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投稿日 2019-11-28 16:57
現代詩の小箱 北野丘ワールド
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キューちゃん
おはよう壊れた カタツムリの殻の水浴びおはようレールに光る ヤモリの夢の轢死裸の背をかけのぼりあおむけに影はたおれててのひらの乳房が寒気に立つ方角へと魚たちがまつげを叩いていく何をなしてここまで来たのか人でなしの言葉でうろついて秋がきても冬がきても帰らなかった木の葉の虫食いたちがざわめいている等しく...
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投稿日 2019-11-28 16:47
現代詩の小箱 北野丘ワールド
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キューちゃん
信号が(●)(○)変わりますとパッポウが鳴くここはどこのふかい海峡ゆらり曲がる函館元町十字街レールをゆく深海魚ゆけるまでしかゆけない愛しい市電とける太陽をゆっくり光らせ(あとは知りません旧家の娘が幻のドックでスカートをひるがえす金森商店の土蔵で真鍮の円筒オルゴールが止めばうしろの静か(つぎ 止まりま...
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投稿日 2019-11-28 16:35
現代詩の小箱 北野丘ワールド
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キューちゃん
ある日、別居中だった夫のアパートを朝帰りの女のように、そっと出ると、ふいに女の耳には駆け寄らずにはいられなくなる、ある種の高い音域に捉われて、私は小走りした。タンポポが咲く駐車場と、子供の姿をみない高層マンションの広場の角を、急ぎ越すと視界の中にバサバサした綿屑のようなものが飛び込んできた。見るなり...
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投稿日 2019-11-28 16:11
現代詩の小箱 北野丘ワールド
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キューちゃん
扇状地をいくつもの河川が夢みる侵入のように蛇行しとり残された三日月湖は緑のまま、まばたきもしなかったわたしたちは声を失って人形(あのこ)は何も映さない瞳になって人形(あのこ)は後ろに首をかくんと折れて花は冷えて人に愛されなければ人に畏れられなければこの世にはなにひとつ存在しないんだよ明け方の夢をおさ...
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投稿日 2019-11-28 15:43
現代詩の小箱 北野丘ワールド
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キューちゃん
廃庫となった車両倉庫の引き込みレール跡のどん詰まりに事務所はあった背中にモッコはあるのかはい それだけはなんとか万人の幸福という饅頭を仕入れにきた赤いのぼりには千個売ったら一モッコそれは使命とあった万人の幸福と銘打つそれでハピー 違うかね千個売ったら使命は終わり死んでいいなに、また千個売ればいいんだ...
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投稿日 2019-11-28 15:33
現代詩の小箱 北野丘ワールド
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キューちゃん
夕陽の橋を渉らなければ よかったあんなにも見つめたりしなければ よかった橋のまんなかで爪まで小焼けかなしくないのにうまれてはじめて涙ながれたまんなかではつむったまま小石を渉ればつめたくて心地 いいでしょう髪の毛も さぞひろがるでしょうかなしくなくて石のひとはひとよりふかい腕を寄せるでしょうあかい小石...
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投稿日 2019-11-28 15:28
現代詩の小箱 北野丘ワールド
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キューちゃん
冬の電車で、連結器近くの座席に腰掛け、視線を少しばかり泳がせると、合わせ鏡のような隣の車両には誰もいなかった。ただ一定の方向に進んでいるに違いはなかったが、ここを基点に果てしなく両側が、どこまでも延びているのではないかという奇妙な感覚に囚われた。目的地がどこであれ、こうなってみると、どこかへ向かって...