秋の広場
11月
28日
壊れた カタツムリの殻の水浴び
おはよう
レールに光る ヤモリの夢の轢死
裸の背をかけのぼり
あおむけに影はたおれて
てのひらの乳房が
寒気に立つ方角へと
魚たちがまつげを叩いていく
何をなして
ここまで来たのか
人でなしの言葉でうろついて
秋がきても冬がきても帰らなかった
木の葉の虫食いたちが
ざわめいている
等しくひかりを受けるがいい
広場の隅にオスカー・ワイルドの
ぼろぼろの「幸福な王子」が
詩の彫像のように立っているのがみえる
つばめがくわえて飛び立った
青いサファイアの瞳が
地上を誰のものでもないまなざしにする
おはよう
うぶ声をあげる たて髪の幽霊
おはよう
くだけ散る 遺失物の散歩道
1013年冬