも2週分。これでは格好がつかない。なんとか教科書だけでも・・・と考えていたら、友人がいたことを思い出した。そうだ、彼女のクラスも国語であの小冊子を使っている筈。それだけでもいい。今日の授業はあの小冊子の内容にしぼろう。こうしてわたしは、友人のいる教室を探し始めた。
講堂の中をあちこちを急ぎ足で駆けまわり、ようやく友人を発見。かなり大きなクラスらしい。他の人たちと談笑している友人に声をかけ、例の小冊子を貸して欲しいと頼んだ。「いーよ、これでしょ!これ、結構おもしろいよね」そう言って手渡されたものは、、、、うちのクラスのとは違っていた。そっか、、、こっちの題材にしたのか、、、、がっくし。何も持たずに来たというわたしの話を聞いた友人は、全然問題ないという顔で、「mならなんとかなるって!大丈夫!生徒に話させればいーじゃん」
そう簡単には、、と思うが、時間は迫っているしもう後の手はない。仕方がないので自分の教室にトボトボと向かった。生徒たちの騒いでいる声が遠くから聞こえてきて、あああああ、なんか絶対にバレるし、馬鹿にされて授業どころじゃないだろー、、、と思う。なんで講師になったんだろ?向いていないのに。自分を過信し過ぎたのだ。後悔の嵐の中、ちっぽけな頭の中では授業の組み立てを必死で考えている。
・・・
階下のbathroomのリフォームを考えている。フロアを全面的に換えるのだ。そういうわけで、うちの人間はもっぱらメインのbathroomを使うことになった。それが、だ。
その朝、メインのbathroomのトイレ周りの床がべこべこで今にも抜けそうな、変な感触になっていた。
「これ、酷いよ!!」
慌てて夫を呼ぶと、夫が足踏みをしながら、ふむ・・・これじゃ、この床も換えるしかないかな、、、と言った。えーーーなんでいきなりこんなことになったの???訳がわからない。でも、考えようによっては良いことかもしれない、と思う。階下の分と一緒にリフォームだ。「犬が間違ってここに落ちないようにしとかないとヤバくない?」夫にそう話しかけたが、彼はもういなかった。わたしは犬が入れないようにドアを閉めるべきだよなと思い、ドアをきっちりと閉めた。
キッチンに戻って珈琲を挿れていたら、パジャマ姿の息子(わたしに息子はいないのだけど、夢の中では息子がいた!10歳くらい。見た目はというか、まさに炎炎の消防隊に登場するキャラのナタクくんだった)が、慌ただしく野球道具一式を担いでガレージへと出て行った。何事かと見に行くと、うちのガレージに青いマイクロバスが(わたしのゴルフの横に)停めてあった。どこからこのバスは来たんだ???と思うが、息子はためらうことなくマイクロバスのハッチバック(?)を開け、そこへ道具を投げ込んだ。そしてまたドタバタと自分の部屋へと戻って行った。寝坊したんだな、と思いながら、「メインのbathroomは使えないからマミーたちの寝室のを使いなさいよー」と、声をかけたのだが、ちょうどその時、うちの前にワゴンがすーっとやって来て、しばらくそこに停まってから、ゆっくりとまた走り出した。それで、なぜか、あっ!と思う。「ちょっとーーーねーーーあの車、あなたのベースボールチームの人たちじゃないの?」
わたしの声を聞いてやって来た息子は、その車を見るなり、あっ!(それから、ここには書けないような悪い言葉を発して)、荷物を入れる車だーーーと騒ぎ出した。寝ぼけてて間違ったらしい。すると、夫がいきなり登場し、追いかけるぞ!と言って、マイクロバスから道具一式を取り出し、息子と一緒に大声を張り上げながらその車を追いかけて行った。呆気にとられるわたし。追いつくわけないでしょ、という気持ちよりも、あの夫があんな大きな声を出してあんな迅速な行動を、、、、と、心底、驚いた。
しばらくすると、夫と娘(ここでナタクくんから娘に変わっていた!)がにこやかに戻って来て、間に合った!と喜んでいた。夫は娘の頭をくしゃくしゃにしながら"That's my girl!"
