認知症の人の部屋は、驚くほど整然としていた。 住人はおやつで外に出ていたが、ベッドにはピシッとカバーが掛けられ、棚の上に置きっ放しになっている物はなく、床にはチリ一つ落ちておらず、広々としたバスルームは、洗面台も、トイレも、そして、バリアフリーになっているシャワーも小奇麗で、置いてあるシャンプーやせっけんにいたるまで、曲がっているものがない。 あまりにも整然としているので、ふと、チェックインのあと、初めて自分のホテルの部屋に足を踏み入れたときのような感覚に襲われたほどだ。