例年の花火が鳴っている ずいぶんと疲れているようだ 身体が動こうとしない 布団から出られないでいる 近い将来、遠い将来 不安と希望がごちゃ混ぜになり 重たい気分をどうにかしたいのだが 優っているのは怠惰なのだ それでも空腹には耐えられず 冷蔵庫に向かったが これといって満たす物がない 気だるい身体はコンビニへ向かわせる 花火の音は大きくなる そして広がってゆく光 今年も花火を見た 大袈裟だが今年の夏も なんとか生きていると響いた
ぼくはリレーの せんしゅだった ひとりきょうしつで まっていなさい せんせいにいわれた なんだかさみしくなった おしっこがでた ぼくはすずきくんの たいそうずぼんをかりて はしった いちばんで バトンをわたしたよ ぼくはビニールにはいった パンツをもってかえった
透明人間は見えないが 僕は光の屈折で見えてしまう 全身が水で出来ている水太郎です おしっこをしても臭くないし 頭の中もご自由に見てください って、感じになっています ただ困ることがあります 喉が渇いたからキスをするふりして 僕を吸わないでください 君が僕でいっぱいになりますから
彼にとって それは暴力に近い 衝撃だったかもしれない たぶん 私を酷いヤツだと 思った事だろう でも 喧嘩してでも 言わなくてはいけない 時と場合がある わかり合おう なんて思わない それぞれの 生き方があるのだから 自分を正当化などしない 彼にとって 悪になろうとも そんなことはどうでもいい 言わずにいるのは 簡単だが 言わなくてはいけない 彼と私がいる
兄には勝てない 体力の差は大きかった 弟の僕は 4の字固めでギブアップ カウントがスリー入って負け カンカンカーン ある日 悔しくて兄のことを抓った 反則技とわかっている でも勝ちたくて それが乳首にヒットしてしまい 痛いと兄が涙を流した 僕はブッチャーになってしまった
たぶん 僕はまだ生きている だけど もしかして この日常がこの世ではなく あの世ってこともあるかもしれない もし僕が幽霊だとしても 魂は何かをさせているのだから フラフラと流れてゆく あなたに僕が見えていますか 最近は誰も声をかけてくれない 僕は寂しい
バスから しかめた顔が連なって降り 太陽は、どうだ参ったか と、言わんばかりに燃えている バスに乗り込む俺はひとときの憩い エアコンの吹き出し口が 神さまに思えてしまうくらい 有難き幸せだ ああ、このまま涼しさの中で ずっといたい爽快感 しかしそんな時間は短いもの 液晶画面から気温の数字が飛び出す なお溶け出して行く気力 降りるバス停が近づいてくる ああ、暑いをこえた狂った暑さ しかめた顔から異常な夏が 身体を蒸発させようとしていた 電車のエアコンが効いた オアシスへの綱渡りをしながら この夏の行き先は 秋へ繋がっていると思うしかない
米の不作な年があった ご飯にありつけない たまたま米屋の店頭に積んであった 値段が高騰した米を買おうとしたら あなたうちで買ってなかったでしょ そう言われて販売拒否された あの言葉は忘れない ありつけた輸入米を食べた パサパサしたご飯を知り 怒りを鎮めようとした
足を鍛えていると言って 鉄下駄を履く友だちがいた ブランコでの靴飛ばしにも挑戦した 彼からみんなは遠く離れた そんなに飛ばないよ そう言った彼の頭に鉄下駄が落ちた なあ、飛ばないだろ 彼は涙を流しながら無理に微笑む そして がらん、ごろん、がらん と、彼は消えていった