ミャンマーで戦死した日本人兵士の日章旗が、持ち帰った英国兵の遺族から79年を経て、返還された。
大阪市住之江区の大阪護国神社で14日、各地で見つかった日章旗の持ち主を探して返す米国のNPO「OBONソサエティ」による慰霊祭と返還式があった。
返還されたのは、元英国通信兵の遺族が保管していた、岡部辰美さんの日章旗。岡部さんは、多くの兵士が飢餓や病気で亡くなったインパール作戦に参加し、1945年6月にビルマ(現・ミャンマー)で戦死したとされる。遺骨は見つかっていない。
実家が営む京都市の洋服店に勤めていた。38年に歩兵として中国などに送られ、2度目の召集で帰らぬ人となった。30歳だった。
日章旗には、岡部さんの名前があり、洋服店の従業員らと思われる人々の名前が寄せ書きされていた。
受け取った長女の芙佐子さん(86)は「亡くなった母の墓前で見せ、仏壇に供えたい」。三女の蓉史子さん(79)は「皆さんに助けられながら過ごしてきた。父の遺品を見られてうれしい」と話した。
遺族捜しに協力した大阪府遺族連合会の岡倉三郎会長(88)は「紛争で今この瞬間も罪のない命が失われ続けている。戦没者遺族にしか語ることのできない戦争の悲惨さ、平和の尊さを一人でも多くの方に伝えたい」と語った。