自分が何者かも分からず「放浪」していたころ。中村書店の思い出・・・
4月
22日
中村書店をつくった中村三千夫さんは70年代初めにはすでに亡くなっていました。
棚は残っていた筈で、良子夫人が、こどもを育てつつ店を守っていた。中村三千夫さんが亡くなったのは、一九六八年八月十七日。
夏のまっさかり、恵比寿にあった古書市場で、市のたっているただ中であった。
中村さんが、すすめていた共同目録「雲の会」第一号の原稿を持って、市にやってきた、その日、その場所。
―山帖を書いていた私の後ろの椅子に座って居た時、突如鼾をかき昏睡。其後意識を回復しなかった。―
亨年四十六歳。
中村三千夫。大正十一年七月十一日生まれ。西暦ならば一九二二年。生まれたのは神奈川県横浜の新羽というところ。
実家は素封家というべきなのだろうか、その地域の地主であり、《うわだいの中村》と呼ばれていたそうだ。《うわだいの中村の次男坊》が渋谷の中村といわれるようになるのはずっとあとの話。