分離不安、虐待
2月
8日
休みだったが、5時半、Cの「はっはっ」という音無き声で起こされた。思いの他ぐっすり眠れたのかもしれない、わりとすんなりと起きれた。
Dのことを書いておく。
先日の一泊旅行で、彼の極度のanxietyが明らかに浮き彫りにされた。Dは元からドライブを好まない。公園に行くにもどこへ行くにも、車に乗せるときゅんきゅんと絞るような声で啼き、ときに吠える。夫のピックアップだと後方から前へ乗り出して来て、運転している夫に頭を押し付けたり助手席のわたしにピトッとくっついたりしようとする。そのまま動かないのならそう問題ではないのだが、じっとはしていられない。わたしの車だと、バックシート(SUB荷台の部分)でうろうろくるくる廻り、息が荒くなって非常に落ち着かない。一緒にいる犬たちの間でぎこちなく動き回るのはDだけだ。
今回、片道3時間のドライブは初めてのことだった。3時間はどうだろう、、、という危惧はあったが、そんなに気にはしていなかった。啼いても最初だけだろう、じきにあきらめて落ち着くだろう、そう見込んでいた。が、それは甘かった。まぁーそんなに啼いたら喉が渇くでしょう!ってなくらいに、啼いた啼いた。そして、吠えた。
大丈夫だよー、となだめてもダメ。Dxxxx!いい加減にあきらめなさい!ピシャッと言い聞かせてもダメ。本当に困った。いや、困ったといういうよりも、かわいそうでたまらなかった。こんな近くにいるのに、どういうことだろう・・・分離不安というのともまた違うような気がする。では、甘えているだけか?それはあり得る。が、ピックアップだとすぐ傍でちょっと撫でてあげたって変わらなかった。肌をぴたりと寄せてもダメだった。ということは、人間との距離が問題なのではないと思う。
もしかしたらドライブ自体が好きじゃない(というか嫌い)とか。或いは、過去に(彼はシェルターからの保護犬だ)車で痛い思いをしたとか、元の飼い主に車でどこかへ連れて行かれて捨てられたとか?彼の受けた虐待の一環のひとつだったのでは?
色々と想像を巡らせる。
もうひとつ、思ったこと。今回、Bが一緒じゃなかったことも、彼にとっては苦痛だったのだろう。CとDだけ、というのは、彼にとっては大変な苦悩を伴ったのかもしれない。もしかしたらそこにBがいたら、それだけで、少しは安心できたかもしれない。Bの持つリラックスしたエネルギーに影響されて。
それから、旅行というイベントは彼にとっては初めてのはじめてで、日常から切り離されたことで、未知なる不安を引き寄せたのかもしれない。
ホテルでも大変だった。とにかくガス抜きをして落ち着かせよう、と、散歩へも連れて出たのだが、その後ジャグージへ行く事はとうとう出来なかった。家じゃないから恐ろしかったのだろうか。この知らないところへ置き去りにされる!とでも思ったのか。
とにかく、Dの持つ「不安」の深さを見たような気がする。これからも、腰をじっと据えて、彼を安心させるべく、暮らしていかんとね・・・今日は夫とそんな話をした。
ところで、明るいことがひとつ。それは、Dにとって、我が家は"Home"である、ということ。思えば、彼を引き取ってきた当初、わたしたちは家を留守にすることが出来なかった。ほんの短い時間でも、彼は吠え、啼き、そして、扉を開けようとでもしたのだろうか、前脚でガリガリと酷く傷つけた。破壊行動は扉だけに絞られたことは、ある意味ラッキーだったかもしれないけれど。
ホテルの部屋は彼にとっては居心地の悪い粗悪な空間だった。彼にとって安心出来るのは、我が家だけなのだ。
そんな話をしながら、こそばゆいような嬉しさがじんわり。でも、どこへ行ってもわたしたちは君を置いてきぼりになんかしないし、いつだって君のいる場所へ戻ってくるんだよ。それがいつの日か彼の心に、身体の細胞ひとつひとつに、しみわたっていくと良いなぁー、と、心の底から願う。
ちなみに、Cはドライブは全然平気みたいだった。たいしたモンだ。(Cもフォスターファミリーを介しての保護犬)
今日は午後2時半から職場のミーティング&インサービスがあった。インサービスのほうは、DVなどによるシェルターサービスの紹介だった。我がコミュニティーにもあったのか!?と、驚いた。講師の女性はとても良い感じだった。24時間サービスのホットラインがあると言う。身近にこんなサービスがあったとは思いも寄らなかったのだが、でも、考えてみれば当然のことだよなぁ、とも思った。そう言えば、一昨年、初めて自分の担当医(女医)を決めて診て貰ったとき、様々な質問の中に、「家庭内での暴力に脅かされていることはないか。身体的、精神的、経済的、社会的な暴力、たとえば・・・」と、詳しく優しく、訊かれたのだった。この国の、このようなシステムに感心するとともに、切ないような悲しいような複雑な気持ちになったことを思い出した。
今日の講義で特に印象に残ったことを書いておこう。
「わたしたちは被害者に、『なぜそんな人(加害者)と一緒にいるの?その人からは離れればいいのに』と、よく言います。でも、そうではなく、こう言うようにしましょう。『どうして彼(彼女=加害者)はそういうことをするのだろう?そんなことは絶対にあってはならないことなのに。どうしてそれを続けるのだろう』と。」