さいとうさーん 呼ばれて振り向きながら返事 職場で三人のさいとうさんが返事 そっちのさいとうさん 俺は そっちのさいとうさんか〜い でも用のなかったふたりのさいとうさん 去ってゆく背中がちょっと寂しそう そしてくだらない優越感で 俺はそっちのさいとうです と微笑むのであった
自分にとって ひとからクレージーって クスッと笑われるくらいがいい ノビノビとやらかしている らしさを受け入れられた感が とっても幸せなんだ みんなそれぞれ だけどクレージーと ひとを怒らせてはいけないんだ らしく生きるのにも 相手あってのことなのさ
青空に微笑みを感じ 通り過ぎようとする雲は流れ 僕は背を逸らしたまま止まって その身体は通行人の掌で叩かれ 逃げ場所のない声は 僕の空洞に揺れながら籠っている 捨てれない日常が飽和したのち 望んで景色は動かない 僕は駅前の隅で 詩を書く人という銅像になった もう言葉が必要ではなくなり 言葉以前、言葉以上の存在 緑青を疎らに纏いながら 微笑みを真似ては語り出し 声にならない言葉を響かせ 通り過ぎる不条理に 納得しながら今日も止まっている
季節の香りを合わせ 聞いてみるのは薄紅か本紫か 進む進む 我ら馬が雑踏を潜り抜け ひとの言葉を雲の上に 清めた身体は匂いを包み 被せた右手の隙間から聞く流す 再び聞く流す 進む進む 五感から喜びを醸し出し 勝負はすでに流れた香りの中
職場に八十歳を過ぎた方が フルタイムで元気に働く方がいる 何か秘訣があるのだろうか それにしても凄い時代になったもんだ 生涯、働けるのならこんな幸せはないだろう 生まれもった身体や生活習慣、精神の違いだろうか いったい老人とはどんな人なのだろう 実年齢はもはや関係なさそうだ
どんな生き方をしたいのか 一度の人生、もちろん二度目はない 生活を見直す時がきた 住む場所、食べる物、着る物 流されている日々に 今、立ち止まり考えてみる クラクションが鳴り響く この街ではない 楽しく時間をかけた料理を 食べていない とりあえず着ている服に 自分を隠して そして、仕事、コミュニティ、詩 どんな生活をしたいのか 何者であろうとしているのか 何を感じたいのか 今、想像できる自分がいない それは流され過ぎていたからだ きっと何処かにいるはずのホンモノ さあ、環境を変えよう
君と僕の間は宇宙 その空間がなくなるくらい くっついちゃったら 世界は幸せに広がって 君の中にある僕の宇宙 僕の中にある君の宇宙も くっついちゃったら あらまあ、ひとつの世界に 僕らの世界をぐるぐると回して くすくすと笑いながら 宇宙に浮いている
生まれたくて 生きたくて 彼処まで来たのだろうか 死にたくて 生まれて来たのだろうか いずれみんな死ぬのだから ひとはそれほど強くないから 時を早めてしまうこともあって 僕は君の思いを何一つ わかってやれなかったんだ でも君には生きて欲しかった それは僕の我儘なのだろうか
映画を観終わった時 希望を持ったり、憂鬱になったり 製作側でなく与えられている立場に 悔しいと思ったり 色んな感情が日常に混ざり込む 僕は詩を書くことから離れたい時がある そんな時にはたいてい映画を観る タブレットでビデオを 詩は書かずにいられないから 書けなくなるという心配はない 集中するとどっと疲れてしまうから 息抜きのつもりで映画を観るが 大勢の魂が入った作品からは 刺さるメッセージの強さにやられてしまう 詩を書くことは自営業みたいで ハングリーだけど多少の自由はある 意見の食い違いなどの煩わしさはなく 孤独な作業は楽しいと厳しいがある 所詮ひとりの僕はまた詩を書く 映画の誘導的な強引さの真逆も行きたい 自由さだけは揺るぎなく 表現できるのが詩なのだから そこがとても好きだ
ふとした日常の四角から I was born to love you 鬱陶しいほどの愛の叫びが 青空に白い一本の雲となり 君へ真っ直ぐに飛んで行く 愛は私たちの孤独を繋ぐ I was born to love you 聴いてしまえば純粋が蘇り この鼓動はすべて君のため 愛するために私は生まれた