滸呂裳(ころも)
11月
28日
なんでも頭に
アクセントがくる土地で
ハゴロモとおまえを呼べば
草の地蔵もフイと浮いてしまうから
声を蛍にして
闇に放った滸呂裳
あんなにも夜の波が青く光って
埋もれた歯の燠火が、また燃える
(网孤(もうこ)たち、よろこんでいるん、のです)
(モウコ?)
よろこぶ亡者のために
よろこびをして
モモンガの砦には
幼い孤児たちの睫毛が夜のあいだじゅう濡れて
(字扶桑(この村)は子を拾って、養うん、のです
盗ったり、買ったりじゃねえん、のです
神かけて、そだ、ので、んで、)
(そだ、ので、んで?)
滸呂裳は笑った
岬の一輪のユリが割れ
滸呂裳の腰のような水差しから
滸呂裳の喉の音をたてて
俺は、硯というものに、盛り上がる水を
乱暴な気分で掻き回す
(朝露にぬれて、へその緒ついたまま、泣いでます
岬の林の祠のなかに、ちょこんと、います
浜の小舟で、すやすや、揺れでます)
(あんたは、どれだ?)
(わっちは、どれでも、ないんのせ
生まれるまえから、モモンガの砦にいだのです)
煙草のけむりを吐くと
俺は、娘の物語を聞き流していた
村の外へ出たことがないと
喉を、一度も、と詰まらせた滸呂裳
(どうしてお前には姓がないんだ)
(樹から樹へと飛ぶん、のです
モモンガが、飛ぶんとき、モモンガで在るん、のです
その樹から樹へと飛ぶんのが、わっちだのです)
墨というものが俺にもできた
墨はいい匂いがするものなんだな
果てた女の髪
樹と樹のあいだの闇で
モモンガの飛ぶ匂いがするようだ
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