わたしも、よかったねー、と言いながら、ガレージのマイクロバスは一体なんなんだ・・と思う。でも、夫も娘もそのことをまったく気にしていないので、まーいっか、と珈琲を飲んだ。それよりあの床を早く直してもらわないと。
・・・
朝、慌てて家を出た。とにかく急いでいた。理由を思い出せないが、取るものも持たずに家を出たのだ。
何気なくコンビニに寄った時、バッグを持って来ていないことに気付いた。お財布もカードも何もない。ということは、何も買えない。すごすごと店を出て、家に戻ることにした。
大きな病院の入り口にいる。
うちのマンションに入るキー(カード)もないので、隣接しているこの病院から入ることにしたのだ。うちのマンションとこのメガ病院は最上階で繋がっている。そこまで行けばキーなしでも入れた。筈。
ホールに並んだ沢山のエレベーターの前で待っていると、そこに友人のエミコ(仮名)が現れた。どうしたの?と訊かれたので軽く説明すると、「m、今日は日曜日だからこっちのエレベーターは使えないよ、ここは勤務者専用」と言われた。そうなのか、、、、そして彼女から「あっちが休日用」と教えてもらったところへ行く。そこには大勢の人がいた。
が、皆、それぞれカードを持っている。あああああ、だった、、、、エレベーターも有料だった、、、と思い出す。がっくし。
エレベーターは5つほど並んでいたが、わたしにはどうすることも出来ずに、ぼーっと人の流れを見ていると、ある女の子に「どうしたの?」と聞かれた。カードを忘れたから乗れないの、でも、どうしても一番上の階まで行きたいのよ、そう答えると、「あのエレベーター!まだドアが開いてる!押し込んであげる!!」言う。あんな時にはね、もうカードを挿入しなくても大丈夫なんだ、わかる?
見ると、そのエレベーターは、その昔、東京で見たような発車直前の電車のようだった。扉が閉まる前に駅員さんが押し込んでいたような・・・・いやいやいやいや!!「大丈夫。わたし、階段を使うから。自分の足なら、カード要らないでしょ」
女の子から最上階って何階だっけ?と言われて、112?だったかな、、、と思い、目眩がした。
でもわたしには考えがあった。小児病棟だ!その病院の小児病棟まで行けば、そこから先は普通のエレベーターに乗り込むことが出来る筈。勤務者のふりをするしかない。
そして、小児病棟へ向かう階段へと向かった。
それは、厳密には階段ではなく、梯子だった。赤や黄色や青やピンク、紫など色とりどりの梯子だ。見上げると、かなり長くて高い。しかも、90度。オブジェにしか見えないセキュリティー用。今までこの梯子を上がった者はいないと聞いた。でも、ここしかない。
わたしは、1段1段、下を見ないようにしながら上った。何も入っていないポシェットが揺れる。バカだ自分は。怖い。すごく怖い。けど、カラフルな色に集中するように努めた。明るく行こうぜ。
ようやく出口(入り口?)が見えた。小さな椅子が置かれてある。それがこの梯子の蓋?になっているらしい。その椅子を持ち上げて横にどかすのが至難の技だった。でも、ここまで来たのだ、やるしかない。ちらりと見えた下に、くらくらと目眩。見ないようにしていたのに、見てしまった。でも、とにかく椅子を少しずつずらして、それから両腕の力をふりしぼって、懸垂ってやつ、これまで完璧にできたことなんか一度もないのに、でもわたしはなんとかそこのフロアに座ることができた。やったーーーー。
精魂尽き果てたわたしの姿を、小さな男の子が興味深そうにじーっと見ていた。その子に気付いたわたしは驚く気力もなく、「ハァーイ」と、弱々しい声を出しただけだった。男の子は、目を輝かせて大きく笑った。すごいよすごいよ!!そう言ってる顔だった。しばらく休んでから、その子に言った。「わたしね、おうちに帰りたいの」
椅子を元のところに戻し、窓際にあったソファに腰かけた。窓からは、小型の列車がゆっくりと走っていくのが見えた。小児病棟の周りを走っている。木や、鉄橋なんかもあった。家も見える。とても良く出来ている。心和む風景だった。偽物の模型だけれど、お金をかけるとこんな風に出来るのか、と感心してしまった。わたしが上がった場所は、小児病棟のてっぺんのいわばプレイルームのようなところなのだろう。かなり広い。そして、とても居心地が良い。遊べるし、休める。
男の子は、わたしの手を引いて、歩き出した。何も言わないのは、そういう病気なんだろうな、思って、わたしも何も聞かなかった。エレベーターまで連れてってもらったら、そこから最上階へ行って、そしてうちのマンションに繋がる通路を探して・・・。
・・・
忘れる、という夢が多過ぎる。
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